「魔法をかけたい」-5




「紅…っ?…む…ぅ…っ。」

どうしよう、こんなちゅー、初めてだよ…。
紅の舌、ぼくの口の中に入って、中を激しく掻き回すみたいな…。
これって何…?
どうしてぼく、紅とこんなこと…?!


「紅離し…っ。」
「いいから、見てろよ。」
「ダメだよ、シロがいじめられ…。」
「違うよ。」

シロを助けなきゃいけないのに…。
バタバタと暴れるぼくの身体を、紅は抱き締めるようにして押さえつける。
今のぼくは、紅のこの強い力には敵わない。
前よりずっと広い胸や、太くて長くなった腕…。
こんなのは知らないと思いながらも、それは紅以外の誰でもなくて。
おかしいのは、そうされても嫌じゃないってこと。
ドキドキはするけれど、気持ち悪いとかは全然ないんだ。


「紅ってば離して…っ。」
「交尾してるんだよ、あれ。」
「…え……っ。」
「シロとあいつ、交尾してる。」

こ、交尾ってその…。
ぼくはそんなことしたことないからよくわかんないけど…。
好きな猫同士で絡み合ってえっちなことするあれ…??
そういえばシロは、人間と交尾したから罰としてここにいろって銀華様に言われたんだ。
だからこれってしちゃいけないことだと思ってた。
でも違うみたい…。
だってさっきはシロは嫌がってるかと思ったけど、違ったんだ。
あの人間に触られて、気持ちよさそうな高い声を上げてる。
これって、多分、ううん、絶対この人間と愛し合ってるってことだよね…。


「桃…?」
「………っ。」
「何?どうした?」
「な、なんでもない…。も、もう寝よ?シロ達に見つかっちゃうよ…。」

どうしよう…、ぼくの身体、なんだか変だよ…?
なんでだかわからないけどシロが羨ましくなっちゃって、そしたらなんか熱い…?
今まで経験したことのない、妙な感覚がする…。
紅に心配をかけちゃいけないと思って、そそくさと布団のほうに向かうと、さっきみたいに強く抱き締められた。
変だよ…、だんだん心臓の音が大きくなって、このままじゃ破裂しちゃう…!


「あ、あの…紅…っ、ぼく…っ。」

俯きながら、紅の胸元をぎゅっと掴んだ。
紅の心臓の音が、ぼくの音と重なるみたいに、響いてる。


「なんか変なの…っ。」
「変?何が?」
「変なの…っ、身体…、熱い…っ、熱いよ紅…っ。」
「桃…っ。」

気がつくとぼくは、自分から紅にちゅーをしてしまっていた。
なんだかちゅーしないと落ち着かないと思ったから。
それは、紅とぼくだけの、おまじないみたいな。
ちょっとだけ紅はびっくりした後、ぼくを布団に寝かせて、上に覆いかぶさって来た。


「変なの、ここじゃない?」
「え…?」
「ここ…、紅のここ、おっきくなってる…。」
「…え……??」

紅に指摘されて、下半身に自分で触れてみた。
そこは今まで経験したことがないような熱を持っていて、形まで変わってしまっていた。
何…これ…、ぼく、何か変な病気とか…。
ドクドクと血液がそこの中を音をたてて流れるように、熱は更に上がっている。


「桃、えっち…。」
「紅…?…や、紅やぁ…っ!」
「しーっ。シロに聞こえちゃうから。」
「あ…、あ…、でも…っ、ぁ…んっ!」

ぼくの口から出るそれは、つい今聞いたシロと同じような声だった。
つまりは、ぼくもこの時、気持ちよくなってたってこと。
最初は指を差されただけなのに、紅の手がぼくの寝巻きの中に入って来て、
ついにはそれを掴んだ時、気持ちいいってしか言えない感覚だったんだ。


「桃、気持ちいいんだ?」
「うん…っ、紅っ、紅…ぃ…。」
「ほら、えっちな液出てるの、わかる?桃の、ぬるぬるする…。」
「うん…っ、あっ、んん…。」

擦り上げる紅の手には、ぼくのそこから溢れ出た液体が絡まっている。
それは透明でぬめりを帯びていて、擦る度にとてもえっちな音がする。
気持ちいいと出る、と紅が教えてくれたその液体も、ぼくは初めてだった。
もう頭の中はわけがわからない状態で、何も考えられなくなる。
違う、考えられるのは、今目の前にいる紅のことだけ…。
ぼくに触る紅のことだけしか見えない。
こんなに恥ずかしくてどこか苦しい感じさえするのに、嬉しいと思ってしまうのはどうしてだろう。
紅に激しいキスをされて、紅に触られて。
ぼくは…、ぼくは…。


「…あ、紅…っ、なんかおかしいっ、ぼく…っ、さっきより…っ。」

気持ちいいのと、苦しいのと、嬉しいのと。
それからいっぱい別のものが混ざって、なんだか痺れるみたいな、震えるみたいな感覚。
血液がぼくの身体の隅々まで巡って、熱が上がって。
その熱がどこかへ出て行くのを紅の手に導いて欲しい…。


「桃、好きだ…。」
「…あ、紅…………っ!!」

真っ直ぐな瞳で言われた言葉。
それは、初めて言われたわけじゃなかった。
でも、言葉の意味が前とは違うのだというのがわかった。
そしてぼくも、多分紅と同じようなことを考えていた。
紅にもっとキスしたい、紅に触りたい。
紅の傍にいたい、一緒にいたい。
息を切らしながら、紅にしがみついて、その思いを伝える。


「紅……、…き、…すき……っ!」

ぼくは、紅がすき。

やっとわかった自分の心を伝えると、
触られていたぼくのそこからは、白く濁った液体が、紅の手を汚していた。







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