「おぉ~、すごい!」
タイプの違う部屋の中から俺達が選んだのは、アジアンリゾート風のスイートだった。
せっかく旅行に、しかも海に来たのだから、それっぽいところが一番いいかと思ったからだ。
予想通りシロは感動に目を大きくさせながら、部屋の中をぱたぱたと走り回っている。
「さすががいこくってやつだな!」
「…へ?」
「え?どうしたんだ?亮平。」
「あー…いや…。」
どうやらシロはここが外国だと思っているらしい。
飛行機に乗って海を渡ったからと言って必ずしも外国ではないということは、今時の子供でも知っている。
人間界に来てもう二年も経つというのに、シロはまだ知らないことがたくさんある。
中には無知だと笑う奴もいるかもしれないけれど、そんな奴は放っておけばいい。
「??亮平?」
「いや、確かにすごいなーと思ってな。」
「うんっ!こんな部屋見たことない!」
「そうだな。」
俺はシロに少しずつ色んなことを教えて来た。
必要だと思えばシロの考えを指摘したり訂正したりもして来た。
それはもちろん必要かもしれないけれど、急がなくてもいい時もある。
この時みたいなのがそうで、せっかくのシロの感動を俺が台無しにしたら可哀想だ。
だから俺は、シロの間違いを黙っていることにした。
「なんかいい匂いがする~。」
シロが目を閉じてくんくんと鼻を動かしている。
部屋に入るまで甘いお香が焚かれていたようで、その匂いが残っていたのだ。
好き嫌いはあるだろうが、それほど強くもないその香りはシロも気に入ったようだ。
わざわざ俺達が入る前には消して、仄かに漂わせておくというのが心憎い。
「おお~、この椅子カッコいい!」
シロは籐で出来た椅子に座って、脚をブラブラと揺らせていた。
家にはない家具達は、それこそ外国から取り寄せた物だろうか。
何から何まで異国の香りがして、シロの間違いも本当のような気になって来てしまう。
「シロ、楽しいか?」
「うんっ!」
「そっか、よかった。」
「へっへー。」
シロがこの旅行に俺と来れて嬉しいと言ったのと同じで、俺にとってはシロが楽しんでくれることが一番の喜びだ。
怪しいと思った旅行を承諾したのだって、シロが行きたがっていたからだ。
俺はシロの言うことは何でも聞いてやりたいし、何でもしてやりたい。
まだ一人前でもない俺が出来ることなんて限られているかもしれないけれど、その限られた中の精一杯を尽くしたいと思っている。
「亮平は?」
「ん?」
「亮平は楽しいか?」
「そりゃあ楽しいに決まってるだろ?お前と一緒なんだからな。」
そうだ、結局俺はシロなら何でもいいんだ。
ごく簡単に言えばそういうことだ。
シロの笑顔を傍で見れる立場にいうられるだけで幸せだ。
こんな気持ちはシロと出会わなければ気付きもしなかった。
俺がシロに色々なことを教えるのと同じ、いや、それ以上にシロは俺に大事なことを教えてくれた。
「亮平?どうし……んっ?!」
そんなことを考えていたら急に愛しさが込み上げて、俺はシロに近寄ってキスをしていた。
突然のことに目を丸くしながらも、シロはキスに応えるように俺にしがみ付く。
俺の好きな高めの体温が、甘い香りと共に俺の身体を包んで行く。
「ん…ふぁ…っ、りょうへ…っ。」
「シロ…?」
「ん…?りょうへ…?」
「どうした…?」
何度目かのキスの途中、シロの様子がいつもと違うことに気が付いた。
パーティーの途中で酔っていたみたいに、目がとろりとして吐く息が熱い。
「あ…オレ…ぽーっとしちゃって…。」
「え…?」
「なんか…あの…、亮平のこと好きだなーって思って…。」
「おいおい…そんなこと言うなよ…。」
「あ…ごめ…。」
「興奮しちゃうだろうが…。」
シロの殺し文句とも言える台詞に、俺は見事に一発でやられてしまった。
俺をじっと見つめる瞳は潤んで、口元からは唾液が零れている。
濡れた唇はいつもよりも艶やかで色っぽく思えて、俺までぽーっとしそうになってしまった。
「こ、興奮って…亮平…。」
「シロは?興奮しないのか?」
「わかんな…っ、あ…!」
「わかんなくはないだろ?」
椅子に座ったシロの服を捲り上げ、胸の小さな突起を口に含む。
ビクリとシロの身体が大きく揺れて、そこは固く膨れ上がる。
たった今触れただけなのに、すぐにこうなってしまうんだからな…。
その反応は二年経った今でも、いや、時が経てば経つ程新鮮に感じられてしまうのはどうしてだろう。
「あ…亮平っ、あ…ぁっ!」
一気に火が点いてしまった俺は、そこをきつく吸い上げるように愛撫を続けた。
シロが感じるのは右側よりも左側だ。
それはセックスをするうちに気付いたことだ。
これからもそうやって、身体で色々示して欲しい。
どこが好きなのか、どこが感じるのか、恥ずかしくて口に出来ないのなら反応で見せて欲しいんだ。
「あ…っ!ダ、ダメ…っ!」
「ダメ、じゃないだろ?」
「だって…あっ、やぁっ!」
「や、じゃないだろ?」
俺はシロを責めるような台詞ばかり吐きながら、下半身に手を伸ばした。
薄い生地の服の上からでも十分にそこは変化を遂げていて、期待以上の反応に嬉しくなる。
「あ…っ、やだ…っ!」
俺はシロの脚を持って大きく開かせながら、そこを激しく舐め回した。
先端から溢れ出る透明な雫の味が、口内にじんわりと広がっていく。
何も知らなかったシロがこんな格好をしているのは、俺の教育の賜物だ。
セックスだって馴れ合いにならないように色んなことを試して来たし、その度にシロは驚いて新しい反応を見せてくれた。
そしてこれからもそれをずっと続けて行きたいと、ずっとシロとこういうことをしたいと、俺は思っている。
「りょうへ…痛い…っ。」
「え…?まだ入れてねぇぞ…?」
「違…てば…!お尻…っ、お尻が擦れて…っ。」
「あぁ、ごめん、そうだな…。」
固い椅子の表面でシロの柔らかな肌が傷付いたりしては大変だ。
男同士のセックスに痛みを伴うのは当然だが、出来れば軽減してやりたいと思うのは自然なことだろう。
痛くてもその後の快感で打ち消してしまうような、優しくて気持ちのいいセックスをしたいと思うのが俺の愛情だ。
しかもこの場合その痛みとは違うものなんだから、防ぐことはすぐにでも出来る。
「わ…!亮平っ?!」
「俺の大事なシロだもんな。」
「へへ…、うん…っ!」
「大丈夫、痛くはしないからな。」
一体何を根拠にそんなことを言っているのかはわからない。
ただ俺はそう言うことでシロを安心させてやりたかった。
安心して俺に身を委ねて欲しいと思ったんだ。
俺は椅子に座っていたシロを抱き上げて、そのままベッドまで運んでゆっくりと下ろした。
「優しくするからな、シロ。」
ベッドに寝かされたシロの頬にちゅっと音をたててキスをして、甘い台詞を吐く。
こんな恥ずかしい台詞が迷いもなく出てくるなんて、どうかしている。
旅の開放感というものは羞恥心まで取り去ってくれるのだろうか。
なんだか魔法みたいだ…。
「亮平…好き…っ、オレ亮平が大好き…っ。」
「うん、俺も…。シロ、好きだ…。」
シロが顔を真っ赤にしながら俺の首に手を回すのは、この先に進んでもいいという合図だ。
小さくて細い身体で、精一杯俺を受け止めてくれるということだ。
さすがにいきなり挿入するのは出来なくて指で慣らしたけれど、すぐに俺は我慢が効かなくなってしまった。
指で感じた熱いシロの体内に早く入りたくて、早く一つになりたくて…。
「あ───…っ!!りょうへ…っあ!やあぁ───…!」
「シロ…っ!」
まだ完全に解れてもいないそこに、俺はゆっくりと自身を沈めた。
痛くはしないと言ったのが嘘になってしまったのには罪悪感を覚えたけれど、シロは拒むこともなく一生懸命になって俺を受け入れようと必死だ。
そういうところが可愛いんだ。
俺のためだとか、俺に喜んで欲しいだとか。
そうやって俺のことだけに夢中になってくれるシロが、俺は世界一可愛いと思う。
「やぁっ!あっ、あぁ…っん!」
「シロ…、ココか…?」
「あっあん!ダメ…っあ!りょうへ…やだ…っ!」
「ココだよな…っ?」
セックスを重ねるごとに、シロの弱い部分がすぐにわかるようになった。
体内を熱いもので突かれて、シロは次々と甘い声を上げる。
口元から唾液をだらだらと零しながら、しがみ付く腕にも一層力が込められる。
背中に爪が食い込んで、明日になったら跡がくっきり残っているのは確実だ。
シロが付けた深い愛の跡みたいで、実は俺はそういう傷が好きだったりする。
「やぁ…っ、も…出ちゃ…っ、亮平っ、オレ出ちゃう…っ!」
「うん…っ、俺も…っ、シロっ、一緒にイこうな…っ?」
シロは口を大きく開けて、俺の動きに応える。
どくどくと脈打つように震えるそこが、発射したくて堪らないのがわかる。
それはシロの中にいる俺も同じで、俺達は二人でその頂点を目指した。
「ああぁ───…っ!りょう……ん────…っ!!」
「は…っ、シロ………!!」
ベッドが壊れてしまうぐらいシロの身体を揺さ振って、すぐに二人でそこへと達した。
放たれた白いものがシロと俺を汚して、二人でぱったりとベッドに倒れ込んだ。
その後汚れた身体を流そうと風呂へ行ったはいいものの、そこでも行為に縺れ込んでしまった。
更にその後せっかく綺麗になった身体でベッドに戻っても、またそこで俺はシロを汚した。
結局何度やったのかわからないぐらい、俺達は一晩中セックスに溺れてしまったのだった。