「Love Master.2」-4







「今夜は名取の好きなことしていいぞ。」

俺の好きなことかぁ…。


「お前の好きなプレイしていいぞ。」

俺の好きなプレイって…どうする、どんなのするかな…。


「あぁ、今夜は頑張ろう、名取。」

もちろんだぜ、今夜は寝かせないからな遠野!フフ…。

そんな昼間の遠野の言葉が脳内で繰り返し、俺の妄想も絶好調となった夜、
寮の一室でソワソワしながらエッチを仕掛けるチャンスを狙っていた。
なのに遠野はいつもと変わらず、机に向かって勉強をしている。
まったく、こんな時ぐらい宿題なんかどうだっていいっつーの…。
溜め息を吐きながら、遠野のほうへ歩み寄った。


「あぁ名取、どれがいいんだ?」
「…は?何が?」
「だから、これ。」
「…な、な、それ姉ちゃんの!!」

俺のことも目に入らないぐらい真剣に勉強してるかと思いきや、姉ちゃんの同人誌読んでたのかよ…。
なんだか余計溜め息を吐きたくなってしまった。


「じゃあまずは風呂だな。入るか。」
「えっ、それって…!」

俺の服の袖を軽く引っ張って、遠野は風呂を目線で指した。
それはお風呂エッチってやつだろうか…、つーか絶対そうだよな、うん、それもちょっと、いや、かなりやってみたかったな。
湯気の中で絡み合う二人…なんつってな。


「名取、どうかしたのか?」
「あっ、いや、うん、そうだな、それで!!」

俺は意味不明な受け答えをして、着替えを持って遠野と風呂場へ向かった。
なのに…。








「あぁ名取、シャンプー取ってくれ。」
「あ、あぁ…。」

なんで普通に二人で風呂入ってるだけなんだっ!
つーかこんな狭いところで二人でそれぞれ髪洗ってって、一緒に入る意味全然ないだろ!
ここは一つ俺から行動を起こさないとな…。


「と、遠野…。」
「今、髪洗ってるんだ。」
「それはわかるけど…。」
「ちゃんと洗わないと泡が残ってしまうからな。」

俺のほうなんか見向きもしないで遠野は一生懸命髪を洗っている。
う、嘘だろ…ホントにこれだけか??


「やっぱり二人は狭かったかな。」
「あ〜…そうだな…。」
「時間節約になると思ったんだけど。」
「あ〜…そうだな…。」

ちょっとだけ忘れてたけど、お前はそういう奴だったよな…。
うん、期待した俺が悪かったよ…。
喧嘩して仲直りして、その後エッチの約束して、一緒に風呂入ろうなんて言ったら普通はなんかすると思うだろ。
でもそうだよな、お前はその普通、っていう基準が違うんだもんな。
もう慣れたと思ってたけど、ホントに俺を驚かせて、 呆れさせて、動揺させて、慌てさせて、他にも色々表現あるけど、
突拍子もないことするし、でも、感動させる奴だと思う。
今日改めてわかったから、今はいいか…。
焦らなくても、この後たっぷり、な…。













「ちょ、ちょっと待て!」
「なんだ?」

この体勢って違うだろ…!
風呂から上がった俺たちは、ベッドへと向かったが、俺が下になってるってどういうことだ??
どういうって、そういうことしかないよな、これは。


「お前俺の好きなようにって言っただろ!」
「あぁ、お前が好きなことでいい。」
「じゃなくて!俺がされるのかっ?逆だろ!」
「その点は気にしなくていいぞ。」

ど、ど、どうしよう…遠野、お前やっぱり変だぞ!
気にするって!だって俺の後ろにお前のあれが…!
む、無理だ、それだけは絶対無理だ───!!


「じゃあするか。」
「…っ、遠野…っ!」

俺の上に跨った遠野が、イキナリ濃厚なキスをしてきて、流されるように舌を絡めると、お互いの口の端から唾液が零れた。
久し振りとあって、何度もキスを繰り返して、それだけでイってしまいそうなぐらい、心臓が高鳴る。


「…は…っ、名取…っ。」

息を乱した遠野の口が、俺の胸元に近付いて、その先端を含んでしまった。
こうなると快感に耐え切れるかどうか怪しくなってくる。
もう俺はヤられるしかないのか…??


「…遠野っ、もうやめ……っ、!それなんだっ??」

俺の胸を弄っていた遠野が何やら包みを開け始めたのを見て、
俺は現実世界へと一瞬にして戻った。


「美樹さんにもらった。快感が増すらしい、まずはそれで盛り上げよう。」
「な……!!」

ね、姉ちゃんなんてものを…!
そんなもん実の弟に、この場合、その恋人に送り付けんなよ!


「よし、じゃあ……。」
「ま、待てっ!待てよっ!待ってくれ、待って下さいっ!」

遠野がとろりとしたものを指先に取って、俺の下半身に触れようとして、 その腕を強く掴んで抗う。


「その、あれだ、まずはお前が試してからじゃないと納得できないだろ?嘘かもしんねぇし!な?な?」

あぁ…、もうダメだ、よりによってこんな言い訳、もっとマシなこと思いつかなかったのかよ、俺のバカ…。
仕方ない、おとなしくヤられるしかな……。


「それもそうだな。」
「は…?」
「嘘だったら名取に悪い。」
「は、ハイ…!!」

ありがとう!ありがとう神様!!遠野が変でよかった──…!
もうこうなったら遠野が立てなくなるまでヤってやる!
俺の夫の座は健在だぜ!


「…あっ、名取……っ!」

なんの神様かは知らないが、胸の中で合掌して、今度は俺が遠野に跨って、胸の辺りを舌でなぞりながら、
遠野の指先から奪ったそれを下半身に垂らした。
既に緩やかに勃ち始めているそこを、濡れた音をたてながら、掌で包んで愛撫を施す。


「あっ、気持ちい…っ。」

指の腹で先端を撫で、染み出した先走りを器用に絡めながら、遠野が達するのを促す。
胸の先端も何かの種のようにぷっくりと膨れて、そこを舌先で転がすと、遠野の口からは次々と喘ぎが洩れた。


「名取…もう…っ!!」

激しく擦った瞬間に、遠野は瞼をぎゅっと閉じて、肩を上げて全身を震わせて、俺の手の中に白濁を放った。
結構早いな、いつもよりイくの。
俺のテクも上がってきたってことか。


「あ…、名取、もうそこいいから…っ。」
「わかってるって…、こっちだろ?」

放たれた遠野のそれを手に馴染ませながら、脚を高く掲げて後ろの入り口へと挿し込んだ。
熱いそこは俺の指を容易に飲み込んで、まるでもっとと強請るかのように伸縮を繰り返している。
そんな遠野の表情を見ていて、俺の下半身もかなり形が変わって、もう少しだけ指で解したら挿入しようかと思った時…。


「名取…っ、早くお前の…っ!」
「まぁ焦るなよ、もうちょい…。」
「ダメだ、早く…、今すぐ…っ!」
「えっ、ちょっと待てよマジかよ俺まだ…。」

これはもしかして…さっきの姉ちゃんから送られた怪しいやつのせいか??
遠野はとろんとして潤んだ目で俺を見ている。
もしかしなくてもそうなんだな…!
ど、どうすんだよ、だって俺まだ完勃ちなってねぇ…、つーか まだ心の準備もできてねぇぞ…!


「名取…、まだか…?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、わかったからっ!今!今するからっ!」

信じらんねぇ…!
なんで遠野の傍で俺、自分で自分の弄んなきゃいけねーんだ!!
こんなことってあるかよ…ああ、情けない…。
仕方なくその、いわゆる一人エッチという行為で完勃ちにさせた自身を、濡れた遠野の入り口へと挿入した。


「───…っん!あっ、んん───…っ!!」

高い声をあげて遠野は俺を受け入れて、その奥まで沈める。
ベッドがギシギシと軋むくらい、俺も遠野も全身を激しく動かして、繋がった箇所からなんとも言えないイヤらしい音が部屋中に響く。
熱いその中は本当に溶けてしまいそうで、頭の中が何度も真っ白になりかける。


「あっ!名取っ、んん…っ、もうイ…っ!」
「も、もう??」
「早くお前も…っ、んっ!」
「よしわかった、一緒にイく…っ!」

早いとは思ったが、遠野の顔を見てたら俺のそれも弾けそうなぐらいその体内で膨張していて、二人で一気に駆け上がった。
やべぇ…めちゃめちゃ気持ちいいぞ、これ…。


「名取っ、イくっ、…っ、あっ、ああぁ──…!!」
「遠野……っ!」

その勢いに乗って俺たちは同時に絶頂に達してしまった。
…んだけど。



「…名取…、おさまらない…。」
「え!…マジかよ…。あれ…っ。」

直後だというのに遠野は息を切らしながらも再び俺を求めてくる。
しかも俺まで…。


「名取…っ、お願いだ…。」
「とっ、遠野っ、俺も…!俺も頼む…っ!ヤらせてくれ…!」





そんなわけで、俺たちはそれから夜明け近くまですることになってしまった。
これじゃあ俺の好きなことでもプレイでもなんでもないだろ…、いや、好きなことっつーか、 まぁしたいはしたいけど…。
次の日ヤり過ぎで遠野どころか俺まで立てなくなるなんて!!











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