「innocent baby」-7




「志摩、こっち。」

風呂上がりの志摩の頬はピンク色で艶めいている。
いつもはほとんど裸に近い格好でいるクセに、
こんな時はきっちりパジャマを着込んでいる。
まだ濡れた髪から、湯船に浸かったであろう身体から、
甘くていい匂いがして、一晩かけて全部食べ尽くしたいぐらいだ。


「あ、あの、隼人…。」
「何?嫌?」

俺より随分小さい手をぎゅっと握って、
自分のほうへ引き寄せると、まずはその頬にキスをした。
唇で優しく噛んで皮膚の柔らかさを味わう。
そこから耳の後ろへ移動させてきつく吸い上げると、志摩の身体がびくんと跳ねた。


「あの、でも、エッチしてもし赤ちゃ…。」
「大丈夫、絶対できないから。」
「そうなの??」
「うん。」

驚いた顔をして、それを聞いた時俺はもっと驚いたんだからな。
お前のその純粋で純潔で無知で、それで俺は汚しちゃいけないと思ったんだ。
でもそうじゃない、汚すって思ってることが俺は志摩を汚しているんだと思う。
セックスすることが汚いことみたいに言って。
もしそうだとしても、別に志摩の心が変わるわけじゃない。
志摩は俺を大好きで、その心は変わらないし、
もっと俺を愛してくれたら、それは逆に綺麗なことなんじゃないか。
こんなことをずっと考えてしまっていた俺が一番汚かった。


「もし100万分の1の可能性で、できたとしたら責任取るから。」

絶対にできるわけなんかない。
でもそれぐらいの覚悟もあるし、それぐらい俺も志摩が好きだ。
お前によって俺はこんなに変わったんだ。
凄い奴だ、俺まで浄化するなんて。


「うん、じゃあしよー…?」
「うん。」

強い力で志摩をぎゅっと抱き締めて、濡れたままの髪を撫でた。
大きな黒目が僅かに潤んで、それが今俺だけを見つめている。
これからもずっと俺だけ見ていて欲しいと願いながら、熱いキスをした。
唇の端から端を丁寧に舐めて、唾液で濡らす。
ピンク色の唇がつやつやと光って、色っぽく見える。


「…あ、あ、あ…。」

それに応えようとして叶わない志摩が口をぱくぱくしていて、
凄く悪いけど、その顔が間抜けで可愛い。
舌を入れてもらえないのがもどかしくて、
一生懸命になって自分から舌を出して、俺にしようとしていて、
可愛すぎてなぜか笑いたくなってしまった。


「はや…と…っ、ちゅーは…っ?」

危うく鼻血でも出るかと思った。
そんな熱っぽい瞳でそんなこと言われて、平常心でいられる奴がいるわけがない。
意地悪するのは可哀想だし、これだと逆に俺が意地悪されているみたいだ。


「口開けて、もっと。」
「う…、んんっ、んっ、ん…っ。」

開いた志摩の口の中に舌を滑り込ませる。
わざと唾液を多く含ませながら、その口内の隅々まで味わい尽くす。


「うん…っ、んっ、は…ぁっ。」

酸素不足で苦しいぐらいの激しいキスは、全身を痺れさせた。
このままこんなキスをしてたら志摩は息ができなくて死んでしまうかもしれない。
そう思って今度は優しいキスをして、激しいのと優しいのを交互に繰り返した。


「ん……っ!」

顎の下から首筋を伝って、パジャマのボタンを開けて胸へと辿り着く。
その先端を口に含んで、舌先で転がすと、志摩の身体が小刻みに震えていた。
まだ、恐いんだろうか、瞳には涙を溜めて。
でももうここで止められるわけがない。
ここを乗り越えなければ俺は、俺たちは前には進めない。
濡れた音をたてながら、集中的にそこを愛撫して、快感を与えた。
この行為で多分形が変わっているだろう下半身へと手を伸ばす。
パジャマのズボンの上からでも熱くなっているのがわかる。
その中に手を差し入れて、志摩の体温を確かめる。


「あ…、やぁ…っ!」
「や?嫌?やめて欲しい?」
「ちが…っ、やっ!」
「何、どっちだよ…。」

そんな顔でやめろなんて説得力の欠片もない。
張り詰めたそこを開放してやりたくて、志摩を寝かせてズボンに手を掛ける。
ここまで来たっていうのにまだ躊躇っているのか、
志摩は俺の手を退けるようにして手で止めた。


「じ、自分で脱ぐ…、恥ずかしいもん…。」
「わかった。」

よかったと思う、やめるって言わなくて。
断られたらショックでもう立ち直れないかもしれない。
そこまで志摩は俺を動かしてしまう存在になっていた。
起き上がって、いそいそと自分で服を脱ぐ志摩をじっと見つめる。
その熱い視線に気付いたのか、手を止めて志摩が固まった。


「隼人、あっち向いてて、やだよ…。」
「俺もやだ、見たい、見せて志摩。」
「う…、恥ずかし…、やだ…。」
「じゃあ脱がせても同じだよな。」

ズボンを押さえる志摩の手を優しく振り払い、 着けている下着まで全部取った。
初めて見る志摩の全裸に、どうしようもなく興奮してしまった。
白くて透けるような肌とか、柔らかい皮膚とか。
俺に見られて真っ赤になってる顔とか、全部好きだ。
この世で一番可愛くて綺麗な身体だと思う。


「志摩、可愛いな、お前可愛いよ、ほらここも…。」
「や…ぁっ!」

無意識に可愛い可愛いと連呼しながら、その下半身の中心に手を添えて口に含んだ。
まだ半勃ちぐらいだったのに、俺にそうされると一気に膨れ上がった。
その反応がいちいち俺に火を点けてしまう。
滲み出ていた先走りと、自分の唾液をたっぷりと絡ませて、
丁寧に出し入れしながら、舐め回しながら、愛撫を繰り返す。


「あ……ん、あっ、やぁ…っ。」
「いい?気持ちいい?」
「う…んっ、隼人…っ、…っちゃ…っ!」
「イきたい?」

完全に勃ってしまったそこは、射精を今かと待っているかのように先走りと容積を増している。
その先端を舌で突くと志摩の身体はびくびくと激しく揺れ動いた。


「や…も、いっちゃう…っ!」

とくんと俺の口内に志摩の生温かい白濁液が放たれた。
それは迷うことなく喉元を通り過ぎていった。
男のものを舐めるとか、出されたものを飲むとか、
その前にセックスしようなんてそんなことがあること自体想像できなかった。
でも今俺がそうしてるのは確実に男で、こんな興奮するものとは思ってもみなかった。


「うー…っ、やだよー…。」
「や?やっぱり嫌か?やめたほうがいいか?」

泣いてしまった志摩を見て、無理矢理でもやってやろうと思っていたけどできなくなってしまった。
俺はやっぱり志摩を悲しませることはできないんだな…。
それだけ好きってことなんだな…。
もうそれでいいような気もしてきたかもしれない。


「違うの…、俺ばっかり変になっちゃってやなの…。」
「え…?」
「だって隼人大人で、余裕で、俺バカみたいなんだもん…。」
「俺が大人?余裕??どこがだ?」

顔に当てていた志摩の手を掴んで、自分の下半身へと持って行った。
志摩は驚いてぴたりと涙を止めた。
バカみたいなのは俺のほうなんだよ。


「は、隼人っ??」
「これのどこが余裕なんだ?」

お前にしてるだけでこんな勃っちまってるんだ。
今すぐお前の中に入りたいんだ。
でも傷付けることはしたくないから段階踏んでるんだ。
それぐらい、わかってくれよ…。


「隼人もドキドキする?」
「するよ、当たり前だろ。」
「えへ…、よかった…。」
「もうそんなこといいから…。」

抱き付かれながら、志摩の細い脚を上の持ち上げた。
放ったばかりの体液や俺の唾液で濡れたそこより後ろ部分、
これから繋がろうとしている場所を食い入るように見つめる。
本当にここに入るのかと心配になってしまうぐらい狭そうなそこを、
ちゃんと解してやろうと、顔を埋めた。


「ひゃあ…っ!隼人…ぉ!」
「なんて声出してんだ、お前は…。」
「や、そこやだ…ぁ、見な…で…っ!」
「大丈夫、俺しか見てないから。」

それが一番恥ずかしいっていうのを知っていながら、やめることなくそこに舌を入れて濡らした。
俺が何か言う度、舌を動かす度にその窄まりは僅かに伸縮していて、
間近で見ていて心臓がおかしいぐらいに速度を上げた。
指で押し広げながら、その指先を少しだけ入れてみる。


「ひゃ…!やっ、あ…っ!」

初めて開かれるそこは熱く蕩けてしまいそうで、
早くその温度を自分自身で確かめたい。
早く志摩と一つに繋がりたい。
濡れた指をゆっくりと体内に挿し入れて、その中を優しく撫でる。


「や…ぁんっ、隼人…っ、変だよ…っ。」
「変なんだ、志摩可愛い。」

時間をかけて指の数を増やして、それが3本目になる頃には、
志摩の言う変、な感覚が全身に走っているみたいだった。
次々に上げる甘い喘ぎは鼓膜を壊してしまうぐらいで、
これじゃあ俺の思考回路もおかしくなる、と思った。
理性なんかとっくに無くなっていて、あとはもう繋がりたいという本能だけだった。


「入れていい…?」

志摩は涙を半分零しながら頷いた。
開かれた脚を一層高く掲げて、熱くなった自身で志摩の入り口に触れた。


「ん───…っ!いた…、ん…っ!!」
「痛い?ごめん、志摩、ごめんな…っ。」

思ったよりもきついそこは俺のものを飲み込めなくて、
拒否するかのように志摩に痛みを与えてしまう。
それでもやめることはできるわけがなくて、 ゆっくり、
なるべく痛みを最小限にして、 やっとのことで体内に収めた。


「志摩、入ったの、わかるか…?」
「や…っ、なんか隼人えっちぃ……っ!」
「えっちぃ?どっちが?こんななって?」
「やだ…っ、隼人意地悪だ…っ。」

背中に食い込む志摩の爪が痛い。
そんなに普段は力ないのに、よっぽどのことだったんだろう。
当たり前だ、俺だってこんなところに入れられたら、気絶でもしてしまうんじゃないか?
それでも志摩は俺を受け入れてくれた。
嬉しいのに、口から出るのはそんな言葉ばっかりで、
せめてこんな時ぐらい優しくしてやれない自分が憎い。
再び体積の増した志摩のそれを握って、前後で快感を与えた。


「やっぱり俺、変…っ、だって…っ。」
「またイきそう?後ろで?やらしい…。」
「ダメそんな…っ、やだ、隼人…っ!」
「いいよ、一緒にイこう?」

前から手を離して、両腕をしっかりベッドに突いて、
それを支えにして全身の体重をかけた。
痛かった志摩もそれよりも快感が支配しているみたいで、その身体を大きく揺さ振った。


「ダメっ、いっちゃ…っ、隼人っ、好き…っ!」
「うん、俺も好きだよ、大好きだよ、志摩…。」

止まらない志摩の涙を舌で掬って、頬にキスをした。
ギシギシとベッドが壊れそうに鳴って、
それより志摩の喘ぎが大きくて、絶頂が近いことを感じた。


「やっ、いくっ、隼人っ、あっ、あぁ────…っ!!」
「志摩……っ!」

お互いの名前を呼び合いながら、
志摩が二度目を放った直後、引き抜いた俺自身も志摩の腹部目掛けて放った。
あまりの激しさに、その後は力尽きたようにベッドに倒れ込んだ。








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