「DARLING」-15
「ん…、んー…、んー…っ。」
頭の中がぼーっとする…。
視界が歪んで、風邪とかで熱が出た時みたいに身体が熱い。
全身が痺れるみたいに感覚もよくわからなくなる。
隼人とキスをしていると、俺はいつもこんな風になってしまう。
「ふぁ…っ、ん…っ。」
息が苦しくて唇を離しても、隼人の唇はどこまでも追い掛けて来る。
激しいキスには全然応えきれなくて、息遣いと唾液と変な声が次々に零れ落ちる。
どうしよう俺…、キスだけでこんなになっちゃうなんて…。
「あ…っ！やぁ…っ。」
長いキスから解放されると、隼人の唇は俺の首筋へと下りて行く。
肌の表面を舌先でなぞるように舐めたり、きつく吸ったり。
何だか俺のことを好きだって言ってくれているみたいに、その思いが皮膚の奥まで伝わってくる。
俺もその思いにちゃんと応えたいのに、余裕がなさ過ぎて受け入れるので精一杯だ。
「やあぁっ、あ…あ…。」
シャツ越しに触れて来る隼人の指が俺の胸の粒を捉えると、ビクンと身体が跳ねた。
既にそこはシャツから浮き上がるように敏感に反応してしまっていた。
「ん…ふ…っ、あぁ…っん！」
浮き上がる胸の粒を、隼人の舌が這う。
俺がこんなに感じているのを気付いているはずなのに、服の上からするのを止めない。
隼人は時々、意地悪だ。
わざと音を鳴らしたり、わざと一つのところを責めたりする。
でも俺は嫌だと言ったり、怒ることなんて出来ない。
だって隼人が触れてくれるのが嬉しいから。
今この時に俺のことだけを考えてくれているっていうのが凄く嬉しくて…。
「志摩…。」
「ふぇ……？」
「手が邪魔。」
「や…っ！」
もちろん反応してしまっていたのは、胸だけではなかった。
自分でも気付いていなかったわけじゃない。
疼き始めていた下半身を、俺は無意識に手で押さえ付けていた。
隼人の視線が突き刺さるように痛くて、もっと反応してしまいそうになる。
「や？」
「だ、だって…っ！」
「じゃあ自分で何とかするか？」
「そんなぁ…っ。」
俺は、志季が来るほんのちょっと前のことを思い出してしまった。
電話をしながら、一人でしてしまったこと。
隼人の声を聞きながら、自分で自分のものを慰めたこと。
それでバスルームで倒れて、全部見られて…。
あんなことをまたやれなんて言われても絶対に出来ない。
「志摩？手が邪魔。」
「う…っ、う……。」
俺はおそるおそる、自分の手を下半身から離した。
シャツはその反応で盛り上がっていて、少しだけ染みを作ってしまっていた。
「志摩のえっち…。」
「やだぁっ、やぁ…っ！」
捲られたシャツの下から飛び出したそれは、想像通りの反応を示していた。
また「えっち」って言われてしまったけれど、それは本当のことなのかもしれない。
まだ直接触ってもいないのに、こんなに角度を変えて先端を濡らして。
「…食べていい？」
「たっ、食べ…っ？ひゃっ！あっ、あ…っ！」
でも俺からすれば、隼人の方がえっちだと思う。
普段は無口なのに、こういう時だけするする言葉が出て来るのも。
俺のものを迷うことなく咥えてしまうのも。
わざとらしく舌を出してぴちゃぴちゃ舐めるのも、そういうことをしている時の顔も。
何て言うか…全部が色っぽくていやらしい。
「や…っ、いっちゃう…っ、隼人っ、いっちゃう…っ。」
俺の脚の間に顔を埋める隼人の髪をぐしゃぐしゃにしながら、俺は身体を震わせる。
志摩は早い、なんて言われるけれど仕方がない。
だって大好きな人に触られているんだから。
それで変にならない方がおかしいよ…。
「やあぁっ！あっ、あ────…っ！」
俺は思い切り声を上げて、隼人の口の中に達してしまった。
放たれた液体は、隼人の喉元を通り過ぎて行く。
そんなの汚い、やだって何度も言ってるのに、隼人はやめてくれない。
それが甘いわけなんかないのは俺だって知っている。
甘くて美味しいなんて絶対嘘なのに…。
「うー…。」
俺が恨めしそうに見ると、隼人は口の端を上げて笑う。
どうしてかわからないけれど、俺が恥ずかしそうに真っ赤になっているのが嬉しいなんて言って。
そんなことを言われたらもっと恥ずかしくなってしまうのに。
俺の目はその極度の恥ずかしさのせいで、じわりじわりと涙が滲んでいた。
「志摩。」
「うー…。」
手を引かれて、強く抱き寄せられる。
こんなに恥ずかしいのに、隼人の優しい抱擁の誘惑には敵わない。
泣いてしまった俺を慰めてくれるようなその抱擁が欲しくて、俺はその腕の中に飛び込んだ。
「志摩…。」
「や…っ。」
着ていたシャツをようやく脱がされて、俺は何も着けていない状態になった。
裸になるのは恥ずかしいけれど、着たままというのも恥ずかしい。
どっちにしても俺は恥ずかしいとしか言えない、子供なんだなぁと思う。
「ちょっと…。」
「ふぇ…？………ひゃうっ？！」
抱き締められたまま、隼人が一瞬後ろを向いて何かを掴んだ。
それが何かはわからないうちに、戻って来た隼人の手が俺の後ろの方へ回される。
隼人と繋がる場所の入り口に冷たい感触といつものような異物感が走る。
「隼人今のな……っあ……？！ひゃ……？！」
そのいつものような感覚の中で、何かが違うのは程なくしてわかった。
俺が出したものや隼人の唾液が絡んでいる指が、この時は別のもので濡れていた。
冷たくて、ぬるぬるして、でも熱くて…。
隼人の指なのに、指じゃないみたいな、そこから蕩けて行きそうな…。
何て表現していいのかわからないけれど、今までに味わったことのないおかしな感覚だった。
「あ…、あー…っ、ん…ふっ、あぁ…ん…っ。」
「どうしたんだ？」
「あ……へん…なのっ、へんだよ…っ？あー…っ。」
「へん？」
「ふぇ…っ、なんかへんっ、やぁ…っ！……ちい…っ。」
「何？聞こえない。」
俺…どうしちゃったんだろう…？
いつもなら、ここをいじられて嫌だ嫌だって泣いたりするくせに。
今日はなんだか変だよ…？
隼人の意地悪な言葉にさえ反応してしまうぐらい、興奮してしまって…。
全身が快感でおかしくなってしまいそうなんだ。
「隼人…ぉ…っ、ふぇ…、どうしよー…っ。」
「何が？」
「どうしよ俺…っ、…ちい……っ、気持ちいいよぉ…っ！」
「どこが？」
どこが、なんて隼人が一番よくわかってるくせに…。
濡れた指はどんどん俺の中に入って来て、いやらしい音が部屋中に響いている。
こんなところをいじられて気持ちがいいなんて、俺は変態になっちゃったのかもしれない。
いくらえっちでもいいって言ってくれていても、そんな俺なんか嫌になるかもしれない。
隼人に嫌われたらどうしよう…、俺はぎゅっと目を瞑って襲ってくる快感に耐えていた。
「あぁ、ここか…？」
「わかんな……っ、…あ……ひゃあぁっんっ！」
「ったく…なんて声出してんだよ…っ。」
「ごめんなさ…っ、あっ！…隼人……っ？」
もしかしなくても隼人は呆れている。
悲しくなって謝ろうとしたけれど、隼人はそれを聞いてもくれないみたいだった。
俺の中からズルリと一度指を抜くと、ベッドに倒して上に跨って来る。
呆れて怒っているとばかり思っていたのに、隼人も何だかいつもと違うような気がした。
「もう我慢出来ない…。」
「ほぇ…？隼人どうした……わあぁっ！」
耳元で隼人の激しい息遣いが聞こえて、背中がゾクゾクと震えた。
俺の勘違いかもしれない。
思い込みかもしれないけれど、もしかして隼人もいつもより興奮してる…？
我慢出来ないと言って俺を見つめる目が熱っぽい。
触れて来る手も熱くて、そこからとろとろに溶けてしまいそうになる。
「入れたい…。」
「やっ、隼人やだぁっ、見な…で…っ！」
「嫌だ…、見たい…。」
「やあ…っ！」
隼人の手が俺の足首を掴んで、思い切り脚を開かされた。
まだ外は明るくて、カーテンを閉めていても部屋の中が見える。
さっきまでいじられていた場所だってはっきりと見えてしまうぐらいだ。
「志摩の中に入りたい…。」
「はっ、隼人…っ、恥ずかし…っ。」
「志摩…、志摩…。」
「やぁっ、恥ずかしいよぉ…っ！」
恥ずかしいはずなのに…。
俺の身体はいつの間にこんなにいやらしくなってしまったんだろう。
もっと恥ずかしいことを望んでいる。
隼人が我慢出来ないように、俺も我慢出来ないと思ってしまっている。
隼人が耳元で俺の名前を繰り返すのが、呪文みたいに耳の奥に溶け込んで来る。
いつもの安心させてくれる魔法とは違う、まるでえっちになっちゃう魔法みたい…。
「う…、隼人…っ、隼人…ぉっ。」
俺はその魔法にかけられると、どんなことでも言ってしまう。
恥ずかしいと思って言えない言葉、心の奥の欲望を。
「隼人ぉ…、は…早く……っ。」
俺は泣きながら、隼人にぎゅっとしがみ付いた。
俺のことを包んでくれる広い胸も、背中も、全部好き。
隼人の心も身体も全部欲しい。
もう一度目を閉じて、俺の中に隼人が入って来るのを待った。
「志摩…。」
「ひゃ…っ、あっ！あ────…っ！！」
一度入り口を指で広げられた後、おでこへのキスを合図に隼人が入って来る。
熱くて大きな塊が俺の中にゆっくりと入って来るのを、俺は全身全霊で受け止める。
苦しくて、鈍い痛みが全身を走って、何がなんだかわからなくなってしまう。
「志摩…っ、息しろ…っ。」
「ふぁ…っ、はぁっ、はぁ…っ。」
「志摩…っ。」
「あぁ…っん！やあぁ────…っ！」
いつもいっぱいいっぱいになってしまう俺だけど、何度も身体を繋げているうちにわかったこともある。
隼人も余裕がない時もあるってこと。
しがみ付く身体がビクビク動いているのに、気付くことがあるんだ。
「あ…っ、あっ、ん…っ！」
それから、エッチが痛くて苦しいだけじゃないってことも。
俺が変化していくことは、きっと隼人も気付いていると思う。
ベッドがギシギシ揺れて、隼人が俺の中で何度も突いてくるうちに、感覚が別のものに変わっていくことに。
汗なのか涙なのかよだれなのか、顔をぐちゃぐちゃにして上げる声が甘くなっていくことに。
「あぁ…んっ！隼人…っ、ダメぇ…っ！も…ダメ…っ！」
「志摩…っ。」
「も…いっちゃ…っ！いっちゃうっ！いっちゃう…っ！！」
「志摩…っ、一緒に…っ。」
隼人と一緒に、一番高いところに行きたい。
俺は隼人の動きに応えるように、必死でしがみ付く。
ベッドはもう壊れてしまうんじゃないかと心配になるぐらい軋んで、俺の身体も壊れそうだ。
隼人が奥を突く度に俺は痙攣したように震えて、やって来る頂点を待った。
「隼人っ、あっ！やあぁ────…っ！！」
「志摩……っ！」
俺は一際高い声を上げて、隼人の腹部目掛けて放った。
そしてほとんど同じ時に、俺の体内には熱いものが放たれた。
すぐに隼人のものが引き抜かれて、それが俺の脚の間をどろりと零れる。
「はぁ…っ、はぁ…っ、隼人…っ。」
まだ息もまともに出来ない中、俺の中では再びおかしな感覚が生まれていた。
隼人と繋がった部分が、まだ灼けるように熱い。
熱くて蕩けてしまいそうで、全然疼きが止まりそうにない。
「隼人ぉ…、…っと……、もっと…っ。」
もっと俺のこと、好きになって。
もっと俺のこと、ぎゅってして。
もっと俺にいっぱいちゅーして。
俺の中の欲張りで我儘な部分が、一気に溢れて来てしまったみたいだった。
もっと隼人と繋がりたくて、俺は再び隼人に強く抱き付いた。
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