「LOVE MAGIC」-5




オレがバカだった。
謝って許してもらえるなら、また一緒にいて欲しい。
また、触って欲しい。 好きでいて欲しい。


「亮平っ!」

息を切らして、大好きな人の名前を呼んだ。
寒いのなんかどっかいっちゃうぐらい、身体は熱くなっていた。
それは全速力で走って来たからじゃない。


「よぉ。」
「よ、よぉ〜?」

そこで煙草を吸っていた亮平がこっちを向いて手を軽く挙げて、その姿を見た瞬間にオレの身体はもっと熱くなってしまった。
動揺して間抜けな返事までしちゃったよ。


「あ…の、オレ、ごめん、ごめんなさい!!」

一体何から話していいのかわからなくて、そんな言葉しか出てこない。
どうしてこういう時って、うまく言えなくなるんだろう。


「オレ、気付かなくて、亮平がどんな風にオレのこと思ってくれてたか…、バカだから、わかんなくて…。」

あうう、よけいこんがらがってきたぞ。
なんて言えばいいんだろ。
亮平に嫌われたくないよ…。

───ドクンッ!

さっきの、心臓おかしくなるやつ。
あぁ、そっか、今わかったよ、オレ。


「オレ、美幸ちゃんにはすごく悪いんだけど、亮平に嫌われる方が、美幸ちゃんいなくなった時より悲しいと思…っ。」

あ…、ヤバい、なんかホントにそうなったこと想像したら泣きたくなってきた。
オレ、亮平に嫌われること以上に悲しいことなんてない。
ちゃんとオレ、美幸ちゃんのこと、吹っ切れてたんだな。
忘れるとかじゃなくて、今が幸せならいいって、そうなってたのに。
亮平がそうしてくれたのに。


「…っ、りょうへ…、好きだよ、大好きだよ〜、う…‥っく、え…っ。」

オレは我慢できなくて、子供っぽいけど、涙まで出てきてしまった。
だってもうこれしか言えないよ。
亮平が好きだよ、どうしようもないぐらい、好き。
こんなんだと呆れられる、と思った時には、オレはもう亮平の腕の中にいた。


「あぁ〜、よかった…。」
「…へ?」

抱き締められる、ってよりオレにもたれかかってるみたい。
オレの耳元で亮平は大きなため息を吐いて、今にも倒れてきそうなぐらい、オレに体重がかかっていた。


「俺の方こそ嫌われたかと思った…。」
「き、嫌わない!」

オレが亮平のこと嫌いになる、なんて絶対ないのに。
こんな亮平、初めて見るなぁ…。


「お前が出てった瞬間、俺ショックでなんも言えなかった。」

いっつも自信たっぷりなのに、こんなこと言うなんて信じられない。
こんな弱い亮平、見たことないよオレ。
オレもいっぱいいっぱいだけど、亮平もだったんだ。
どうしよう、こんな時になんだけど、ちょっと可愛い…。
そんなにオレのこと、好きでいてくれたんだ。
オレ、嬉しくてどうにかなっちゃいそうだ。


「亮平〜、な、泣くなよ。」
「はぁ?泣いてんのお前だろうが。」
「あっ、そっかそうだった…。」
「ぷ…、変な奴。」

あ〜…、笑った…。
オレの大好きな亮平の笑顔、また見れた。
これって、オレといるからだよな。
変って言われても、嫌な気分なんかしない。


「でもそういうの全部入れて、お前が好きだよ、大好きだからな。」
「うん。」
「シロ、大好き。」
「へへっ、オレも、大好き。」

今度はちゃんと、抱き締められた。
オレの大好きな亮平が、オレのこと大好きだって。
あぁ、オレって幸せだなぁ。
ずっとこうしてたい。 あったかい、この腕の中に。


「人間とか猫とか関係ねぇよ、お前はシロ、でいいじゃねぇか。」
「うん、オレ、それでいい。」

オレ、このままでいいんだよな。
戸籍とかいうやつなんかいらない。
亮平にこうしてもらってることが、 この世に存在する、何よりの証拠じゃないか。
オレ、なんで今まで気付かなかったんだろ。
こんなにハッキリ、体温を感じられるのに。


「よし、じゃあ帰るか。」
「うん!」

亮平はオレのおでこにちゅ、と小さく音をたてて、キスすると、腕から解放した。
もっとくっついてたいなぁ…。
外じゃなきゃよかったのに。


「あの、亮平…。」

夜だから、わかんないよな。
オレは遠慮がちに自分の手を亮平の手まで持っていった。
亮平はまた笑って、オレの手に触れた。


「シロ、離れるなよ、いなくなるなよ、傍にいろよ。」

ギュッと強く握られて、 そこから亮平の心まで繋がってるみたいだ。
こんな嬉しい言葉、言ってくれるなんて、 猫だった時予想もできなかった。
わがままで、贅沢でも、お互い好きならいいんだよな。
ありがとう、亮平、オレをオレって認めてくれて。


「うん、ずっと傍にいる。」

オレ、ずっと傍にいるよ。
飼われてる、じゃなくて、 さっき洋平が言ってた恋人ってやつ。
絶対離れたりなんかしない。
オレはしっかりその手を握りながら、夜道を亮平と歩いた。
暗くても、亮平が傍にいれば大丈夫、この先迷わないで歩いていけると思った。







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