「わー…すごいね紅…!」
「うん…!」
旅行に来たその日の夜。
ぼくたちは水族館をテーマにした部屋を選んだ。
部屋の中は青い色で統一されていて、驚いたことに大きな水槽まであった。
中では魚たちが気持ちよさそうにすいすいと泳いでいる。
「あ、これ昼間に見た魚だー、ねぇ紅…。」
「うん…。」
ぼくは水槽に夢中で、色々な魚を指差しては紅に話し掛けていた。
紅と一緒に感動を分かち合いたかったんだ。
でもなんだか紅はいつもと違って変で、元気がないみたい…?
どうしちゃったんだろう…?
もしかしてつまんない?それとも疲れてる?
ぼくは紅に笑って欲しくて、一生懸命話を続ける。
「見て紅、外にお風呂があるよ!」
その部屋は中にもお風呂があったけれど、それよりも大きなお風呂が外にもあった。
なんだか自分たちが住んでいるところを思い出してしまう。
ぼくたちが住んでいる家も、銀華さまが外にもお風呂を作ってくれたんだ。
「すごーい!なんか泡が出てるよ!」
そのお風呂は泡がぶくぶくと出ていて、ぼくは今までこんなのを見たことがなかった。
お風呂の形もまん丸で、そういうのも初めてだ。
「紅、入ろうよ。」
「うん…。」
紅は相変わらずだったけれど、お風呂に入ってゆっくりすれば疲れも取れるかもしれない。
僕は紅の腕を引っ張って、そのお風呂に入るのを促した。
「はー、気持ちいいねー。」
自分の身体に泡が当たるのが気持ちいい。
ぶくぶくと吹き上げる泡の中では照明が光っていて、凄く幻想的だ。
なんだか違う世界にいるみたい…。
って、ぼくたちからしたらここは違う世界なんだけど。
「桃…。」
「ん?どうしたの紅……っ?!」
ぼくがお風呂の中ではしゃいでいると、突然紅に抱き締められた。
びっくりはしたけれど、そこはぼくが一番安心するところだ。
ぼくはゆっくりと目を閉じて、紅に身体を預けた。
「桃…。」
「べ、紅どうした……んうっ?!」
抱き合いながら、紅の唇がぼくの唇に重なった。
重なって、絡まり合って、だんたんと深いものになっていく。
ぼくはお風呂のせいなのか紅のせいなのかわからないほど、身体が熱くなっていた。
「桃、好きだ…。」
「紅……あっ、紅…っ!」
桃の言葉は真っ直ぐなんだ。
いつもは照れたりしているのに、こういう時だけ潔い。
強引なその言葉にぼくはいつも溺れてしまうんだ…。
「桃、大好き…。」
「あっ、紅っ、紅待って…っ!」
危うくここがどこなのか忘れてしまうところだった。
家でもそうだけど、周りに誰がいるかわからない。
特に青城さまに見つかったりなんかしたらどうなるか…。
「どうして?」
「だ…だってここお風呂…。それに青城さまに…。」
「青城は今ここにいないよ。」
「で、でも…っ。」
確かに青城さまはこの部屋にはいない。
でもこんなところで…屋根のない場所でするなんて…。
でも…でも……。
「桃は嫌?おれとこういうことするの。」
「う、ううんっ、嫌なんてことは…。」
「ずっと…ずっと桃と二人きりになりたくておれ…。」
「紅…。」
紅が少し変だったのは、このことを考えていたからだった。
いつもは絶対に二人きりになんかなれないから、その機会にぼくといっぱいしたいって思っていたんだと思う。
「桃、好き…。」
「べ、紅ぃ…。」
「桃は?」
「ぼくも…ぼくも好き…!紅が大好き…!」
本当のことを言うと、ぼくは嬉しかったんだ。
本当は少しだけ、そういうことをしたいって思っていた。
だってどこに行っても、ぼくたちの周りには誰かがいたから。
ぼくはこうして二人きりになれて緊張してしまって、さっきはあんな風に喋って誤魔化していたんだ。
照れくさくて恥ずかしくてどうしようもなかったから…。
「んっ、ん…。」
ぼくが紅にしがみ付いたのと同時に、紅はもう一度ちゅーをしてくれた。
離れた唇はぼくの首筋を伝って、胸の辺りへと落ちる。
「桃…気持ちいい…?」
「う…うんっ、紅…っ、紅ぃ…っ!」
紅はこういう時も真っ直ぐだ。
本当は凄く恥ずかしいのに、紅に言われるとぼくまで素直になってしまう。
どんなに恥ずかしい台詞も、紅が導いてくれるなら僕は何でも言える。
なんだか紅はこういう時も魔法使いみたいなんだ…。
「桃、こっちも…。」
「や…っ!」
胸に触れられているうちに疼き始めた下半身に紅の手が伸びる。
お湯の中で揺れる紅の手が、ぼくのそれを優しく包み込む。
包み込んだそれを擦られて、だんだん形も変わっていく。
「あ…ぁ…んっ!紅ぃ…っ、紅ぃ…っ!」
ぼくのそれの先端からはお湯とは違うものが溢れ出していて、紅の手が動く度に身体が震える。
紅の手もお湯の温度も気持ちがよくて、どこか違う場所にいってしまいそう…。
「桃、後ろ向いて。」
ぼくは紅に言われるまま、後ろを向いてお風呂の縁に手をついた。
お湯と紅の指がぼくの中にゆっくりと入って来て、身体がビクリと跳ねる。
「紅…っ、あ…、あっあ…!」
場所が違うせいなのか、ぼくはいつもよりも興奮してしまっていた。
耳元で聞こえる紅の息遣いが激しくて、紅も同じ気持ちなんだと言うことがわかった。
ぼくたちはやっぱり、同じなんだ。
身体も心も違うけれど、考えていることも感じていることもいつも一緒。
生まれた時から一緒だったんだもんね…。
「桃、いい…?」
ぼくは紅の言葉に何も言わずに頷いた。
紅にも気持ちよくなって欲しい。
紅と一緒になりたいって、口にしなくても紅ならわかってくれるよね…?
心の奥底から紅が好きで、紅が欲しくて堪らないんだって。
「あ───…っ!」
「桃……っ!」
ぼくはあまりの痛みと圧迫感に、動き回ってバシャバシャと音をたてた。
そんなぼくを優しく慰めるようにぼくの手を紅の手が押さえ付ける。
お風呂の縁を掴んだ指に力が入って、爪が折れてしまいそうだ。
「紅っ、紅いぃ…っ!」
ぼくは大きく口を開けながら、自分の中を突いて来る紅を感じた。
ぼくよりも大きな身体に抱き締められながら、紅だけを感じている。
「はぁ…っ、あっ、あぁんっ!!」
「桃…っ、もういい…っ?」
ぼくの中の紅は今にもはち切れてしまいそうで、そんな紅と一つになったぼくももう限界だった。
ぶんぶんと首を縦に振って、ぼくは紅の動きに耐える。
早く紅と一緒に、違うところに行きたくて。
「あぁんっ!紅…っ、紅いいぃ───…っ!!」
「桃…好きだ……っ!」
紅の熱い台詞を聞きながら、ぼくは紅と一緒にその場所に行くことが出来た。
揺れる水の中には、泡に混じってぼくたちの白いものが放たれていた。