「Love Master.2」-5








次の日。
俺たち(特に俺)は情けないことに、学校を休んでしまった。
エッチのし過ぎでなんてバカ極まりないし、でも本当に腰から何から身体が痛すぎる。
…というかむしろ俺より遠野のほうがまだ元気といった感じで。


「名取、何か食べるか。」
「…いらねぇ……。」

部屋に備え付けの小さい冷蔵庫や、食べ物がある棚を遠野はガサガサと漁ってるようだ。
俺はというとベッドに横たわったまま、適当な返事をする。


「名取。」
「うわっ、なんだよっ、イキナリ近付くなって…!」
「いや、添い寝したほうがいいかと思って。」
「い、い、いらないって!子供じゃあるまいし!!」

しかも理由が理由なだけにもっと情けなくなるだろ。
遠野の髪が頬に触れて危うくまた欲情するところだった。
これ以上そんなことしたら俺の腰どうにかなるっての。


「そうか…、残念だな。せっかく今日は一日中傍にくっついていようかと…。」

……!!
そ、それは確かにオイシイな…。
一日中遠野とイチャイチャか…。
やべ、また勃ちそうだ…。


「あぁ名取、水飲むか?」
「とっ、遠野、ちょいこっち。」
「なんだ?」
「その、あれだ、うん、添い寝してくれ…なんて…。」

これはやっぱり恥ずかしいだろうか。
だって俺たち今までそういうベタベタしたこととかなかったし。
せっかくの遠野の誘いだしな。
具合悪いの理由にそういうのもいいかなー…と。


「そうか。」
「わ、悪いな…。」

遠野は嬉しそうにちょっとだけ笑って、俺の寝ている布団に潜り込んで来た。
まだその身体は熱くて、本当にまた勃っちまいそうだ……ん??


「ちょっ、お前どこ触って…!」

お、俺の股間に遠野の手が───…!
まさか気付いて…?


「いや、昨日は入れられるほうに夢中になってしまったからな。」
「だから何すんだ…って…!」
「自分で試してよかったから約束通り名取にもしてやろうかと。」
「い、い、いらねぇって!いいから手どけろって!」

マジで勃ってきちまったじゃねーかよ!
しかもどうすんだ、せっかく俺の立場が守れたと思ったのに。
なんでこいつそんな細かいことまで覚えてるんだよ。
約束なんかしてねーしよ…。
このままじゃホントにヤられ…。


「夫婦に遠慮はなしだ、名取。」
「ちょ…、遠野…っ。」

遠慮とかいう問題じゃねぇっつーの!むしろ遠慮させろよ。
ホントにどこもかしこもズレてる奴だ。
好きだけどそれはどうしても譲ることはできない。
俺の、俺の夫という立場だけは───!


「よお名取、遠野!ヤりすぎたんだって?大丈夫かぁ?……あ。」
「うわっ!」
「そうだその通りだ。」

俺たちが揉みあってる部屋の中に、クラスの奴が突然入ってきた。
しかも余計な、花束とか持って。
そいつの後ろには他にもクラスの奴がいたようで、ドアの間からドサドサと倒れてきた。
よりによってこんな場面を見られるなんて…。


「龍之介、応援してるわよ。」
「ありがとう麗華、俺頑張って名取を幸せにする。」

今回の事件(?)の元凶とも言える麗華さんまで…。
つーかココ、男子校の寮なんですけど。
まぁ学校壊してうちに来ることができるぐらいだ、金も権力も持ってるってことだろうな。
感心してる場合じゃないんだけど。


「みんなに宣言する!」

そして俺の上に乗った遠野は滅多に、いや、始めてデカい声をあげた。
あははどうしよう!すっげーーー嫌な予感がするよ、俺!!


「俺は名取を必ず嫁さんにするから、温かく見守ってくれ。」

あぁ…、もうダメだ…。
俺、やっぱり嫁なのか…。
いやでもな、現在の日本じゃそれはまず無理だし。
いくら遠野でもそれはできないだろ、遠野の家の金とか権力で なんとかなるもんでもないし。


「うん、まぁ、よろしくな…はは…。」

俺は引き攣りながらも笑顔で遠野に言った。
とりあえず遠野の暴走を止めなければいけない。
あとは適当に誤魔化して…。
そんな俺はやっぱり考え方が甘いんだと思う。


「俺は将来総理大臣になって法律を変えてみせるからな。」

お前将来は一流企業に就職するんじゃなかったのか。
お前んちでもできるだろ。
それを捨てて総理大臣なるのか…。
もう俺たちの恋は学校の中だけでなく、 家族の中だけでなく、
日本、いや世界レベルにまで達してしまうのも、時間の問題なのかもしれないと思った。


「名取、幸せになろう。どうした顔が青いぞ、まだ具合悪いのか?」
「あ、あぁ…。いや、幸せ過ぎてな…。」
「そうか。俺は嬉しい。」
「俺も嬉しいよ、遠野。」

お前のせいだっつーの。
俺はもうヤケクソなのか笑うしかなかった。
そして周りは一瞬止まった後、拍手喝采だった。
その拍手は全然嬉しくないんですけど…。
でも俺はわかってる、遠野、お前ならなんでもやりそうな、俺を幸せにしてくれそうな気…だけじゃなく、 それこそ必ずそうなると思う。

だからお前に一生ついて行くからな。
ちゃんと俺もその思いを男らしく口にして応えるから。


「名取、愛してるぞ。」
「…うん、俺も愛してるから。」

そう言って俺は勢いに乗って公衆の面前でキスしてしまった。
その後やっぱりその噂…というか事実は学校内に広まってしまうけど、それでもいい、遠野と一緒なら、なんでもいいんだ。


そう思っている俺は、世界一幸せなのかもしれない。












END.





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