「シローっ、シマーっ!」
「ロシュー!」
「ロシュだー!」
国の式典をすっぽかして、ロシュは日本まで来たらしい。
リゼは無理矢理連れて来られ、ファボルトは飛行機で追い掛けて来た。
国レベルのことなのにわざわざこんなパーティーのために来たというのが信じられない。
喜んでいるのは当のロシュとシロとシマぐらいだ。
「あっ、そうだ!僕からもプレゼントがあるんだ~♪」
「なんだ?」
「えー?何何ー?」
ロシュが空を見上げて合図を送ると、そこには先ほどの飛行機よりも小さいヘリコプターが現れた。
金持ちだとかちょっと変わった奴とうのは、プレゼントも人並み外れていることが多い。
ロシュもその一人で、俺は何が出て来るのかとハラハラしていた。
「2周年おめでと~!」
「おおぉ!」
「わー…!!」
ロシュが掛け声を掛けたのと同時にヘリのドアが開いて、何かが降って来た。
だんだんと視界に迫って来る色とりどりのそれは、芳香を放って俺達のところへ落ちる。
「リーベヌ王国から持って来たんだ。」
それはロシュの住む国の花にもなっている、薔薇だった。
赤やピンクを始め、黄色や青、紫やグラデーションのかかった色まで…とにかくカラフルで物凄い量の薔薇の花だ。
これをもし買うとしたら、どれぐらいの値段になるのか見当も付かない。
「良い香りだな。」
「うん、あ…!これ日本にないやつだ…すげー!こっちは…。」
洋平は早速仕事のことを交えて感動していた。
猫神も花が好きなようで、突然のことにもかかわらず少しだけ笑顔を見せていた。
「綺麗な花ですぅー。」
「なんか持って帰りたいよな…。」
「アオギ、これ美味しいの?」
「こらこらシマにゃんこ、いくらいい匂いでもそれは食べ物じゃないぞ。」
神界というところにも花や植物は存在しているのだが、おそらく薔薇はないのだろう。
桃や紅は本当に持って帰るつもりなのか、降って来た花を掻き集めている。
猫のシマにはまだ植物と食べ物の区別もつかないようだ。
「ロ~シュ~…。」
「わぁっ、リゼ!どうしたの?」
「どうしたじゃねぇよ!こんなところまで無理矢理連れて来やがって!」
「えー、でもーせっかくのお祝いなんだもん。」
ロシュには常識というものが通用しない。
俺達でも何度か会ううちに知っていたことだ。
それでもリゼは諦めずに怒るところは、いつになっても変わっていない。
ついでにファボルトも混じって三人で喜劇みたいな言い争いをするのがお決まりだ。
「お祝いのお気持ちはわかりますが王子、もう少し次期国王としての自覚を持ってですね…。」
「あーもう、うるさいなぁ~。」
「う、うるさいとは何事ですかっ!王子がこのようなことをする度にこのファボルトは…。」
「はいはい、いつもありがとう。」
「な、なんですかその適当な態度はっ!」
「えー、だってぇ~。」
これが始まるとだいたいキリがなく続く。
ファボルトも怒るだけ無駄だと思って諦めればいいのに絶対にしない。
だけどそれがきっとお付きの者の役目だとか使命というやつなんだろう。
ロシュのことを心から立派な王子にしてやりたいという思いの表れなんだろうけれど、それが本人に通じていないのが気の毒と言えば気の毒だ。
「亮平~。」
「ん…?シロ?」
延々続きそうな三人の言い争いを見ていると、後ろからシロに服を引っ張られた。
振り向くとシロの目がとろんと蕩けそうになっていて、顔が少し赤く染まっている。
「へっへ~。」
「シロ…またコーラで酔ったのか…?」
ぎゅっとしがみついて来るシロの身体も少しだけ熱を帯びていて、その熱さが気持ちいい。
早く部屋に行って二人きりになりたい。
服越しなんかじゃなく、直にその肌に触れたい。
たった数分で、俺は果てしない欲望に駆られてしまった。
「隼人ーこれあげるのー。」
「志摩…お前まで…。」
そんなシロと一緒にいたせいで、シマまで同じことになっていた。
バーベキューの串だけ持って、水島に渡そうとしている。
ああいうところが可愛いとか思っているんだろうか…、迷惑そうにしながらもシマの身体をしっかりと支える水島が面白い。
「あと少ししたらお開きにしようか。」
すっかり日も落ちパーティーから数時間が経った頃、遠野が言った。
シロの酔い(?)も醒め、辺りの空気も冷えて来ていた。
中庭の照明以外はほとんど明るいものなんかなくて、都会では見られないぐらいの星空が見える。
その星の美しさと俺に身体を預けていたシロのせいで、今度は俺の方が酔ってしまいそうになった。
「色んなテーマのスイートがあるから、好きなところに泊まってくれ。」
遠野が用意したのはこのホテルのスイートだった。
そんな部屋に泊まったこともなければ、今後も泊まることなんかなかっただろう。
そういう意味ではやっぱり遠野には感謝しなければいけない。
俺達はパンフレットに載っていた写真でそれぞれ部屋を決め、荷物と共に向かった。
■さて、あなたならどんな部屋を選びますか?
□カップルでも友人同士でもOK・アジアンリゾート風スイート
□こだわりたいあなたに・総檜風呂付き和室スイート
□乙女ちっくな夢を見たいお嬢様は・お姫様ルーム風スイート
□海が好きな方におすすめ・水槽のあるブルーを基調とした水族館風スイート
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