「ス ト イ シ ズ ム」【7】
「マ グ ネ テ ィ ズ ム」シリーズ 「先生……っ!」

張り裂けそうな程に緊迫した空気の中、五十嵐が声を詰まらせる。
ベッドの上に押さえ付けて五十嵐の上に跨ると、真っ白いシーツに皺が幾つも出来ていた。
聞こえる荒い息遣いは興奮する自分と、抵抗する五十嵐、両方のものだ。


「最初に言っただろう?」
「何を……っ?」

五十嵐のような細身の男なら、所詮力では自分には及ばない。
それをわかって、こんな風に無理矢理犯すようなこと…。


「抱いて下さいと。」
「それは…、せん……んっ!」

「先生」そう呼ばれて、夢中でキスをした。
もしかしたら、そうすることで自分の立場を忘れたかったのかもしれない。

「失恋したと言っていたな。」
「……んっ、んん…っ。」
「浅岡にこうされたかったのか?」
「違いま…っ、あ…う…ぅんっ!」

五十嵐が何も言えなくなるように、隙を与えないようにした。
生温い唾液を溢れんばかりに注ぎ込み、舌を絡ませた。
初めてした時よりももっと激しいキスに、五十嵐は稚拙に応えようとするだけだ。
言い訳なんかさせない。
その口から反論なんてさせない。
その口から自分以外の男の名前なんて…。
こんなに切羽詰まった状況になって、初めて自分の思いに気が付いた。
五十嵐のことをおかしいと言ったけれど、自分も人のことは言えないと思った。


「君の望み通り、抱いてあげよう。」
「先生…、僕は…っ。」
「ただし三崎先生のつもりでじゃない。五十嵐、君だと思って抱く。」
「先生…っ、………あっ?!」

濃紺色の上着の下にきっちりと着込んだシャツの前を、物凄い速さで開く。
シーツの上には、同じ白の小さなボタンが2、3個飛び散った。
同じ男の、膨らみもない胸に顔を埋めて擦り付けると、五十嵐の身体がびくりと跳ねた。


「ふ…、不要だと思っていたが、感じるらしいな。」
「あ…、あ…ぁっ!」

目の前にあるその小さな粒を、口に含んで中で転がす。
自分の口内でそこが次第に快感で腫れていくのがわかった。
舌先で丁寧に舐めても、甘く歯を立てても、五十嵐は震えながら喘ぎを洩らした。
こんなにもここが、男でも感じるものだとは思っていなかった。
今の自分は、誰にも止められない。
そう思いながらズボンに手を掛けた時、ほとんど残っていない力を振り絞って五十嵐が抑止した。


「先生…、教えて下さい…っ!」

ぎゅっと目を閉じて最後の抵抗を見せる五十嵐が、なぜだか愛しく思えた。
反抗されると余計に、全部を支配してやりたくなる。
身も心も自分のものにして、忘れられないように。
ずっと自分の方を見ているように。
いつの間に俺は、五十嵐の罠に嵌ってしまっていたんだろう…?


「先生は…っ、僕のことが…、好きなんですか…っ?」
「言って欲しいのか?」
「はい…っん…!」
「まずは自分から言うのが礼儀じゃないのか?」

俺はなんてずるい人間なんだ。
いくらそこで「はいそうです好きです」と言えないからと言って、五十嵐をもっと苛めるようなことを言って。
それとも自信がなくて、はっきり言って欲しいんだろうか。
俺は、こんなに女々しい奴だったのか…?


「先生が好きです…、好きです、先生っ、好きです…っ!」
「もっと…。」
「先生、好き…、先生…っ、先生は…?」
「もっとだ五十嵐。聞こえない。もっと言え…!」

今まで振り回された分、何度でも言わせてやる。
真っ赤になって涙を溜めて、声を上げて泣いてしまってもいい。
だけど俺は…、そんなおとなしくなった五十嵐に素直に言えるのか?
自分から五十嵐を苛めているのに、その苛めに負けて欲しくないとも思ってしまった。
とても矛盾しているけれど。


「先生…、好きです…、好きです…っ。好き…っ!先生好きです…っ!!」

繰り返される告白に、戸惑いを覚えた。
違う、五十嵐はこんなんじゃない。
こんな風に誰かの言いなりになったりなんかしない。
我儘で自己中心的な考えが、胸の辺りをむかつかせた。


「聞こえないぞ、五十嵐…!」
「あ…っ!先生…っ、あ…、アァッ!」

余力のない五十嵐の手を振り解いて、ズボンの中に手を突っ込んだ。
キスと胸への前戯で既に熱くなったそれを、ぎゅっと握り締める。
溢れる先走りが、指にねっとりと纏わり付いてくる。


「先生…も…っ、好きなんでしょう…?」
「…なんだと?」
「僕のこと…っ、好きなんでしょう…っ?先生…っ?」
「…何を言っているんだ?」

紅潮した顔で息を荒くしながら、五十嵐の台詞が変化していく。
強い瞳で真っ直ぐに見つめられて、動けなくなりそうだ。
だけどこれを待っていた。
そうやって自信満々で、馬鹿にしたような態度を取られるのを。
それを支配してこそ、自分はこれが恋だと思えるのだ。


「僕は先生のそういう…っ、何にも興味がなくて動じないところが…、好きです…っ!」
「褒めているのかそれは。」
「先生のその服みたいに真っ白で禁欲的で…、こういうことに興味がないみたいな…っ、ん……あぁっ!」
「話がずれているんじゃないか?」
「でも本当はこんなにいやらしい…っ!そういうの、見たかったんで…っ、ん…、アァッ!」
「それはお互い様だな…っ。」

罠でもなんでもいい。
今すぐに五十嵐を支配して、全身で感じたい。
ズボンを下着ごと全部脱がせると、露になったそれを迷わず口に咥えた。


「あ…ぁっ、ア…ッ、んん…っ!」

次々に溢れ出る先走りに自分の唾液を混ぜ合わせて、濡れた音を立てて舐め回した。
完全に勃ってしまったそれを、達してしまう寸前まで口淫を繰り返す。
ぐちゃぐちゃになってしまったそこから一度口を離して、思ったよりも細い脚を高く持ち上げた。


「先生…っ?!」
「抱くということはこういうことだろう?」
「………アアァッ!先生っ、やめ…、アッ、先生そこやめ……っ!ひァ…ッ!」
「ちゃんと濡らさないと大変だからな。」

柔らかな二つの丘の間に、舌を滑り込ませた。
その窄まりは初めて何か受け入れるので精一杯なぐらい狭い。
本当にここに自分のものが入るのか不安になったが、そこで諦めるわけにはいかない。
入らないなら、入るようにすればいい。
入るようになるまで、自分が何とかすればいいのだ。
周りまで丁寧に舐めて十分に濡らすと、指で慣らそうと中指の先を入り口に当てた。


「ふ…、あ…、ああぁ…ッ!」
「力を抜きなさい、まだ入っていないぞ。」
「ふ……っく、ンンッ、ん…っ!」
「そうだ、それでいい…。」

苦労はしたものの、時間をかけると案外スムーズに挿入された。
中指で解した後は人差し指、薬指と順番に増やして最終的にはそれらをバラバラに体内で動かして十分に慣らすことが出来た。
しかし指と自分のものとでは、比較にならないほど違う。
五十嵐の脚を思い切り高く持ち上げて、今度は膨張した自身を挿入する体勢になった。


「先生っ、先生…ッ、あ、ア───…ッ、アアッ!!」
「まだだ…、まだ全部…っ、五十嵐、力を抜きなさ…っ。」
「先生っ、やっぱり…っ、アッ!はあァッ!」
「やっぱりやめるなんて言わないだろうな…っ?」
「あ…、ぅあ……っ。や…あ…っ!」
「五十嵐、いい加減にしろ……ッ!」

暴れて逃がれようとする五十嵐の手首を強く掴んで、頬をパシンと叩いた。
ここまできて逃げようなんて馬鹿なことをする…。
それともそれも、罠の一つなのか…?
もう……どっちでもいい…。
乱れて首元に纏わり付いていたネクタイを、その手首に巻きつけてベッドの柵に繋げた。
もしこれで強姦罪で訴えられたら…、いや、そんなはずはない。
五十嵐はこういう自分を求めていたはずだ…。


「せん……っ、アッ、あ…!アッ、ああぁ────…っ!!」
「………く……ッ!」
「あ、先生っ、好きで…、アッ、あぁ……っ、ッア!」
「……きつ…っ。」

裂けそうなほど狭いそこに、なんとか自身を沈めた。
先程舌と指で解したおかげで少しはマシかもしれないが、五十嵐の負担は相当なものだろう。
その圧迫感と異物感が挿入しているこちらにまで、薄い粘膜を通して伝わってくる。


「先生…、好きです…っ、あ……っん!」
「どうした?」
「あ…、先生…、ア……ハァンッ、あぅっ!」
「イイのか…?五十嵐…イイんだな?どうなんだっ?!」
「は…はぁっ!いいで…っ、あ…イイですっ!イイッ、先生イイ…ッ!」
「ほら見ろ…っ、君の方こそこんなにいやらしいじゃないか…っ!」

五十嵐自身の先端が一層濡れたのを見てはっきりとわかると、後は容易だった。
胸と胸がくっついて、お互いの皮膚の下に汗が染みて行きそうなぐらいまで近付いた。
首筋に舌を這わせながら思い切り体重をかけて、最奥を突く。
時々五十嵐の弱い部分に当たると、甘く高い喘ぎ声が耳のすぐ近くで響いた。


「先生…ァンッ、あ…、おかしくなりそ……っ、ア…ッ!」
「なりなさい…。」
「せん…、あっ、あああぁ……ッン!!」
「おかしくなったところを見せるんだ…っ!」

ベッドが壊れてしまいそうなぐらいギシギシと軋む。
最初の痛さと後に訪れた快感で、五十嵐の瞳から涙が溢れている。
口元からは唾液が溢れて、今までで一番乱れているのに一番色っぽくて、一番好きな表情だと悦に浸ってしまった。


「だめ…っ、もうだめぇっ!せんせ…、…くっ、イクッ、イく……っ!」
「見せるんだ五十嵐…っ!」
「あっ、せん…───…っ、ンン─────…ッ!!」
「…………ッ…!」

腹部に五十嵐が白濁を放ったのを感じて、すぐに自分も達していた。
ベッドの上は色んなものでぐちゃぐちゃに濡れていたけれど、あまりにも激しいセックスに数分間はそこから動くことが出来なかった。
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