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「ブラザー・コンプレックスⅡ~甘い蜜の味」

「なんだよ、倦怠期かよ。」


まさかそんな簡単に片付けられるとは思ってもみなかった。
それ以前に、その日兄貴は家にいないもんだと思っていうたのだ。
兄貴の前で銀華の話なんかするのは気まずいから、だからわざとシロ一人の時を狙って行ったのに…なんでいるんだよ。
当然そんな文句を本人に言えるわけもなくて、俺はシロにするはずだった話を兄貴にせざるを得なくなったのだ。
それで返って来た答えがこれ。
他人事だよな…当たり前だけど。


「は、じゃねぇよ。それ倦怠期だろ?」

そんな兄貴の言動に呆然とする俺に、追い討ちを掛けるみたいな言葉。
半分笑いながら言っているのは、どこまで本気なんだ?


「ハッキリ言っていいのいかよ。んじゃ言うぞ。燃えるようなセックスしろ!」

俺がセックスしたいのはただ一人、兄貴だけだ。
いつだって俺は、そう言って来たのに、そんなこと言うんだな。
シロの前だからって嘘や誤魔化しで隠すのはわかる。
それはいくらバカな俺でもわかってはいるんだ、頭の中では。
それでも俺はどこか期待をしてしまっていたんだろう。
俺にだけわかるように、少しでもいいから嫉妬してくれたら…と。


「そういうのはなー、してねぇからダメんなるんだよ。なぁシロー?」

だったら今すぐ兄貴がさせてくれよ。
今すぐ俺の前で脚を開いてくれよ。
そんで乱れまくってアンアン喘いでくれよ。
俺と一緒に高いところへ行ってくれよ。
欲望ばかりが膨らんで、何も出来ない自分に腹が立つ。


「俺…、もうダメかも…。」

兄貴はわかっていないんだろうな。
あの時言った俺の台詞が、本当は誰に向けたものだったかなんて。
ダメかも、じゃない、ダメなんだよな…もう。
俺の気持ちなんてきっと、兄貴には届くことなんてないんだ。

だけどそれから数時間後、思いもよらないことで俺の予感は外れることになった。
夜の街を彷徨っていると、見なくても言える番号が携帯電話に表示された。
ワン切りなんて、人を惑わせるようなことをするのも、あの人だけだ。

呼び出された公園に、煙草の煙が上がっているのが見えた。
あの人の好きな、メンソールの入ったやつ。
煙草を吸わない、そして好きではない俺が、唯一許せる匂いだ。
昔一度だけもらって吸ってみたけれど、すぐに咽て火を消した。
勿体ねぇ、なんて言ってめちゃめちゃ怒ってまた火点けてたよな。
今思えば俺としても勿体ないよ…間接キスだったんだもんな、それって。


「なんだよ、早ぇよお前。」
「呼び出したくせに何言ってんだよ。」
「別にー。ただどこにいるって聞いて俺はここにいるって言っただけだぜ?」
「そうやってすぐ…。」

今どんな顔してるのかわかってるのか?
遠くを見て、俺の方なんか見ないで、でも人を誘うようなことをして。
それがいちいちムカつくって言ってるのに、何度言ってもわからないんだ、この人は。


「な…、なんだよ……っん!」
「そうやってすぐ煽るんだよな、兄貴は。」
「ん…ふ…っ、洋平っ。」
「本当は嫉妬してたくせに…。」

こういうことに勝ち負けを考えても仕方がないけれど、俺には俺なりのプライドってもんがある。
いつもいつもこんな風に振り回されてばかりじゃ、俺だって格好がつかない。
本当は、黙っていたらそのまま捨てられそうで恐いだけだけど。


「気付いたならてめぇから連絡して来いよ…っ。」
「なんだ、やっぱりそうなんだ?兄貴可愛いとこあるじゃん。」
「うるせぇよ…、するなら早くしろよ…っ、あ…っ!」
「じゃあ、いつもみたいに強請れよ…。」

激しいキスをしながら、数週間振りのその身体に触れた。
熱くて、滑らかで溶けそうな皮膚の感触が、俺の中の欲望に火を点ける。
もう俺は、この身体から、この人から離れられないんだ。
多分、いやきっと一生離れられない。


「あ…、早くっ、洋平っ、洋平のくれよ…っ!」

それは中毒にも似た症状だと思った。
それでもいい、甘くて危険な蜜を、今夜も俺は味わえるのなら。

<終わり>(とか言って続きそう…笑)

洋平:「なんかこれ…俺違う人じゃねー?」
亮平:「んなこと言うなら俺だってだろ!なんだよこれ、洋平のなんかいらねぇっつーの!」
洋平:「う、うるせーよ!俺だって…つーか俺の本編のイメージどうするんだよ!連載中だぞ!」
亮平:「あんましいいイメージ持たれてると思っていい気になってんじゃねぇぞ?だからこういうの書かれるんだよ。」

それにしたって崩し過ぎ…(反省)
しかも本編よりも若干進んでいます(爆)←大問題

「素直になれなくて」1

人間自体が嫌いだった。
人間は好きなだけ私達の身体を弄んで、簡単に捨てる。
だから嫌いなのだ。
特に、普段からいい加減なことばかりを言う様な人間は。


「猫神様~、具合でも悪いんですか?」

シロが心配そうに、濡れた大きな瞳で私を見上げる。
私のことを今も神様と呼んでいるのは、此のシロだけだ。
何時まで経っても、シロは可愛い。
私のことを慕ってくれている。


「洋平が帰ってこねぇから苛々してんだろ。」
「そうなんですか?」
「そうそう、俺達は俺達でイチャイチャしようぜ、なぁシロ。」
「りょ、亮平~、恥ずかしいってば!」

しかしその隣にいる此の人間…。
認めたくはないが、シロの恋人であり、洋平の兄でもある人間だ。
此の人間だけはどうしても私は気が合わないのだ。
いい加減で、好きなことばかりして、自信過剰で。
洋平に出会う前から知っているが、シロが何故この人間を選んだのか、どうにもこうにも解せないのだ。


「お前は…、私のことを馬鹿にしているのだな。」
「あ?んなこたねぇよ、馬鹿にしてんのはお前だろ。」
「お前にお前などと呼ばれる覚えは無い。」
「お前だって呼んでんだろうが。」
「あーもうっ!亮平っ、猫神様も!すぐ喧嘩する~!」

一度会話が始まると何時もこうだ。
いや、会話としても成り立っていないと思う。
シロがこうして止めてくれるから、直ぐに終わるのだが…。
放って置いたら、延々続けてしまうだろう。


「ごめんごめん、シロ。怒るなよシロ~。」
「だって…。」
「こっち向けよシロたん、ほら、な?」
「亮平~…。もう喧嘩しちゃダメだぞ。」
「んー、わかったわかった。」

人前で口づけなどして。
恥ずかしいなどと思う心が無いのだろうか。
顔も声も、血が繋がっていあるだけあって、洋平とはよく似ているのに。
どうしてこんなにも違うのだ…。
今まではその様なことしか思っていなかった。
其れが変化したのは、数ヶ月前のとある日だった。

其の日、私は何時もの様に洋平を待っていた。
台所で飯の支度をしていると、玄関の呼び鈴が鳴ったのだ。
声だけで、其の人間が誰なのか、直ぐにわかった。


「何か用か?」
「あー、洋平まだ帰ってねぇのか?」
「そうだが。」
「んじゃ中で待ってていいか?」

家の中に入れない程私は心の狭い人間ではない。
それに、此処自体、洋平の家で、此の人間は洋平の兄だ。
そう思って、扉を開けたのだが…。


「よぉ。」
「久し…振りではないか…。」
「何?俺に会いたかったのか?」
「な…、馬鹿なことを…。」

口を開くとそうやって私を馬鹿にする。
しかし馬鹿なのは私の方だ。
何故なら、此の人間の言う通り、私は待っていたからだ。


「いい加減に素直になれよ、猫神。」
「呼び捨てに…するな…。」
「じゃあ銀華?それでいいのかよ?」
「あ……。」

似ている。
洋平と声がよく似ている。
私は何時からか、洋平に似たこの人間に、恋をしてしまっていたのだ。
其れを此処で見破られるとは…。


「興奮してんのか?」
「お前は…っ。」
「俺が気付いてないと思ったのか?」
「離れろ…っ。」

洋平とは違う、肌の匂い。
それとは逆に、似ている声に、眩暈を覚えながら、その身体にしがみ付いた。
離れろと言ったのは己なのに、矛盾している。


「銀華…、好きだって言えよ…。」
「…あ……、洋平…。」
「洋平じゃねぇよ、亮平だ…。銀華…。」
「…亮平っ、好きだ……。」

告白と同時に、その唇を貪った。


<つづく>

亮平:「…有り得ねぇ……。」(鳥肌)
銀華:「私も御免だ。勘弁してくれぬか。」
亮平:「は?続くのかよこれ?!やめてくれよ!」
銀華:「其れは私の台詞だ!」

<以後、延々と喧嘩>

「EAT ME Ⅲ~ホワイトデー編~」

「あぁ、やはり思った通りだ…。似合うな、洋平…。」

あの日から、一ヶ月が過ぎた。
恋人同士が愛を深めるという日から、丁度一ヶ月。
今日はその第二弾で、お返しの日というものだ。
銀華はその一ヶ月前から、張り切ってこの日の準備を進めていたのだった。


「マジかよ…、マジでするとは思わなかったぞ俺…。」

洋平は顔を真っ赤にしながら、銀華を恨めしそうに見つめた。
勤務先の花屋から帰宅して、玄関で待っていた銀華が差し出した服を着させられたのだ。


「私は嘘など吐かぬ。」
「それはわかるけど…、こんな格好…っ。」

ピンク色と白色を基調にした、女性ものの服だ。
スカートの裾には純白のレースが施してあり、少しでも動くだけで、脚の辺りに纏わり付く。
大きな丸い襟にも同じレース、その首にはボリュームのあるリボンだ。
おまけに、中途半端なことが嫌いな銀華は、ロングヘアーの鬘まで被れと言って聞かなかった。
それを丁寧に三つ編みにまでして、背の高さを抜きにすると、本当に女性のようだった。
それでも一ヶ月前、了承したのは自分だ。
まさか本当にこのような格好をさせられるとは、今朝家を出るまでは思ってもみなかったけれど。


「本当に…よく似合っている…。」
「…あ!ぎ、銀…っ。」
「どうした?まだ脚に触れただけだが?」
「あ…、ごめ…、なんでもな……っあ!」

スカートの裾から、銀華は手を忍び込ませ、洋平の脚をまさぐった。
やや細めだが、筋肉質なその脚は、弾力性に富んでいて、触れる度に反応して動いている。
もちろん中には女性ものの小さな下着を着けさせられた。
その行為の中で、その下着の中の洋平自身が熱を持ち始めているのに、銀華は気付いてしまったようだ。


「洋平、こちらは…もう限界ではないか。」
「……あ!銀華…ぁっ!」
「苦しそうだな、解放してやった方がよいな。」
「や…っ、やめ…っ、あぁ…っ!」
「やはりな…。嬉しそうに涙まで零れている。」
「はぁ…っ、銀華っ、あ…っ!」

下着を膝までずり下ろされ、自身が勢いよく飛び出した。
完全に勃起したそれの先端は、銀華の言う通り、透明な液で溢れ返っていた。
ただ脚を触られただけでこんなに…。
洋平はこれ以上、我慢などできるわけがなかった。
しかしこんな時、銀華はいつも意地悪をするのだ。


「どうして欲しいのだ。洋平。」
「あ…、それは…っ。」
「どうした。言わぬとわからぬ。」
「あ…、そんな恥ずかしいこと…っ。」

指先でそれをぐりぐりと弄りながら、銀華は妖艶な笑みを浮かべた。
屈辱的なはずなのに、その先を求めて止まない。
涙を溜めながら、洋平は今日も、懇願をした。


「俺を…、俺を、食・べ・て……っVv」(うるうる)

こうして、その日は洋平が美味しく戴かれたのだった。
以前から時々このようにして逆でセックスする二人だったのだが、それ以来、大きく変わったことがあった。

「さぁ洋平、今日はこれを着るのだ。水着というものだ。」
「えぇっ!そんな…!」
「どうした。私は昨日お前の望む通り××しながら××をしたのだ、お前はしてくれぬのか。」
「う…、わ、わかったよ…。」

銀華はすっかりコスチュームプレイにハマってしまったらしい。
何はともあれ、めでたしめでたし。

<終わり>


洋平:な…!!めでたくなんかねーよ!なんだよ「食・べ・て」って!!
銀華:私もこのような変態染みたことはせん!
洋平:俺が女装に三つ編みって!気持ち悪いだろ!!
銀華:………。
洋平:な、何…?どうした銀華…?(嫌な予感)
銀華:いや、案外似合うかも知れぬ。今から着るのだ、洋平。(ちゃっかり準備してた)
洋平:ぎゃあぁ~……!!

「別離の裏側」

※本サイト「ONLY」完結記念(本サイトを読んでからをおススメ致します)

いつもみたいに、冗談であんな台詞、言って欲しくなかった。
そんな笑いを交えて言われるぐらいなら、あの場で公表してしまってもいいと思った。
今までの生活も、新しい生活も、何もかもを捨ててもいいとさえ思ったのに。


『俺も水島と離れるの寂しい~ん。』

あの人が言った台詞。
寂しいなら寂しいと、真剣に言ってくれればよかったのに。


『いやだから、な?俺と水島の仲だろ~?な?』

何がどんな仲なんだ。
だったらあんたがきっぱり言ってくれよ。
俺と水島はずっと前からそういう仲なんだ、って。

俺ばっかりが寂しい思いをして。
俺ばっかりが好きで。
俺ばっかりが悩んで。
全部俺ばっかりで、馬鹿みたいだ。
あの人との関係を続けた時間は、一体何だったと言うのだろう。
考えれば考える程、馬鹿馬鹿しくてやってられなくなる。
もう忘れてしまえばいい。
あの人のことなんか、綺麗さっぱり忘れて、なんとかして二度と会わないようにすればいい。

そう決意して、夜中の公園に、あの人を呼び出した。

『話があるので午前1時にいつもの公園に来て下さい』

たったそれだけ打って、メールを送った。
もちろん後から何か起きるとマズいから、証拠隠滅もした。
メールを削除するみたいに、あの人のことも削除してしまえばいい。
簡単なことだ。

それなのに、あんたがそんなこと言うから。


「あっそ。引っ越したら俺とは終わりってことか。まぁそうだろうな。」

本当は、忘れたかったんじゃない。
削除なんかしたかったんじゃない。
あの時笑いながら言った台詞を、真剣に言って欲しかった。
お願いだから傍にいてくれと言って欲しかった。
別れたくないと俺に縋って欲しかった。
俺は多分、藤代さんはそう言ってくると過大な期待をしてしまっていたんだ。
それを素直になれなかったために、こんなことまでして、自分の方があっさり捨てられるなんて。

…こんなのは、嫌だ……。

その時俺の中で、眠っていた何かに火が点いた。
気が付いた時には、俺の前を立ち去ろうとする藤代さんを、後ろから羽交い絞めみたいに抱き締めていた。


「な…、何水島…っ、ん……っ!」
「藤代さんは平気なんですね。」

今まで何度も触れた唇。
片思いをして、やっと触れられた唇だ。
餌を与えられていなかった動物のように、その唇を夢中で貪る。


「ちょ…何っ、水島っ、やめ…っ、ここ外…っ!」
「藤代さんは平気なんですよね。」
「な…水島っ、あっ、やっ、ああぁっ!」
「俺にこうして触られなくなっても。」

長めの髪をくしゃりと掴んで、近くの遊具に押し付けた。
後ろから藤代さんの下着の中に手を突っ込んで、下半身の中心を激しく揉み解す。
すぐに俺の動きに反応して、そこは角度を急激に変えた。


「あ…、水島…ぁっ、あ、頼む…っ。」
「何をですか?」
「あ…、おねが…、水島っ、あ、あぁ…っ!」
「ちゃんと言って下さいよ、藤代さん……。…亮平……。」

今まで下の名前でなんか呼んだことがなかった。
それは周囲に隠すためでもあったり、照れでもあったり。
耳元で妖しくその下の名前を囁くと、藤代さんの身体がびくりと跳ねた。

「あ…、入れてっ、水島の…、あっ、入れてくれ…っ、水島っ、欲しいっ!」
「そんなに大声出したら周りの民家に聞こえますよ?」
「う…っく…っ、ん…、ん…。」
「やっぱりあんたエロ過ぎだ、もうココがこんななって…。」
「は…あっ、水島あっ、もうダメ…っ、イくっ、イっちまう…っ!」
「だから言ったんですよ、平気なんですねってね…。」

俺のものが何度も出入りした後孔に、ぐりぐりと指を捩じ込む。
そこは待っていたかのような伸縮を繰り返し、嬉しそうに数本の指を飲み込んでしまった。
喘ぐのを我慢して自らの口を手で塞ぎながら、涙を流す藤代さんが、愛しくて仕方ない。


「水島っ、嫌だっ、俺から離れていくな…っ、俺はお前がいないと…っ!」
「最初からそう言えばいいのに。」
「悪かっ…、だからも…、もう…っ!お前がいないとダメなんだ…っ!好きだ水島っ、水島あっ、隼人…っ!」
「俺もですよ、藤代さん、あんたがいないと……。」

藤代さんのぐちゃぐちゃに濡れた前を握りながら、思い切り後ろから体重をかけた。
同じようにぐちゃぐちゃの後孔に、張り裂けそうな程膨らんだ自身を、一気に挿入した。


「あ────っ!!!あああぁっ、あっ、あっあ────…!!」

あんたがいないとダメなんだ。
俺が必要なのは、藤代さん、あんただけだ……。

<(まさに)「ONLY」・完>
↑本編ぶち壊し

亮平「おいこら、ここって洋平と猫神の秘密ページじゃねぇのかよ!」
隼人「…………。」(絶句)
亮平「しかも野外って…いくら俺でも堂々としねぇぞそんなん!」←だからそこじゃねぇだろ
隼人「どうしよう俺…せっかく本編ハッピーエンドで終わったのに…。」←ホントだよな(笑)

「寂しんぼの大騒ぎ」(ちょっぴりコメディ風)

お正月のある日、俺はいつものようにシロのところへ遊びに行った。
亮平くんはお仕事だけど、シロはお正月休みなんだって。
俺もシロといるの好きだから、嬉しい。
そしたら、シロが、友達を連れてくるって言った。
街で知り合って、シロの家まで来ることになってたんだけど、道がわからなくなっちゃたんだって。
シロは近所なら詳しいからって、迎えに行くって言ってちょっとだけ俺一人で留守番してる。
どんな子かなぁ…、シロみたいに可愛い子かなぁ…。
俺、仲良くなれるかなぁ、なれるといいな…。

「ただいま~、シマ、ごめん一人にして~。」
「いや~、なんやこのへん道が狭くてあかんなぁ。」
「お、おかえりなさいっ!」

えっと、関西弁ってやつだよね…?
そこには、シロと一緒に、すっごく綺麗な男の子が立っていた。


「あんたがシマ言うんか?えらい可愛いなあ。俺、ジンって言うねん、あ…本名はカズヒロな、よろしく頼むで。」
「はいっ、志摩です、こんにちはっ!えっと、俺、初めて生の関西人に会った!すごーいすごーい!カッコいいー!!」
「生の関西人て…。何がすごいん?別に普通やで?」
「あっ、とりあえずジン、中に入って~。」
「おう、邪魔するで~。」

ジンは、関西出身で、今は東京の芸大っていうのに行ってるんだって。
だからなんかセンスいいんだね…。
関西弁、カッコいいなぁ、俺も喋ってみたいなぁ…。


「何笑ろてんねん、変な子やなぁ、シマって。」
「えへへージンー、俺友達になれて嬉しいー。」
「俺もやで。あっ、シロもな。」
「うんっ!オレも~。」

それから、色んな話をした。
ジンの旦那さんは、おまわりさん?なんだって。
ジンよりずっと年上でカッコいいって。
おまわりさんかぁ、正義の味方だぁ…。
どんな人なんだろ、見てみたいなぁ、そんな妄想にふけっていた時だった。


「でもあんたらみたいにラブ…あー仲いいんとちゃうねん、あいつ、また3日も帰ってこおへん…。」
「ええーーー!!寂しくないの?ジン、寂しくない?」
「オレ、ジン寂しいと思って今日呼んだんだ…。」
「シロ、ありがとうなあ。仕方ないねん、仕事やねんな…でもどうしようもない時ってあるやろ?」
「お、俺隼人が1日いないだけで無理だよー!」
「オレも…。」

どうしよう…、考えただけで悲しくなってきちゃった…。
ジン、すごく寂しそう…。
でも旦那さんのこと好きだから、我慢してるんだね。
えらいなぁ、ジン、俺みたいな子供とは違う。
そういうのも、カッコいいなぁ…。
旦那さん、幸せ者ってやつだね…。


「でも寂しい言うてもあのオッサン…顔色も変えへんねんな、なんやムカついてきたわ。」
「そうだそうだー帰って来ないのはいけないんだぞー!」
「そうやんな?!シマええ子やな!気に入ったで。」
「よ、よしっ、乾杯だー、乾杯しよう、シマも、ジンも!」

こうして、お菓子を広げて、冷蔵庫から飲み物を出して騒いでいた。
それから約2時間後…。

「一真のアホ~、一生帰ってくるな~…。」
「そうだそうだ~帰ってくるな~…。」
「帰って来ないで下さいー…。」

あぁ…なんだかとってもいい気分…。
ゆらゆら視界が揺れて、身体もぽかぽかするよ…。
シロのおうちって、おもしろいジュースがあるんだなぁ…。
甘くて、炭酸が入ってるのとか、中には苦いのもあったけど…。
さすが元猫だよー……。うぅ…眠くなってきちゃった…。
隼人ー……。


「……っく…、一真ぁ…。」
「ジン?どうした~?」
「なんや会いたくて堪らんようなってきた…。」
「ジン…。」

ジン、本当は物凄く寂しかったんだね…。
さききまで文句ばっかり言ってたけど、顔は寂しかったもん。
旦那さんに会いたくて仕方ない気持ち、俺わかるよ。
だって俺も…。


「えっえっ…、隼人ー…。隼人に会いたいよー…。」
「わぁっシマまで…!…うっ、オレも亮平に会いたい…。」
「そうやろ?!会いたいねんな…っ?!」
「うえぇー隼人ー。」
「亮平~っ。」
「一真のアホたれー!自分の都合ええ時だけ手出しやがってスケベオヤジ!さっさと帰って…。」


「誰がスケベオヤジだ。」


…あ、あれれ…??
俺、シロ、ジン、と、他の人の声…??
えっともしかして…。


「わぁっ、かかか一真…!!なんでここ…!!」
「自分が電話したくせに何を言っているんだ。」
「俺…電話なんか……あ…。」
「未成年が酒なんか飲みやがって。下らんことで呼び出すな。」

そういえばさっき、いい気分になっている途中で、ジンは何度も電話してたっけ。
旦那さんが出なくて、メッセージもいっぱい入れてた。
メールもいっぱい打ってたの、俺見た…。


「ごめん…忙しい時に…。」
「まったくだ、もう戻るぞ。」
「ごめん…。」

ジン…、どうして…?!
どうしてさっきみたいに言わないの?!
会いたくてずっと待ってたのに。
こんなの…しゅんとなって下を向いているジンが可哀想だよ!


「ま、待って下さいおじさんっ!!」
「おじさ…!」(ショックだったらしい)
「ジン、おじさんのこと待ってたんです!ずっと待ってて…だから帰っちゃダメなの…うっうっ…。」
「そ、そうだぞ!!オレもそう思う!!」
「そんなことは…俺は知らん。」(実はまだショック)

ひどいよ…俺たちみたいな子供に言われても意見を聞きたくないことはわかるけど…。
それじゃジンはどうすればいいの…?
さっきよりもっと落ち込んじゃったよ…。
あんなにいい気分だったのに…。


「早くしろ。もう3日寝てないんだ、帰ってすぐ寝る。」
「…え?」
「迎えに来いと騒いでおいて帰らんのか。わけのわからん奴だな。だったらいい。」
「か、一真ぁ…!」
「おじさん…!」
「ジンのおじさん…!」(ちょっと違うぞシロ)

こうして、ジンは仲良く旦那さんと帰って行ったんだ。
よかったね、ジン。
今日の夜は寂しい思いしなくていいかもしれない。
そう思うと、自然に笑いがこぼれた。


「シロ…?シマ…??何やってんだお前ら…。」
「亮平~、シマとジンと遊んで…会いたかった~。」
「あー亮平くんだー…わぁ隼人ー!会いたかったです!」
「志摩…何やってるんだ……。」

亮平くんと一緒に隼人も帰って来て、俺はたちまち嬉しくなった。
お隣に出掛けた時は、隼人にメールすると、迎えに来てくれるんだ。
今日も途中でメールしたから、来てくれたんだね。
隼人はやっぱり優しいなぁ。


「えへへー隼人、好きー…。」
「何でれでれして…。」
「うわ!!俺のビール!!酒全部なくなってんじゃねぇかよ!!シロ…?まさか…。」
「わかんないけど、冷蔵庫ん中入ってたやつ飲んでみた!」

どうやら俺たちは、お酒を飲んでしまっていたらしい。
俺もシロも、隼人と亮平くんに物凄く怒られた。
当たり前だよね、俺もシロも(?)未成年ってやつだもん…。


「よし、シロ、お仕置きだからな。」
「えっ?わぁっ亮平っ、下ろしてやん!…あ……っ。」(関西弁が変にうつった)

わぁ───…。
亮平くん、シロのこと軽々抱っこしちゃった。
っていうかお仕置きっていうかそれって…え、エッチしようとしてるとしか見えないんだけど…。


「水島、お前もシマにやっとけよ。」
「亮平…っ、あっ、や…っ。」
「えっあの亮平くん…何言ってるやん…、隼人っ?!」(こっちも変にうつってるし)
「志摩、帰るぞ。」

それってそれって…。
うわーん隼人まで興奮しちゃったよ、亮平くんのバカ───!
結局、俺も隼人にお仕置きされたんだけど…。
ジンは大丈夫かなぁ…。
あの人、しぶくて(?)カッコよかったけど、ちょっと恐そうだった…。

一方その頃。


「未成年が酒なんて…わかっているんだろうな。」
「…んー?なんやー…?」
「言ってわからん子供には身体で教えるしかないと言うことだ。」
「一真…っ、あ、や…っ。」
「あの子供達にも言っておけ。まだおじさん、じゃないとな。まだできるからな…っ。」(ニヤリ)
「え…何…っ、あ、かず…ま…ぁっ、あっ!ああぁ─────…っ!!」


何はともあれみんなラブラブだったみたい。
ホントによかったね、ジン。

<終わり>

よかねぇよ!!こんなことジンも菅原さんも言わねぇよ!!
す い ま せ ん で し た!!!!!(反省)
特に菅原さん…おっさん扱いを…。
いや、あれはシロと志摩が言ったんであって…。(すっげぇ言い訳)
もう二度と書かないので許して下さい。(許せん)

「EAT ME Ⅱ~バレンタイン編~」

今日はバレンタイン・デーだ。
とは言っても、俺にはあんまり関係ない日というか…。
恋人である銀華はそういったイベントの類に興味がないみたいだから。
俺としても特にやってもやらなくてもいいような…。
いや、やってくれたらそりゃあ嬉しいに決まっているけれど。

1%の期待もせずに、今日も俺は銀華の待つ家へと向かった。
店のお得意さんからもらった義理チョコを土産代わりにして。


「ただいまー、銀ー?」

あれ…。
返事がない…?
小さな声だけど、いつも聞こえる出迎えの挨拶が今日は聞こえない。
俺がいない間にどこかへ一人で出掛けることも今までなかったし。
まさか具合でも悪くて寝込んでいるとか…?!


「銀っ?銀華っ?だいじょ……なんだいたの……う、うわあぁっ!!」
「早かったな…。」
「な、何?どうした?どうしたんだよ銀華っ!」
「やはり…これは似合わぬか…。」

似合うとか似合わないとかっていう問題なのかこれは!!
お、俺が夢にまで見た……裸エプロン透け透けバージョン!!!!!
嘘だろ…?銀華がそんな格好してくれるわけないよな…。
俺は、夢か現実かわからなくなっているものだと思って、目を強く擦った。


「馬鹿者。夢や冗談で此の様なことが出来るか。」
「…ってことは……。」
「夢などでは無い。お前の好きな…。」
「ぎ、ぎ…銀華……。」(ボタボタボタ…←鼻血エンドレス)


夢でないことはわかったんだけど…。(それでも信じられねーなこれは…)
どうして銀華はこんなことをしようと思ったのだろう。
俺が頼んでもしてくれなそうなのに。


「今日は…、恋人同士が愛を深める日なのだろう?」
「…え……。それってバレンタイン・デーのこと?」
「お前の兄やシロから聞いてな…。好きな相手に好きなことをさせたりする日だと聞いた。」
「あー…。」

マジかよ…。
兄貴とシロの奴…どんな言い方したんだよ…。
しかもそんなこと言ったってことはあいつらも今日はヤりまくると見た…。
まぁそんな他の家のことはいいとして。(でも興味はあるけど)
でもなんだかこれだと銀華を騙してるような…。


「洋平…、私は何かおかしなことを…?」
「いや!それでいいんだ、ありがとう銀華…。」

だけど銀華の裸エプロンには代えられないだろ。
しかも透け透けときたからな…。
うっすらどころか見事に身体のラインどころか隅から隅まで丸見えだ。
またこれが色も色で透け透けピンクかよ…。
一体どこで買って来たのかちょっと気になるところだけど。
とりあえず兄貴とシロには大感謝ってところだな。
それから俺の欲望だけじゃない、これは銀華の愛なんだもんな。
それを踏み躙るようなことは出来ないだろ。


「ありがとう、銀華…。好きだよ…。」
「洋平…っ。」

堪らなくなって、いきなり激しいキスをした。
唾液と舌を絡め合い、口内の隅々まで銀華を味わい尽くす。


「銀華…?もう…?」
「……あ…っ。」
「驚いた。キスだけで勃っちゃったのか?」
「…言うな……っ、あぁっ!」

こういう時の銀華は、とても可愛い。
顔を真っ赤にして、僅かに涙を溜めて俺を見上げて。
可愛いなんて喩えをすると怒るから、本人には絶対言えないけど。


「洋平…っ。」
「ん?何?どうした…?」

俺の手で下半身をいじられて、喘ぎながら銀華は何か言いたげに口をぱくぱくさせる。
一度手を止めてやると、とんでもない台詞を言たのだった。


「私を…食べてはくれぬか…。」
「…………!!」(絶句)

もちろんその後、言われた通り俺は銀華を食べた。
裸エプロンをしたままセックスに溺れるなんて…なんて最高のバレンタイン・デーなんだ…。
今まで生きて来て一番いい日だったと言っても過言ではない気がする。

が、しかし…。

「ところで洋平…。」
「何?無理して喋んなくていいよ…。」

その行為の余韻がまだ残る中だった。
俺は、バレンタイン・デーにはお返しの日があるということをすっかり忘れてしまっていた。


「3月14日は…期待している…。」
「え…。それってあの…。」
「私はこの様なことまでしたのだ。お前もしてくれるのだろう?」
「…え!!そそそそれって…。」(青ざめ)

まだ息も整わない銀華が、妖しげに微笑を浮かべた。
い、嫌~な予感……。


「洋平の××を××して…、それから○○をするのが私の望みだ。」


前言撤回。
兄貴とシロのバカ…。
俺がそんなことしろってのかよ…。
あぁだけど……。


「洋平はしてくれぬのか?」

俺ってつくづく銀華には弱いんだよな。
惚れた弱みと言えば言い訳にはなるんだけど。


「うん、俺、頑張るよ…ははっ。」

頑張れ、俺。
裸エプロン透け透けバージョンの代償は大き過ぎる。


《終わり》
ホワイト・デー編(銀×洋)に続く?!


※「××」には好きな文字を入れて下さい♪
(なんでもいいのかよ)

「夜明けの悪戯」

「…ん……。」

自分の体温ではないそのぬくもりで、夜明け前に目を覚ました。
ぬくもりどころか暑いぐらいで、その原因のぴったりとくっついた志摩を見る。
すーすーと気持ちのよさそうな寝息をたてて眠っている。
この幼くてあどけくて無防備な寝顔が、物凄く好きだ。


「…はやと……えへ…んふ…。」

夢の中まで俺なのか、でれでれ笑いながら寝言まで言って。
普通なら気持ち悪いところだけど、志摩は特別だ。
俺まででれでれしそうになりながら、布団を捲って中の熱を解放した。


「うーん…。」

同時に志摩が色っぽい声を上げた。
ふと捲った布団の下には、パジャマ姿だ。
しかも、可愛いのがいいー、と言って、パジャマを買いに行って選んだのがとんでもない形のものだった。
いわゆるネグリジェとか言われるそれは、女が好きそうな、スカートになっているものだ。
こいつは女装が好きなんじゃないか、あるいは女になりたいか。
もっと大袈裟に、バカだから実は自分を女だと思っているんじゃないか。
クリスマスのサンタの衣装の時に、思ったことだった。
それか、俺を挑発してるか…。


「…はやと……、すきです……うーん…。」

その寝言を聞いて、理性の糸がブチ切れる。
膝丈のパジャマから覗く白い脚に、どうしようもなく触れたい衝動に駆られる。
するりと手を滑り込ませ、太腿の辺りをまさぐった。
こんなことをしているのに、志摩は起きない。
感じているのか、時々喘ぎに似た声を洩らすだけだ。
そうなると行為はエスカレートしてしまうもので、無意識のうちに志摩の下着に手を掛けていた。


「いや、これはマズいよな…。」

さすがにそこに手を入れるのは躊躇ってしまう。
だけど、ブツブツと独り言を呟きながらその下着を志摩に気付かれないようにずり下ろしてしまった。
いよいよ志摩のそれとご対面という時になって、志摩の身体がもぞもぞ動き出した。


「ん~?隼人…?」
「……!!」

びっくりして思わず志摩の下半身から手を離す。
その手には、脱がせた下着が握られたままだ。
すぐにバレると思ったのに、寝惚けているのか志摩は気付かずにいつものようにおはようのちゅー、をしてくる。
どうしようもなくなった俺は、仕方なくそのキスに応じていたけど、頭の中は志摩の下半身のことでいっぱいだった。
どうするんだよ、このパンツ…。


「朝ご飯作るねー。お弁当も。」
「あっ、志摩…!」
「??どうしたの??俺早く着替えなきゃ…。」
「……!!!」

もうダメだ…!!


「??変なのー。」
「うわ…!!」

大慌ての俺とは逆に、志摩はごく普通にパジャマを脱いでしまった。
それはそうだ、志摩自身はそんなこと思ってもいないんだから。


ぶ───……っ!!!

「隼人!!どうしたの?!すっごい鼻血出てるよ!!わあぁ───っ!!」


俺が大量の鼻血を噴き出すと、さすがの志摩も気付いたようで、真っ赤になって下半身を押さえてた。


「志摩、ごめ…。」
「ご、ごめんなさい…っ!お、俺、昨日パンツ穿くの忘れちゃって───!うわん恥ずかしいよー!!」
「え…あの…。」
「うっうっ、隼人、ごめんなさいぃ…。」

泣きながら俺に謝る志摩は、本当にバカだ。
俺が脱がせたのに、俺が悪いのに気付きもしないなんて。
あんまり可愛くて、どうしようかと思った。
だけど俺はやっぱり素直じゃないみたいだ。


「今度から気をつければいいんだ。」


ごめん、志摩。
頭の中で謝罪しながら、手の中の志摩の下着をぎゅっと握り直した。


<終わり>


隼人「これじゃ俺が変態だ…(ガーン)」
志摩「えぇっ!あのパンツのって…、隼人だったのー?!」←実際あったのか
隼人「いやあのそれは…。」
志摩「あ、あの後大変だったのに…。」←ヤられたらしい
隼人「だからごめんって…。」
志摩「い、言ってくれればいいのに…、パ、パンツ脱いで…とか。」 ←いいのかよ言って!


隼人…ぶっ!!(またも鼻血)

「貴方の熱を感じたい」

恋人のことというのは、何に関しても気付くものだ。
隠し事をしている時の疚しい心や、具合が悪いといった身体の変化に至るまで。
自らの全神経は其の人間へと向けられているのだ。
其れは厄介で在りながら、自分だけが味わえる幸福なものだ。

日頃余り病気と言った病気をしない洋平も、この時ばかりは違うのを、銀華は見逃さなかった。
洋平が何時ものように花屋での勤務を終えて、自宅へ戻って来た時のことだった。


「どうしたのだ。」
「え?何?」
「お前の声、何時もと違うな。顔も紅い。」
「…あ~、もしかして。」

どうした、などと白々しいことを言ってみる。
本当は、昨晩熱い契りを交わしている最中から気付いていたと言うのに。
喘ぐ声の掠れ方が何時もと違う音色と言うことも、触れる肌の温度が違うと言うことも。
繋がった箇所の温度が、僅かに高いと言うことも。


「風邪かな…、今流行ってるからなー。」
「熱は有るのか。」
「いや、多分ないと思うけど…測ってないからわかんねーし…。」
「では私が測ってやろう。」

何も知らずに質問に答える洋平の額に手を伸ばす振りをして、銀華はきつく抱き寄せた。
背中に回した手を、瞬時に下部へと移動させる。
腰骨を厭らしくまさぐり、下着の中に手を滑り込ませ、あの熱い双丘の割れ目に指で触れた。


「ぎ、銀華…っ?!」
「どうしたのだ。熱を測ると言っている。」
「や、でもそこはちょっと違…。」
「知らぬか?直腸が一番正確だと言うことを。」
「や、でも体温計あるし…っ!」
「私はその様な機械の値など信じない。あぁそれとも…。」

驚いた洋平の身体が跳ねて、一瞬にして体温が更に上昇していく。
未だ銀華の指はその体内へは入ってはいないというのに、内部からひくつく筋肉の動きで空気が漏れる。
抱き締めたまま、耳朶を甘く噛みながら、銀華は息を洩らすかの様な声で囁いた。


「感じているのか。」

銀華の妖しい微笑みに囚われた洋平は、ゆっくりと目を閉じながら、無言で頷いた。
溜め息を洩らしながら、銀華の細くてしなやかな肩に掴まった。


「汗を流せば、その熱も下がるのではないか?」
「銀…っ、あ…!」
「あぁ、違うな、先程よりも熱くなっているな、お前のここは…。」
「…アッ!銀華…ぁっ!」

今か今かと待ち構えていた洋平の蕾に、銀華は引き寄せられる様にして指を挿し込んだ。
恐ろしい程に食らいついてくる洋平の其処の温度は、自分だけが知っている。
それは永久に下がることなどない、情欲の熱を秘めているのだ。

そして今宵も、其の熱を感じたい。
其れしか生きている意味などないみたいに。

恋とは、厄介で、幸福なもの。

<続く…のかよ…?>

銀華「ほう、此れは何時もと違って真面目だな…。」
洋平「銀っ、感心してんなよっ!」
銀華「どうしたのだ。顔が紅い…。熱を測った方がよいな。」
洋平「い、いいって!!やめ…、あっ、銀華────…っ!」←ホントにやめろ

「秘密のバックルーム」

昼休みのことだった。
俺は志摩に渡された弁当(志摩いわく愛妻弁当)を食べようとして、バックルームへ向かった。
そこには先に休憩をとっていた藤代さんが、煙草を銜えて待っていた。
なんだか嫌な予感がする…。

振り向いた藤代さんの視線に、ドキリとした。
挑発するような目が、鋭く俺だけに突き刺さる。
この目に囚われて、もうどれぐらい経っただろう…。


「なぁ水島ぁ、お前一番最近志摩たんとセックスしたのいつ?」
「セ…、何言ってるんですか突然。」

いつも藤代さんはこんなことばかり聞いてくる。
俺から聞けないとわかると、矛先は当然志摩に向く。


「俺最近ヤってねぇんだよな~、シロの奴、朝立てなくなるからって、もう3日だぜ?」
「たったの3日で何言ってるんですか…。」

呆れてしまった。
俺なんか先週しただけ、つまりは一週間間があいてると言うのに。
噂では聞いてたけど、本当にそういうこと好きなんだなこの人…。
いや、俺も言わないだけで、好きは好きなんだけど。


「はぁー抜きてぇ!水島抜いてくれよ、お前セックス巧そうだよな…なんてな。」
「何言ってるんですか…。」
「あーだから冗談だって!俺がそんなこと…水島?」
「冗談でも…言っていいことと悪いことがありますよ…っ。」

椅子に座る藤代さんの下半身に手を伸ばす。
どうかしてる、こんな一言で熱くなるなんて…。
それほどの妖しい魅力があるんだ…この人には。


「してあげますよ、ただし、声は出さないで下さいね。」
「水島…っ、あっ、やめ…っ!…っく!」

膝立ちになって、藤代さんのものを口に含んだ。
声を出すなと、藤代さんの口を手で塞いでおいて、自分はわざと音を鳴らして。
すぐにそこは上向きに変わり、染み出た先走りを十分に味わった。


「んん…っ、っく…。」
「一度藤代さんの、舐めてみたかったんですよ。」
「んー、んー…。」
「さすがですね、もうイきそうじゃないですか?」
「んーー…っ。」
「俺、舐めるのすっごい好きなんですよね…。」
「ん…ふ…、んん────…!!」

程なくして、藤代さんは俺の口内に白濁を飛び散らせた。
可哀想になって塞いだ口を解放してやった。
涙を滲ませた藤代さんは、信じられないことを吐く。
まさか、そんなことがあるわけがないと思った。
だけど、心から望んでいた言葉だった。


「水島…、好きだったんだ、お前が…。」
「嘘でしょう??」


<終わり>


亮平「嘘に決まってんだろ!!てめぇいい加減にしやがれ!しかも噂ってなんだよ!」
隼人「俺と藤代さんが…(真っ青)しかも俺の片思い小説…。しかも浮気…。あんな台詞言わないし…。(ブツブツ)」
亮平「おい水島、本気にするなよ?俺にはシロだけなんだからな。」
隼人「当たり前ですよ…、俺だってし…、あーなんでもないです。」
亮平「ん?なんだ聞こえねぇぞ?し、なんだって??」
隼人「なんでもないですって…。」(志摩だけですから←言えない奴)

「ブラザー・コンプレックス」

ずっと近くにいる人。
そう、俺がこの世に生まれた時から。
友達じゃなくて、恋人じゃなくて。
その人のことを、俺は尊敬して、心から慕っていたんだ。

俺の、2歳上の、兄貴のことを。

『にーひゃん、にーひゃん!』
『ようへーかあいー、おれのおとーと!』
『にーひゃんしゅきー』
『りょうへもすきー』

まだちゃんと歩くこともできないのに、一生懸命ついて歩いたっけ。
俺のこと可愛い可愛いって、いっぱい抱き締めてくれた。


『兄ちゃん、いじめられた…。』
『よしっおれがそんなやつやっつけてやるっ!』

喧嘩が強かった兄貴は、よくそうやって俺を助けてくれた。
身体中傷だらけになっても、俺のこと守ってくれた。


『いいか、洋平、俺のいうことにまちがいはないからな?』
『うんっ!兄ちゃんカッコいい!』

兄貴の言うことは全部正しいと思ってて。
兄貴のこと、本当に大好きだった。
もちろんそれは、同じ血を分けた兄弟っていう意味だけで。
他に特別な意味はないと思っていた。


1年ちょっと前、そんな兄貴に男の恋人ができた。
最初は絶対何かの冗談だと思った。
だけど本気も本気、今までにないぐらいの本気だったのだ。
その恋人、シロに近付いて、冗談で俺にしろ、と言った。
違うんだ、多分俺は、そうすれば兄貴は誰のものでもなくなると思ったから…。
でもそれはどうにもならなかった。
愛し合ってる二人を壊すことなんかできるわけがない。
シロも凄くいい奴で、俺もそんな二人を壊したくないと思ったから。

そんなこんなで、俺も今ではちゃんと恋人ができた。
銀華は、俺のことを一番理解してくれる、本当に俺には勿体無いぐらいの人だ。
だから、俺は今、とても幸せだ。
ようやく兄貴からも、離れられる気がする。


そう、思っていたのに…。


ある日のことだった。
仕事の帰りに、兄貴の家に用事があって寄った。
シロはちょうど隣のシマの家に行っていて、兄貴と二人きりになった。
俺は何もするつもりなんかなかった。
だけど兄貴が…。

「なぁ、お前と猫神ってどんなセックスすんだ?」
「な、何言ってるんだよ突然。」
「いや、気になるだろ、よそ様の夜のことはよ。」
「え、じゃあ兄貴んとこは?」
「あ?俺とシロか?そうだな…。」
「早く言えって、もったいぶるなよー。」

急かす俺に、兄貴はとんでもないことを口にした。
もちろん、冗談だってことは、頭ではわかっているつもりだった。


「んじゃお前シロ役な?実技で教えてやるよ。」

もう、ダメだった。
その台詞を吐いた時の兄貴の表情が、堪らなく色っぽくて…。
俺だけ見ている目が、堪らなく愛しくなってしまった。

「兄貴…、兄貴がシロ役、いや、兄貴は兄貴でいいよ。」
「は?何わけわかんねぇこと言って……洋平っ?!」
「誘ったのは兄貴なんだからな…、兄貴のせいだ…っ!」
「あっ、洋平マズ…っ、あ、あああぁぁ─────…!!!」


銀華、ごめん‥…──────。


「…銀、ごめん、本当にごめ……。」
「洋平っ、洋平っ。」
「…あ、あれ??」
「どうしたのだ、酷く魘されていた。」

ゆ、ゆ、夢ぇ────??
そりゃそうだよな、俺と兄貴が…。
俺と兄貴がヤるなんて!!しかも兄貴受!!


「げー!気持ち悪い!!」
「何だ、吐き気がするのか。」
「いや、そうじゃな……、うーん、俺には銀華だけだなーと思ってさ。」
「気持ち悪いのは、私のほうだ…。」

<終わり>

洋平「マジで気持ち悪いからやめてくれよ…。」(げっそり)
亮平「俺が入れられる方ってどういうことだよ?あぁ?!」(問題そこじゃねぇし)

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