「魔法をかけたい」-9




恋というものを知ると、色んなことが変わる。
それは今までは普通のことでも、恋によってまったく違う感覚になってしまうんだ。
この世界に帰って来て、まずそれを実感した。


「…桃、なんでそんな離れるんだよ?」
「え…、べ、別にいつもと一緒だよ…。」

ぼくたちは、疲れを取ろうとまずはお風呂に入った。
住んでいる家の庭にある、大きなお風呂だ。
自然にお湯が湧いたそこに石なんかを置いて、銀華さまがお風呂場にしてくれた。
雨が降った時でも入れるように、屋根まで付いている。
家の中にもお風呂が一応あるけれど、いつもはここを使っている。
何も考えないでお風呂に入ろうなんて言っちゃったけど…。
こんなに恥ずかしいとは思わなかったんだ。


「桃。」
「な、な、何…っ?」

ぱしゃん、と水音が鳴って、紅の手が近付く。
思わず逃げるようにして、手で顔を隠した。


「もしかして、意識してる?」
「ななな何を…っ?!」

どうしよう、紅、全部わかってる…。
水面から出た紅の裸見てドキドキしてること。
隣にいるぼくも裸だってこと。
だって、銀華さまのところを後にする時、あんなこと言うから…。
『おれ、桃と交尾します。』
こ、交尾ってあの時、シロのところでしたやつ…。
本当にするのかなぁって思ったら緊張しちゃって…。
あ、あんなえっちなこともうぼくできないよー…。
今夜早速、だったらぼくどうしたらいいんだろう…。
うーん、うーん…どうし…あ、あれ…??


「おい桃?大丈夫か?」
「紅…、うぅーん…。」
「も、桃っ!!」
「うーん……。」

湯船の中で悩み過ぎたのか、ぼくの視界がぐらりと揺れた。
その後布団の中で目を覚ますまで、ぼくの記憶はない。









「桃、桃…。」

ぼくを呼ぶ、大好きな声。
それはずっと前からぼくを呼び続けてくれていた。
鈍感で子供なぼくは、その声に気付かなかった。
ぼくのことを好きだって言ってくれていたのに。
ごめんね、ぼく、本当にバカで。
ごめんね紅…、大好きだよ…。


「気が付いたのか?」
「……あ…、ぼ、ぼく…?」
「お風呂で逆上せて倒れたんだ。気をつけろよ。」
「うん…、ご、ごめんね………わあぁっ!!」

起き上がろうと、掛けられていた布団を捲った。
その中で寝ていた自分の姿に驚く。
ぼ、ぼく…、何も着てないよ?!
紅に、全部見られた…!!


「何?どうし……。」
「わーん恥ずかしいよぅ!!ひどいよ紅ぃ!!」
「あぁ、だってお風呂なんだから仕方ないだろ。」
「うっうっ、恥ずかしいぃー…。」

今までもお風呂には一緒に入ってたけど…。
裸っていうことに意識したことなんかなかった。
お風呂に入る時に裸になるのは当たり前のことだから。
でもこんなに恥ずかしいことだったなんて…。
恋ってなんだかそういうところが厄介だなぁって思う。


「桃、落ち着けよ。」
「だってぼく……んぅっ。べ、紅…っ。」
「落ち着くおまじない。」
「うん…。あの、紅…、紅…っ!」

こんなんじゃ、落ち着くどころか逆にドキドキしちゃうよ…。
ちゅーだってそうなんだ、今までこんな風になったことなくて。
それにこんな、舌入れたりするのもしなかった。


「そんなんで、交尾の時どうするんだよ。お前のその態度のせいで眠れなかったんだからな。」
「えっ!そうなの…?…あ、あの…、や、やっぱりするの…?」
「したいけど…、でも桃が嫌なら我慢する。おれ、我慢するよ。」
「べ、紅…。」

紅は、優しい。
昔からそうだったんだ。
ぼくが怒られた時、銀華さまも髪を撫でてくれたけど、もっと優しく慰めてくれたのは紅だった。
ぼくができないことは紅がやってくれた。
失敗した後片付けも全部紅がしてくれた。
夜眠れない時も、ぎゅっと抱き締めてくれた。
傍にいるよって、たくさんたくさん、ちゅーしてくれた。
それからそれから…。
考えればキリがない程、紅はぼくに優しくしてくれたんだ。
それは紅がぼくのことをずっと好きでいてくれたから。
どうしよう…、ぼく、紅のこと、どうしようもないぐらい好きだよ…。


「服、持ってきてやる。」
「…あ、待って紅…っ!」
「何?どうした?」
「ぼく、あの…、ぼくね…、えっと…。………も……よ…。」

ぼくは、恥ずかしさで布団で顔を隠しながら、紅の耳元で言った。
聞こえるか聞こえないか、ギリギリの小さな声で。
交尾、してもいいよ、って。









「…あ、紅……っ。」

とても激しくて深いちゅーを何度もした。
まだそういうちゅーに慣れていないぼくは、紅の舌の動きに応えることがうまくできない。
口の端から零れた唾液がみっともない。


「あの…っ、紅…っ?!」
「ん?」

紅の唇が、ぼくの首筋をゆっくりと落ちる。
露出した肌を舌が器用に走って、その度にびくびくと身体が震えた。


「ぼく…、おっぱい出ないよ…?」
「ぶ…っ、わかってるよそんなの。」
「じゃあなんでそんな…っ、あ…っ、ん…っ。」
「交尾ではこうするんだよ。」

知らなかった…。
ぼくは雄だから、赤ちゃん猫も産めない。
だからおっぱいも出せないんだ。
それなのに紅がそんなとこ一生懸命吸うから変だと思ったんだ。
でも、交尾って、こういうこともするんだ…。


「桃えっち…。もうこっちおっきくなってる。」
「え…っ!あのっ、あ…、あぁ…んっ。」

ぼくは、今紅におっぱいをいじられたせいで、下のほうまで反応してしまっていた。
この前交尾した時みたいに、ぼくのそこは、膨らんで上向きになっている。
これって、気持ちいいってことだったんだよね。
ぼく、紅に触られるの、気持ちいいって思ってるんだ。
それならえっちだって言われても仕方ないのかな。
紅に嫌われなきゃいいけど…。


「可愛い、桃の…。ここも舐めていい?」
「え…、やだ…っ、紅っ、や…っ、やぁ…っ!」

ぼ、ぼくの、紅が舐めてる───!!
こ、こんなのやだよ…、恥ずかしいよ…。
交尾ってこんなことまでするの?!
そんなに近くで紅に見られたら変になっちゃうよ…。
ぼくは、顔を手で隠しながら、紅の行為を受けた。


「桃、後ろ向いて。」
「??後ろ?どうして…?」
「いいから、お尻上げて。」
「え…、えぇっ、やだよこんな格好…っ、紅っ、な、何…っ?!」

ぼくは、紅に言われるがままに、布団にうつ伏せになった。
紅が支えながら、ぼくのお尻を持ち上げる。
ぼくが疑問に思っていると、変な場所に、紅の舌が滑り込んできた。


「紅っ?!そんなとこ舐めちゃや…っ、やだっ、紅…ぃっ!」
「ダメ、桃が痛いのおれ、やだから。」
「え…、え…?痛いって何…っ?やっ、あ…、あぁんっ!」
「ちゃんとしないとダメなんだ。」

紅ってば一体なんのこと言ってるの…?
だってこの間の交尾ではそんなところ、何もしてなかったよね…。
ぼくは、交尾なんてしたことないからわからない。
もしかしてぼくが知らないだけで、交尾って色々あるの?!
ぼくのそこには、紅の指まで入ってしまっていた。


「桃、いい?」
「え…、何が…っ、あ…っ!」
「入れてもいい?おれの。」
「お、おれのって…?えぇっ?!あっ、紅っ、や…、痛…っ!」
「やっぱり痛い?やめようか…。」
「や…っ、我慢しちゃや…っ、紅っ、紅が我慢しちゃダメ…ぇ…。」

だってぼく、今まで紅に色々してもらったんだ。
きっと紅は、色んなこと我慢してきたんだと思う。
ぼくのために、って、そんな紅に、これ以上我慢して欲しくない。
それに、ぼくも紅が大好きだから、紅のしたいことして欲しいんだ。


「桃、大好き。」
「ぼくも…っ、紅っ、紅…ぃっ、あっ、やあぁ───…っ!」

ぼくの身体は、紅の身体と一つの場所で繋がった。

紅のこと以外は何も考えられない状態だった。
初めてのことにぼくも紅もわからいこともあって戸惑ったけれど、
最終的にはぼくは前みたいに変になって白いものを放ってしまった。
紅もぼくの中で、それを放って、それが交尾の最終地点だってことを知った。

とても恥ずかしくて、最初は痛かったけれど、とても幸せな気分になるものなんだ。
紅を好きだっていう気持ちが、前よりも強くなった気がする。
そんな気分に浸りながら、ぼくは紅の腕の中で眠った。








back/next