「マ グ ネ テ ィ ズ ム」【6】
「マ グ ネ テ ィ ズ ム」シリーズ 「はぁ……っ、あっ、あぁ…っ!」

カーテンを閉め切った物理室で、自分の喘ぐ声と溜め息と、浅岡が唾液を絡ませて胸元を舐める音が響く。
ここがどこなのかさえ、時々わからなくなるぐらい溺れそうになってしまう。
だけどそんなことは今更だ、一度始まってしまったら止めることなどできない。
浅岡を思う心も、その心と心が通じ合ってするセックスも。


「先生の乳首女みてぇ。こんな感じるの?」
「あ…っ、やぁ…っ!」

胸の突起に緩く歯を立てられて、身体が大きく跳ねた。
噛まれたそこがじくじく痛いのに気持ちがよくて、自分はおかしいのではないかと思った。
肌蹴たシャツの胸元に埋まる浅岡の髪を、僕はくしゃりと掴んだ。


「んん…っ!あ……!」

執拗に胸を弄られて、変化してしまった下半身に触れられる。
熱を帯びたように熱くなった僕のそこは、はち切れそうに膨らんでしまっていた。
性急にジッパーを下げられ剥き出しになったそれが自分の視界に入ると、どうしようもないほどの羞恥心が込み上げる。


「先生、見ろよ。俺も同じぐらい勃ってるよ。先生のせいで。」

ベルトを緩めた浅岡が口の端を上げて妖しく笑うと、背筋にぞくぞくと何か異様なものが走った。
本人の言う通りそそり立った浅岡のものを目の前にすると、僕はどうにかしてそれに触れたい衝動に駆られた。
気が付いた時にはそれに手を伸ばし、迷いもせずに自分の口に含んでいた。


「何?そういうことしてくれんの…?」

浅岡が吐き出すのは喜びの台詞なのか、嫌味の台詞なのかわからない。
まだ全部見えない浅岡の心をこの身体で、この行為で感じることができるなら…。
僕はそう願いながら、一心不乱に口淫を施した。


「…んふぅ…っ、んっ…ん…っ。」

口内に収まり切らないほど膨張した浅岡のものを、唾液を舌を絡ませながら愛撫を続ける。
だらしなく零れ落ちる唾液に紛れて、浅岡から滲み出る先走りの味をじんわりと感じた。
時々顔を歪ませながら漏れる浅岡の吐息が耳の奥で響いて、僕は異常なほどに興奮を覚えた。


「前も思ったんだけど…この顔…っ。」
「…んっ、…ん!…けほっ、こほっ!」

僕は浅岡のものを咥えたまま、前髪ごと額を掴まれて上を向かされた。
突然のことに激しく咽て、それでもすぐにまた咥え込む。


「あんたの顔、エロ過ぎんだよ…っ。」
「あさお……っ!!」

残虐的と言っていいほどの笑みを浮かべられた後、無理矢理それを口内から出された。
肩を掴まれ床に叩きつけられるようにして、うつ伏せにされる。
脱ぎ捨てた白衣が丁度下にあったけれど、この衝撃にはなんの意味も成さない。


「すっげ…、熱い…。」
「んんっ!アッ、う…ぅん…っ!!」

唾液で濡れた浅岡の指が、僕の後ろに一気に数本侵入してきた。
痛みと快感が同時に訪れて、痙攣したように身体が震える。
何度も唾液で濡らしては出し入れされる指を、そこは伸縮しながら咥え込む。
その音があまりにもいやらしく刺激的で、僕はそれだけで達してしまいそうだった。


「先生、あんた今まで何人とした?ここに何人入ったんだ?」
「してな…っ、あっ、ヒ…ァッ!」
「嘘吐かなくていいよ、じゃなきゃこんな感度いいわけないだろ。」
「ちが…っ、ア…ア…、ア…ァンッ!」

思春期目前に同性しか愛せないと知ってから、僕は何人かと付き合った。
そして恋人になったからには、当然身体の関係へと発展した。
浅岡の言う通り、その箇所で何人かと繋がったことはある。
だけどそのことを浅岡にわかられていても、この場では言いたくない。
今僕が好きなのは浅岡で、今僕がセックスをしたいのは浅岡だからだ。


「ふ…まぁいいや。先生、この後どうすんの?」
「ああぁっ!ん、ん…っ!」

奥にある弱いところの近くまで指が突き刺さって、危うく僕は達しかけた。
上向きになった自身の先端から先走りは溢れんばかりに出ていて、もう限界だった。
早く浅岡と繋がりたい、浅岡のものでめちゃくちゃにして欲しい。
浅岡が欲しい、浅岡しかいらない、浅岡が全部だ。


「おねが…っ、浅岡…っ、おね…っあ!」
「聞こえない。」
「……れてっ、浅岡っ、お願いいれて…っ!!浅岡…ぁっ!」
「ホントにエロいな、あんた…っ。」

僕は欲望を思い切り口にした。
からかうような台詞を言われながら、腰を強く掴まれて入り口に浅岡のものが触れた。
そして次の瞬間、物凄い勢いでそれが突き刺さるように僕の中へ入って来た。


「ア────……ッ、アアアッ!!!」

気絶しそうなほどの衝撃に、僕は思わず床に爪を立てた。
下にあったくしゃくしゃの白衣が、破れてしまうんじゃないかと思うぐらいだった。
しかし熱い塊が自分の中で蠢いていくうちに、痛みよりも快感が勝っていくのがわかった。


「あ、あぁ…んっ!!ひぁっ、ア…ァッ!!」

いやらしいと思われてもいい、この快感に酔いたい。
浅岡を味わい尽くしたくて、支えられた腰を自らも激しく動かした。
視界が涙で滲んで、ほとんど何も見えない。
こんなセックスは、初めてだった。
どうなってもいい、壊れてもいいと思ったのは。


「すっげぇ声…、聞こえたらどうすんの…っ?」
「……むぅっ!ん───…っ!」

有り得ないぐらい大声で喘いでいた僕の口を、浅岡の手が塞いだ。
そんなことをされても、快感に上げる僕の声は止まない。
籠もる浅岡の掌の中で、唾液を零しながら僕は喘ぎ続けた。
もしこんな声が聞こえたら、こんなことがバレたら、ただでは済まない。
自分は間違いなく懲戒免職、浅岡もどうなるかわからない。
それでもいいと思った。
何もかもなくしても、この男が欲しいと思った。


「ンン──…ッ、ん…くっ!」
「ふ…イきそうなんだ?」

耳元でくすりと笑った浅岡が、口元から手を解放した。
涙と唾液とが混じって、僕の顔はぐちゃぐちゃだ。
ぽたぽたと先走りが落ちるそこから、早く全部を放ちたい。
そして自分の中で、浅岡の熱を放って欲しい。
僕は力を振り絞って、浅岡の揺さ振りに応えた。


「イくっ、浅岡…ぁっ、イく────…っ!!」

それからすぐに、床に白濁したものが飛び散った。
後ろで唸る声が浅岡の喘ぎだとわかって、嬉しいと思った瞬間に体内にも勢いよく放たれていた。

その後の数分間を、僕は覚えていない。
気を失っていたことは確かだった。
好きな人と繋がったこと、それだけが今のすべてだった。
そして僕は早くもその事実に溺れるように、昼休みが終わるまで浅岡と激しいセックスを繰り返した。

本当に、どうでもよかったんだ。
浅岡のどこかを見ているあの視線が何なのか、どうして浅岡がこんなに意地悪で残虐的なのか。
この時はその理由なんて考える余裕もなかった。
浅岡の心の闇のことなんて考えることもできなかった。

僕はなんて自分勝手で愚かで稚拙な人間なのだろう。
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