ずっと近くにいる人。
そう、俺がこの世に生まれた時から。
友達じゃなくて、恋人じゃなくて。
その人のことを、俺は尊敬して、心から慕っていたんだ。
俺の、2歳上の、兄貴のことを。
『にーひゃん、にーひゃん!』
『ようへーかあいー、おれのおとーと!』
『にーひゃんしゅきー』
『りょうへもすきー』
まだちゃんと歩くこともできないのに、一生懸命ついて歩いたっけ。
俺のこと可愛い可愛いって、いっぱい抱き締めてくれた。
『兄ちゃん、いじめられた…。』
『よしっおれがそんなやつやっつけてやるっ!』
喧嘩が強かった兄貴は、よくそうやって俺を助けてくれた。
身体中傷だらけになっても、俺のこと守ってくれた。
『いいか、洋平、俺のいうことにまちがいはないからな?』
『うんっ!兄ちゃんカッコいい!』
兄貴の言うことは全部正しいと思ってて。
兄貴のこと、本当に大好きだった。
もちろんそれは、同じ血を分けた兄弟っていう意味だけで。
他に特別な意味はないと思っていた。
1年ちょっと前、そんな兄貴に男の恋人ができた。
最初は絶対何かの冗談だと思った。
だけど本気も本気、今までにないぐらいの本気だったのだ。
その恋人、シロに近付いて、冗談で俺にしろ、と言った。
違うんだ、多分俺は、そうすれば兄貴は誰のものでもなくなると思ったから…。
でもそれはどうにもならなかった。
愛し合ってる二人を壊すことなんかできるわけがない。
シロも凄くいい奴で、俺もそんな二人を壊したくないと思ったから。
そんなこんなで、俺も今ではちゃんと恋人ができた。
銀華は、俺のことを一番理解してくれる、本当に俺には勿体無いぐらいの人だ。
だから、俺は今、とても幸せだ。
ようやく兄貴からも、離れられる気がする。
そう、思っていたのに…。
ある日のことだった。
仕事の帰りに、兄貴の家に用事があって寄った。
シロはちょうど隣のシマの家に行っていて、兄貴と二人きりになった。
俺は何もするつもりなんかなかった。
だけど兄貴が…。
「なぁ、お前と猫神ってどんなセックスすんだ?」
「な、何言ってるんだよ突然。」
「いや、気になるだろ、よそ様の夜のことはよ。」
「え、じゃあ兄貴んとこは?」
「あ?俺とシロか?そうだな…。」
「早く言えって、もったいぶるなよー。」
急かす俺に、兄貴はとんでもないことを口にした。
もちろん、冗談だってことは、頭ではわかっているつもりだった。
「んじゃお前シロ役な?実技で教えてやるよ。」
もう、ダメだった。
その台詞を吐いた時の兄貴の表情が、堪らなく色っぽくて…。
俺だけ見ている目が、堪らなく愛しくなってしまった。
「兄貴…、兄貴がシロ役、いや、兄貴は兄貴でいいよ。」
「は?何わけわかんねぇこと言って……洋平っ?!」
「誘ったのは兄貴なんだからな…、兄貴のせいだ…っ!」
「あっ、洋平マズ…っ、あ、あああぁぁ─────…!!!」
銀華、ごめん‥…──────。
「…銀、ごめん、本当にごめ……。」
「洋平っ、洋平っ。」
「…あ、あれ??」
「どうしたのだ、酷く魘されていた。」
ゆ、ゆ、夢ぇ────??
そりゃそうだよな、俺と兄貴が…。
俺と兄貴がヤるなんて!!しかも兄貴受!!
「げー!気持ち悪い!!」
「何だ、吐き気がするのか。」
「いや、そうじゃな……、うーん、俺には銀華だけだなーと思ってさ。」
「気持ち悪いのは、私のほうだ…。」
<終わり>
洋平「マジで気持ち悪いからやめてくれよ…。」(げっそり)
亮平「俺が入れられる方ってどういうことだよ?あぁ?!」(問題そこじゃねぇし)