「ONLY」-15




薄っぺらなのに温かい胸元に、顔を埋めていた。
痩せていて骨しかない、しかも同じ男だから膨らみなんかあるわけがないのに、
柔らかく感じてしまうのは、志摩そのものの柔らかさのせいだろうか。
俺の髪を優しく撫でる小さな掌からも、何とも言えない思いが滲みて来て、泣きたくなる。


「隼人ー…。」

大丈夫だよ、その言葉を言う前に、志摩は力尽きて途切れてしまう。
俺達は、同じように寂しい思いをずっとしてきた。
寂しいという言葉も言えずに、なんとかここまで来たけれど、出会ってしまったから。
運命なんて信じるどころか考えたこともなかったけれど、
実際に志摩と出会って恋をして、まさにこれが運命だと感じた。
志摩と出会うまで俺は寂しいという感情も知らなかったし、
志摩は志摩で寂しいという感情を抑えて閉じ込めて生きて来た。
それが二人になったところで、溢れ出して、補うことができた。
端から見れば、寂しい者同士がくっついて慰め合っているだけかもしれない。
だけど俺には、それだけじゃない自信があった。
慰め合うだけなら、心だけでも済む。
触れ合って、繋がって、溶け合いたいと思うのが…、
同性に対してセックスしたいと望んでしまうのが何よりの証拠だ。
心だけあれば、なんて綺麗事だと思う。
慰めだけじゃないなら、身体も欲しいと思うのは当然だ。

これが恋だと言うのなら。



「志摩……。」
「は、隼人……っ?」

埋めた胸元に、ゆっくりと唇を這わせた。
薄いパジャマの下にある突起を唇で探り当てると、志摩の身体がびくりと跳ねる。


「ああああの……っ、ん……っ!」
「何?どうした…?」

唾液を布地に染み込ませるように、舌先でその突起を転がすように濡らす。
いつも思うのだが、ぷっくりと膨らんだそれは、まるで何かの果実のようだ。
今日の入浴剤がいちごの匂いだったのも手伝って、
布越しにそれを口に含んではその甘い匂いと味を味わった。


「あ…、隼人…ぉ…。」
「志摩、やらしい…。」
「やぁ…っ!隼人っ、恥ずかしいよー…。」
「恥ずかしいのにこんななってるのか?」

濡れた布地ごと、こねるようにしてぐりぐりと弄り回す。
ピンク色に腫れ上がったそこが、パジャマを通してもくっきりと浮かび上がってやけに厭らしい。


「隼人…っ、んっ、う…ぅんっ、ん…ふぅ…っ。」
「志摩…っ。」

俯いた志摩の頭を強引に引き寄せて、見上げながらキスをした。
もう熱くなっているその頬に、唇に、瞼に何度も口づける。
絡まった舌と唾液で、とろとろに蕩けてしまいそうなぐらい甘いキスだと思った。


「志摩…、もっと口開けて…。」
「ふ…ぁ、ん…っ、ん…ぅ…。」
「もっと志摩の…志摩の唾が欲しい…。」
「や…できな…、ん…ふぅ…っ。」

唾液なんかを欲しいなんて俺はおかしいのだろうか。
これが赤の他人で、好きでも何でもないような奴のものだったら、
そんなことを思うわけがないし、その前にキスしたいとも思わない。
たとえば道端で唾を吐く奴のものが少しでも自分にかかったら腹が立つし、
他の奴…、女とキスをしていても思ったことがない。
だけど今は、志摩のすべてが欲しくて堪らない。
志摩を形成するすべて、唾液だろうが何だろうが、俺の中に溶かして混ざり合いたい。


「志摩…、もっと…。」
「ん…ふ、んん…っ。」

狂ったようにして、キスを強請り続けた。
志摩は苦しい表情で、俺の口内に生温かい唾液を注ぎ込んでいた。
ただの唾液なのに、それまで甘く感じるのは、やっぱりどこか狂ってしまっているのかもしれない。


「こっちは…。」
「あ…、や…っ!やだ隼人…っ!」
「凄いことになってる…?」
「やだ…ぁっ、隼人…っ。」

恥ずかしさで顔を掌で覆う志摩の、パジャマのズボンをずり下ろす。
予想通り、変化を遂げたそれが、下着の中から勢いよく顔を出した。
既に先端には光る透明な雫が溜まっている。


「志摩のえっち…。」
「ちが…っ、あっ、やあぁ…っ、隼人…っ?」

いつもなら迷わず口に含んでいるところだった。
だけど今日は何だか勿体ないような、焦らしたいような衝動に駆られてしまった。
膝の辺りまで剥き出しになった志摩の肌に、唇を近付ける。
志摩も予想とは違ったみたいで、間抜けな声をあげてしまう。


「あ……、隼人……。」

白くて柔らかいその肌に、何度も口づけてはきつく吸う。
俺のものだと、目で見て理解したかったのか、
その白い肌のキャンバスに、花弁のような鮮やかな紅い跡を幾つも描いていった。
膝から太腿にかけて、ゆっくりと舌を這わせると、内側が微かに震えているのがわかった。
緊張しているのか、感じているのか…、多分どちらもだろう。


「あ…、あ…、あ……。」

ようやく到達した志摩自身にも、ちゅっと音を立てて口づける。
側面から裏側までまんべんなくキスを施すと、それだけではち切れそうなぐらい、
そこはさっきより大きく変化してしまっていた。


「あ…、隼人…ぉ、ふぇ…、隼人…。」
「して欲しい?」
「うぇ…、えっ、隼人ー…。」
「志摩?」

それを掌で包み込むように持ったまま、志摩に問いかける。
さすがにそれは言えないと、志摩が半分涙を滲ませて訴える。
こんな風に意地悪をされて恨めしそうに見つめる顔も好きだなんて、俺は性格が悪い男に写っているのだろうか。
好き過ぎてしてしまうのを、志摩はきっと気付いていないんだろう。


「おねが…しま…、隼人…、うっうっ…。」
「ごめん、今のはないよな。」
「隼人ー…。」
「ちゃんとするから。」

本当に泣いてしまったらそれはそれで困る。
どうせ泣くなら、セックスの快感で泣いて欲しい。
一度志摩の頭を撫でて頬にキスをした後、またその下半身に潜り込んだ。


「───…あ!あ、あぁ……んっ!」

今度は迷いもせずにそれを口に含むと、志摩の身体がびくりと跳ね上がった。
先程の焦らした行為で溢れ出していた先走りが、口内に広がる。
こんなものまで美味しいものだと感じてしまうなんて、俺は変態か…。


「あっ、やぁっ、あっ、あ…っ!」

自分の唾液を絡ませ、舌先で舐め回しては口の中を出し入れする。
その柱を支える柔らかい部分まで、丁寧に味わいながら舐め尽くしたい。
徐々に口内を志摩の味が支配して行って、そこは今にも高いところへ達してしまいそうだ。


「あ…、隼人っ、やっ、いっちゃう………っ!!」

先を読んだ瞬間、俺の口内にその達した証拠の液が吐き出された。
とろりとした白いそれを、躊躇うことなく飲み干すと、生温かいそれが喉元を過ぎるのが自分でもよくわかった。


「ふぇ…っ、やだ、隼人やだー…、……ひゃあぁっ!!」
「何その声。」
「あ…、だって…ひゃあっ、そこやぁ…っ!」
「可愛過ぎるんだけど。」

まだ痙攣したようなそこからようやく口を離して、舌をその下部に移動させた。
細い脚を無理矢理開いて、志摩の秘密の場所を露にする。
その小さな入り口に、息を吹きかけると、それに反応して内部が僅かに伸縮した。


「やっぱり志摩はえっちだな…。」
「やっ、隼人やっ、やだ…ぁっ、あっ、あ…っ!」
「自分でわかるか?ここ、ひくひくしてる…。」
「やだっ、隼人今日変…っ、すごいえっち…っ!」
「そうだよ、だって志摩のこんなとこ見てるんだからな。」
「や…っ、あぁっん、やあぁっ!」

変だろうが変態だろうがえっちだろうがどうでもいい。
志摩に触れられるなら、繋がることができるなら。
好きな人を目の前にして、しかもその好きな人とセックスして平常心でいられるわけがない。
スケベ心丸出しになるのは当然のことだ。
それでやりたいことがやれないよりは、何と言われようとやれる方がいい。


「隼人…、隼人…っ、……あぁっ!!」

濡れた窄まりに、人差し指の先を挿し込む。
日頃慣れている人間でもこんなところに指を入れられて抵抗がないわけがない。
それが志摩に至っては、全然慣れていることではない。
抵抗感や異物感があるのは当たり前で、それをいかに少なくしていくかが俺の役目だと思う。


「……っあ!やっ、あ、あ……っ!」

徐々にその指を志摩の体内に進めて行く。
時々唾液で自分の指を濡らして、どうにかして痛みを最小限に抑えるようにと。
熱くなったその体内は、俺の唾液と、先程志摩が放って零れた分ので、
ぐちゃぐちゃになっていて、思ったよりもすぐに2本目を入れることができた。


「あっ、やっ、ああぁっ、あっ、あぁ…ぁんっ!」

それにしても、だ。
いつもより過剰な志摩の反応が気になる。
理由はわかっているし、それを責める気もなかったけれど…。
どうしても俺は志摩に意地悪したくて仕方がなかったらしい。
それほどまでに愛しくて仕方がなかった。


「凄い声…、どうしたんだ?」
「あ…、や…、隼人っ、やあぁっ!」
「久し振りで興奮しちゃったのか?」
「ちが…、あっ、あっ、やだそれっ、やだっ、隼人っ、いっちゃ…っ!」
「いいよ、志摩のイくところ見たい…。」
「やだっ、はずか…っ、あっあぁ…んっ!」

志摩が俺の指によって後ろで達するのはあれほど嫌だと言っていたのに。
俺もそれを知っていてできるだけしないようにしていたのに。
それでも好きな人のそういう姿を見たいという欲望は止められなかった。


「やだ隼人…っ、あっ、あ、やぁ───…っ!」

3本目が入ってすぐに、体内を蠢かせていると、志摩の身体が大きく揺れた。
すぐ近くにあった俺の頬に、志摩の放った2度目の白濁液が飛び散った。


「うっうっ、えっえっ…、やだって言ったのに…っ。」
「ごめん…、でも志摩…。」
「うえぇ隼人ー…。」
「志摩、可愛い…。泣いてる顔も可愛い…。」

頬を手の甲で拭って、志摩の上に乗って優しく抱き締めた。
泣いてしまった志摩に、慰めのキスをする。
流れる涙を舌先でぺろりと掬い、目の端も丁寧に舐めた。
ぶつぶつ呟いた俺の言葉に、志摩が不思議そうな顔をしている。
そして一層真っ赤になった顔を、横に背けた。


「は、隼人ホントに変です…っ、そ、そんなこと言わなかったのに…っ。」
「なんで?思ってること言ってるだけだけど。」
「だって今までそんな…、は、恥ずかしいです…。」
「でもこれからもっと恥ずかしいことするんだけど。」

それはこの先の行為を示していた。
いくらバカな志摩でも、こんなにストレートな言い方をされれば、
しかもこの流れから言っても何をされるかはわかっているのだろう。
それでもその行為が嫌ではないことは、無言の志摩の表情から伝わって来た。


「志摩、したい…、志摩とセックスしたい…。」
「や……っ!は、隼人…っ。」
「や?嫌?俺とするの嫌?」
「…う……、そ、そうじゃなくて…、あの…。」

首に強く巻き付いて来た志摩の腕が、俺を引き寄せた。
耳元で小さく呟いた台詞に、鼻血どころか全身の血液が噴き出してしまうかと思った。


「こ、この間みたいに…、や、優しくして下さい…。」

返事の代わりに、深く優しいキスをして、志摩の脚を大きく広げた。
そのまま高く持ち上げて、しっかり掴まるように志摩の手を自分の背中まで誘導した。
この瞬間は、いつも緊張してどうにかなりそうになる。
志摩と俺が一つになるこの瞬間が、一番ドキドキするんだ。
俺がそう思っていることなんか、余裕のない志摩は知らないだろうけど。
濡れた志摩の入り口に、既に完全に勃っていた自身の先端で触れた。
ぬめりを帯びたその先端を、ゆっくりと志摩の体内に沈めるようにして挿入した。


「───…ああぁっ!!……あっ、あっ、あ───っ!」
「志摩、息止めるな、ゆっくり息して。」
「は…あぁっ、隼人っ、あっ、あ───っ!」
「ごめん、痛いよな、ごめん志摩…。」

お前にばっかり負担をかけて。
痛い思いをさせてしまって。
セックスの度にいつも思っていた。
志摩は大丈夫です、そう言うから今まで何度もしてしまったけれど。
だからまた、今日もそう言うんだろうな…。
優しいお前はそう言って、俺のためだと言って。
俺を好きだからいいって言って。


「隼人…、だいじょ…っ、隼人…っ!」
「うん、ごめん、でも、したい…。」
「うん…っ、隼人っ、いいのっ、俺…っ、好きっ、隼人好き…っ!」
「志摩…。」

志摩は泣きながら、言葉を発するのも大変なのに、何度も告白する。
俺はなんて幸せな奴なんだ。
その資格もないと思っていたこともある。
だけど今は、志摩がそう言ってくれるなら、精一杯それに応えたい。
そう思うと、ごく自然に言葉が溢れ出す。


「志摩、好きだよ、志摩…。」
「隼人…っ、あ、あぁ…っ、やっ、あぁ…んっ!」
「志摩が好き、大好き、愛してる、大好き…。」
「隼人…ぉっ、俺も…好きっ、あっ、や、また…っ!」

バカみたいに好きだの愛してるだのを繰り返して、志摩を揺さ振り続けた。
細い腰を両手で支えて、壊れてしまいそうなほど。
痛みだけだったのも、やがて快感へと変わっていくようで、志摩は甘くて高い声を何度もあげていた。


「ここ…?」
「……あっ!!隼人っ、あっ、やあぁ────っ!!」

弱い箇所を集中的に自身で責めると、いとも簡単に志摩は達してしまった。
俺だけが知っている、志摩の一番弱くて気持ちのいい場所。
誰にも教えたくないし、知られたくない。
俺だけが志摩を知っていたい…。


「隼人ー…。」
「まだ…、もっと…。」
「あっ、やぁっ、あっ、あ…んっ!」
「もっと…、志摩…、もっとくれよ…。」

志摩が達したのにも関わらず、俺は再び自身を捻じ込んで、体内を掻き回した。
またしても飛び散った志摩の白濁液が、今度は俺の腹部にとろりとへばり付いていた。
揺さ振る度にそれが小さな丸い粒のように弾けて、俺の汗と共に志摩の身体にも落ちる。
繋がった場所はもうどうしようもないぐらい濡れていて、その音が一層興奮させた。


「あぁっ、そんなにした…っ、あっ、あ…っ!」
「またイっちゃう…?」
「隼人っ、やだっ、俺変…っ、こんな…っ。」
「大丈夫、変じゃないから。」
「ホ…、ホント…っ、隼人…っ、ホン…っ。」
「本当だよ、だから志摩…、一緒に…っ。」

変なのは何度も達してしまった志摩だけじゃない。
俺だって十分、志摩以上に変になっている。
そろそろ本当に限界が訪れる頃だと思った。
志摩の体内に収まった自身は、もう悲鳴をあげそうなほど膨張している。
より高く持ち上げた志摩の脚を掴んで、全身に力を込めて激しく揺さ振った。


「隼人っ、またいっちゃうっ、いっ、あ、あっあ─────…っ!!」
「志摩………っ!」

もう汗なのか何なのかわからないぐらい、二人でぐちゃぐちゃになりながら、一番高いところへ同時に上りつめた。
俺の志摩に対する思いと同じぐらい、大量の白濁液が志摩の体内に放たれた。
何度達しても濃度が変わらないほどの白い志摩のそれは、再び俺の腹部に放たれた。











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