「MY LOVELY CAT2」-12




ドキドキうるさいのは、僕の心臓なのかな…。
それとも僕の上にぴったりと重なる、虎太郎の心臓なのかな…。
どちらなのかよくわからないような状態で、僕達は激しいキスを繰り返していた。


「ん……ふ…ぁ…っ、ん……ん……!」
「志季…大好き…、志季ぃ…。」

キスの合間に聞こえる虎太郎の声は、僕の心を溶かしていく魔法みたいだ。
強張って動かない身体も、柔らかくしてしまうみたいな、不思議な魔法。
僕はそのキスに不器用に応えながら、震える手で虎太郎の背中にしがみ付いた。


「や……!」
「志季ぃ?服脱がないと交尾出来ない…。あっ、脱がなくても出来るか!隼人と志摩もしてた…!」
「バ…バカっ!」
「猫神様も言ってたしな!んじゃあこのままでいいか!どうする?志季?」

どうする?なんて聞かれて、僕は何と答えればいいのだろう。
そんなことを聞くこと自体、デリカシーがないと言うか…。
僕の緊張を解そうとしてくれているのはわかるけれど、そんなことをまともに答えられるわけがない。


「も…もうっ!じ、自分で脱ぐからいいっ!あ、あっち向いててっ!」
「えー…つまんない…。志季の服、脱がせたいー…。」
「つまんないとかそういう問題じゃないのっ!いいからあっち向いててってば!絶対見ないでよっ?!」
「でもさっきお風呂場で見た…。この間志季がお風呂場で倒れた時も見たぞ?」
「さ…ささささっきのはもういいってば…!!あ…あの時のこともいいのっ!!」
「そっか!わかったっ、んじゃ待ってる!」

僕は虎太郎から一旦離れて、背を向けたまま自分のパジャマに手を掛けた。
服を脱ぐことなんて普段の生活の中でもしていることなのに、なぜだか上手く手が動かない。
指先が小刻みに震えてボタンをちゃんと掴めないし、いつも着ているパジャマなのにやけに表面が滑るような気がする。
自分で脱ぐなんて言ったのは、失敗だったかもしれない。
恥ずかしいのは仕方ないとして、虎太郎のされるがままになっていれば良かったかもしれない。
僕がぎゅっと目を瞑りながら後悔をし始めていると、後ろで虎太郎がクスリと笑う声が聞こえた。


「志季可愛いー、震えてる〜♪」
「う…うるさ…!!ど、どうせバカにしてるんでしょ…!」
「えー?バカになんかしてないぞ!可愛いって思っただけだっ!」
「してるよっ!し、仕方ないでしょっ!僕はこういうの初めてだって言ってるじゃないっ!笑いたければ笑えばいいよっ!!」
「してないよ、志季…。」
「あ………!!」

あんなに苦労していたのに、後ろから虎太郎の手がさり気なく伸びると、いとも簡単にパジャマのボタンは外れてしまった。
そしてすぐに虎太郎の長い指は僕の胸の突起を確実に捉えて、捏ねるように動く。
今までにも何度かあったけれど、こんな風にちゃんと触れられたのは初めてで、僕は女の子でもないのに思わず高い声が洩れてしまった。


「可愛い…俺の志季ー…。」
「や……っ!あ……あ…!!」

僕は男なんだから、可愛いなんて言われたくない。
可愛いなんて言われても全然嬉しくないんだから。
いつもみたいにそう言って、虎太郎を突き飛ばせばいいのに、僕は動くことすらまともに出来なくなっていた。
初めて味わう感触に、動揺しながらも心のどこかで心地良さを感じてしまっていた。


「志季ぃ、気持ちいいか?」
「バ…カ……ぁ、そんなわけ……っ。」
「でも志季のおっぱい…ぷくっとしてまん丸になってる…。」
「うるさ……あ……!や…っ!!」

気持ちがいいなんて、聞かなくてもわかっているくせに…。
気持ちが悪かったら、もうとっくに僕はやめているはずだ。
僕は胸を弄られ続けながら、こんな時だけ意地悪な虎太郎を恨みたくなってしまった。


「それに…志季のここ…おっきくなってる…。」
「え……?!あ……!!や、や……っ!!」
「先っぽ…濡れちゃってるぞ?」
「バ、バカぁっ!!い、言わな…あっ、ああぁ…!!」

虎太郎の言う通り、僕はいつの間にか下半身まで反応してしまっていた。
緩やかに勃ち上がったそれの先端からは、僅かに透明な液体も滲み出していた。
少しでも触れられようものなら、一気に達してしまいそうな勢いだ。
それは一人でした時よりもずっと早く急なことで、まさかこんなになってしまうとは思わなかった。


「志季ぃ、脱がせていい?」
「か…勝手にすれ……な、何して…っ?!」
「んー?志季の食べたいなーって思って…。」
「やっ、やだ…っ!!そんな…っ、や……!!」

僕は一気にパジャマと下着を全部脱がされ、今度こそ素っ裸になってしまった。
素早く虎太郎が布団の中に潜り込み、僕の脚を大きく開かせてそこに顔を埋めている。
これはもしかしなくても…口でされるあれだ…。
エッチを初めてする僕だって、そういう行為があることは知っている。
だけどそれは男女間ですることだと思っていたから、僕がされることなんてないと思っていた。


「へへっ、志季のここ…ちっちゃくて可愛いー♪」
「し、失礼なこと言わな…っ!!ち、ちちちちっちゃくて悪かった……ひゃああぁっ!!」
「ほら、俺の口にぴったりだー…ひとくちで…。」
「う…うるさ……やああぁっ、やだっ、あ……ぁんっ!!」

僕のそこは虎太郎の口内にすっぽりと収まってしまい、その中で完全に勃ち上がってしまった。
からかうようなことばかり言う生意気な口がいやらしくそこを愛撫して、僕は身を捩る。
恥ずかしくてどこかへ逃げたいのに、明らかに快感というものを感じると、どこへも行けなくなる。
このままずっとこの波に溺れていたい、ずっと触れられたいとまで思ってしまう。


「う……ふっ、ああぁ…っ!や…だ…もう…っ、もう……!!」

やがてその快感は僕の全身を支配して、大きな渦のようなものを運んで来た。
絶頂が近いのだと自分でもわかったけれど、この状態で達してしまうなんて出来ない。
このままだと僕は、虎太郎の口の中に……。


「や……だぁっ!こたろ……っ、ダメぇっ、イっちゃ…離し……ああああぁっ!!」

無理矢理虎太郎の頭を離そうとしたところで、僕の中で何かが弾けた。
結局僕は間に合わなくて、虎太郎の口内で達してしまったのだ。
それだけではない、虎太郎はそれをごくりと飲み込んでしまった。
口の端に少しだけ残った白濁したものを見た時には、僕は思わず目を伏せてしまった。


「志季……。」
「や…やだっ!見ないで…っ!!や……え…!!あ……っ?!」
「志季…可愛い…。」
「え……?!え……?!あ……!!や、やだっ、何……っ?!」

僕が恥ずかしさでいっぱいになっていると、突然何か妙な感触を感じた。
それは今まで触れられたことのない感じで、異物感のような圧迫感のような…。
言葉に言い表すのが難しいような、妙な感覚だった。


「志季、痛い?無理そうか?」
「え……!や、やだ……っ!!こ、虎太郎っ、そこは……っ!!」
「えー…でも志季…。」
「や、やだっ!や……っ、やだよ…ぉっ!!」

虎太郎が僕のものを口から離しているのを見て、僕はやっと今自分がどこを触られているかに気が付いた。
それは男同士がエッチをするのには必要不可欠なところで、生まれて初めて触れられる秘密の場所だった。
繋がる前にそこをきちんと解さないとダメだということはわかっていたけれど、実際に触れられるとやっぱりやめたくなってしまう。


「でもここじゃないのか?」
「バ…バカっ!そんなこと聞かな……う…っ、あ……!」
「大丈夫…俺、ちゃんとする…。」
「バカぁ…っ、何が大丈夫……あ…う……!」

僕にはわからない。
こんなところに指を入れられて、気持ちがいいという人なんかいるのだろうか?
志摩と隼人はしょっちゅうエッチをしているみたいだけれど、本当に志摩はこんなところを触られて嬉しいのだろうか。
志摩と隼人だけじゃない、あのシロとかいう奴だって…。
僕はあまりにもこちらの世界を知らないから、慣れていないだけなのだろうか。
僕もいつかエッチをすることに慣れて、こんなところが気持ちがいいと思えるようになるのだろうか…。


「うー……、あー…、う…っ、あ……!」

いつまで経っても僕の口から出るのは、呻き声のようなものだけだった。
虎太郎がそんなところを舐めているだとか、指が何本も入っているだとか、そんなことはどうでも良かった。
ただ僕はそれを受け入れることで精一杯で、もう何も考えられなかった。


「志季ぃ、気持ちよくないかー…?」
「き…もちいいわけ……っ。」
「おかしいなぁ…うーんと…。」
「な、何……え……?!あ…っ?!やっ、ああぁっ?!」
「あ…ここだー…。」
「や…っ!ちょっ……あっ、あああぁっん!やだっ、何っ、やあぁっ、それ……んんんっ!!」

ここだとか何だとか、虎太郎の言っていることはよくわからない。
だけど確かに、僕のそこには弱くて一番おかしな感覚に陥る部分があった。
そこを虎太郎の指が執拗に責めると、僕は快感の階段を一気に駆け上っていく。


「志季ぃ、俺の入れていい?志季にしてたら俺もおっきくなっちゃったー…。」
「な、何言って……っ、虎太郎のエッチ…っ、スケベ猫っ、変態猫…っ!!」
「俺それでもいいもん…。」
「何開き直……っ、あ…やだっ!や……!!」
「志季ぃ、好きだぞ…、俺、志季が大好きだ……。」
「や……っ、虎太郎っ、や………!!」

いよいよ僕が待っていたこの時が来てしまった。
このところずっと思い悩んで、志摩にまで相談してしまった、その瞬間だ。
虎太郎が僕の上に跨って手首を押さえ付けると、僕はしっかりと虎太郎の背中に腕を回した。


「志季、おっきく息して…。」
「う……こわ…っ、恐いよぉ…っ、虎太郎っ、僕……っ!」
「志季、大丈夫だから…俺は志季が大好きだから…。」
「ふえぇ…っ、虎太郎…っ、うっ、ふえぇー…。」

僕はとうとう、虎太郎の腕の中で泣き出してしまった。
その瞬間はどれぐらい痛いのか、まだ見えない先のことを想像すると、恐くて恐くて仕方がなかった。
それでも虎太郎は僕のことをバカにするでもなく笑うでもなく、ただ優しく頬にキスを繰り返していた。


「志季……、志季……っ。」
「ふぇ……あ……!!う……うあああああぁ────…っ!!!」

あまりの衝撃に、死んでしまうかと思った。
「痛い」なんて簡単な言葉で言い表すことなんて出来ない。
目の前が真っ白になって、星みたいなものがチカチカと飛んで、どこかへ飛ばされてしまうかと思った。
それが僕の、素直で正直な感想というものだった。


「志季っ、息して…っ、志季…っ。」
「はあぁー…っ、はぁっ、はぁっ!い、痛……っ、痛いっ、う……あああぁっ!!」
「志季…そんなに痛いのか…?」
「い…ったい…に決まって……っ、あっ!!バカぁっ、動かな……う…ああぁっ!!」
「志季…っ、志季……。」
「やだ…っ、も…やだぁっ!やめるっ、やっぱりやめ……っ!」

虎太郎は僕のことを気遣うようなことを言っておきながら、行為をやめようとはしなかった。
僕だって本当にやめて欲しかったわけではない。
きっとそんな僕の心理も、全部わかっていたのかもしれない。
ゆっくりと僕の中に入って来た虎太郎が奥まで沈むと、静かに全身を揺さ振られた。


「はぁ…っ、はぁっ、や……っ、ああぁっ!」

それからどれぐらいの時間をかけたのかは、よくわからない。
僕の痛みが消えて快感へと変わるまで、虎太郎はずっと僕を揺さ振り続けた。
その間僕はずっと虎太郎の背中にしがみ付いて、あまりの力に爪が食い込んでしまっていた。
明日になったら赤く腫れ上がってしまうのには申し訳ない気がしたけれど、それほどまで僕にとって初めてのエッチは、大変なものだったのだ。


「志季…っ、気持ちよくなってきた…っ?」
「わ……かんな…っ、あ……やああぁっ!やだっ、それ…っ、やあぁっ!」

僕の身体が、僕のものではないみたいだ。
誰かに支配されて、勝手にいじられているような…。
今まで経験したことのない、痛みとも違う感覚…。
快感と言うにはまだ程遠い、変な感覚だ。
おかしくなる…、志摩が言っていたことは、本当だったのだと思った。


「志季…好き…っ、志季大好き…っ!」
「あ……!!虎太郎っ、僕……っ、僕も好……っあ…!!」
「志季っ、志季……!」
「や……イくっ、イっちゃうっ!こたろ…、イ……っ、あああぁ────…んっ!!!」

物凄く痛くて、おかしくなるけれど、幸せ。
虎太郎でいっぱいで、幸せ。
虎太郎と近づけて、触れられたことが嬉しい。
恐いのなんかどこかへ行ってしまうぐらい、今はとても幸せだ。
僕は薄れゆく意識の中で、志摩が言っていたのと同じ言葉を、噛みしめていた。







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