「スターの茨道」-3
「じゃあ今日はステージでの衣装替えの練習だ。」
「はぁ?それ歌と関係ねぇし!」
「関係あるんだよ、早替えってのは演歌でもなんでもよくあることだ。」
「そ、そんなぁ…。」
確かにテレビの歌番組でそんな場面はよく見る。
周りで踊るダンサーか誰かが、衣装を素早く替える、あれだ。
俺は黒田に言われた通り、いつもの鏡の前で服を脱ぎ始める。
「全部だ全部、パンツも脱げ、早くしろ。」
「っていうか普通全部脱がないし…。」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもありませんよっ!」
くっそー、こうなったらもう自棄だ!
俺は、素早く服と下着を脱ぎ捨て、黒田と鏡の前で素っ裸になった。
これと衣装替えとどういう関係があるって言うんだよ…。
「狭川。」
「な、なに…。」
「勃ってるんだろ?」
「ち、ちが…っ、わーバカやめろ!」
下半身を覆っていた手を黒田に無理矢理剥がされる。
指摘された通り俺のそこは、何もされていないのに見事に勃起してしまっていたのだ。
毎日毎日あんなことをされて、麻痺してしまったのか。
それとも、黒田に見られているうちに、興奮でもしてしまったというのか。
考えたくないけれど、勃起してしまっている事実がある。
「元気がいいなぁ。」
「い、言うなって…!」
「まぁまぁ、もっと元気にしてやるよ。」
「や…だっ、あ、あ…!」
こうして俺は、黒田にされるがままになる。
反抗しようとしても、俺にはできない。
それは一千万円を払えないからじゃなくて、そうじゃなくて…。
認めたくないけれど、気持ちがいいからだ。
自分でもおかしいとは思うけれど、身体がそう言っているのだからどうしようもない。
「自分で握ってみろ。」
「はぁ?!や、やだ…っ。」
「マイクを握る練習だ、ほら。」
「そんなバカな…っ、あっ、あ…っ。」
マイクと称した自身を、握らされた。
今まで黒田に触られていたお陰で、その先端はやはり濡れてしまっている。
防音設備の整った室内で、そこを握っては擦る度に、いやらしい音が響いた。
こんな信じられないことをさせられているのに、俺の身体は正直だ。
「あっ、ダメイ…っ、あっ。」
「ダメだなーまだまだ…。」
「ん…、んんっ?!ちょっ、あっ、何っ?!そこ何…っ!」
「もっと尻に力を入れて、尻を引き締めろ。マイクは離すなよ、歌手の命だからな。」
揺れる腰元を支えられながら、黒田の手が後ろに回された。
既に何が腹筋なんだかわけがわからないこのレッスンも、想像もつかないところへ来てしまっていた。
もちろん今までそこに触れられたことなんかなくて、一瞬身を竦めた。
「な…にす…っ、冷たっ、な、何…っ?!」
「んー男は自然に濡れないからなぁ、ここは。」
「濡れっ?あっ、あっん!!」
「いい声だな…初めてか?」
思わず出てしまった妙な声に、黒田がクスリと笑う。
当たり前だ、普通はエッチ…というか歌のレッスンするのにこんなところは使わない。
あくまでホモじゃない場合だけど…ってことは黒田はホモ?!
そして俺もホモに…?!
そんな動揺している暇もなく、黒田の指は侵入して来る。
潤滑剤で濡らされた細くて長い指は、俺の後孔にどんどん飲み込まれていく。
「ん…っく…、あ…あっ、あ…っ!」
「ほら、ちゃんと立ってろ。」
そんなことを言われても、出来ないものは出来ない。
指を受け入れたそこが、初めての異物感にひくついている。
やがて異物感だけだと思っていた感覚の中に、おかしな快感が生まれ始めて、俺はもうどこかへ行ってしまいそうだった。
「マイクは絶対離すな、狭川。」
「う…ぅんっ、あっ、変だっ、俺変になる…っ!」
「フフ、すごいな、ちゃんと引き締まって来てるぞ、お前のここ…。」
「あっ!!やあぁ────っ!!」
何本入ったのかは不明だが、俺の中で黒田の指がぐるりと掻き回した瞬間、弱いところに当たってしまったらしい。
立ったまま鏡に向かって射精してしまった後、ぐらりと視界が揺れて床に崩れ落ちた。
「はぁ…、はぁ…っ。」
「まだまだだな、狭川。これからも特訓しないとなぁ。」
一体なんの特訓なんだか…。
涼しい顔をして手を拭く黒田に、結局俺はまた何も言い返せなかった。
始めは悔しいとだけ思っていたこのレッスンが、俺の中でいつからか変わり始めていたから。
やりたくないと思うのに、されるがままになる俺の気持ちに気付き始めたから。
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