「ラブホリック・ランドリー」-2






あぁ…、Kくん…、あなたはどうしてKくんなの…?
俺は一体このせつない恋心をどうすれば…!


「Kくーん…。気付いてくれよー…。」

浮かれ気分で帰ってきたというのに、家に帰るとこんな具合だ。
傍らに置いたKくん人形(自作)を手に取ってギュッと抱き締める。
こんなふうに俺も抱き締められたいよー…。
そう、たとえばさぁ…もやもやもや〜ん…。


以下、俺の脳内ラブストーリー:

「あっくん、好きだよ、愛してる(ハート)」
「俺もKくんが大好き!」
「あっくん…。」
「Kくん…。」
そして思いを確かめ合った二人はもちろん……。
ぐっふっふ…、ぬっふっふ…。

完。


「あぁーっ!!エッチしたいよぉーっ!!」

行き着くところはこれなんだよなぁ。
もう2ヶ月半も俺、後ろでしてないよ…。
まぁくんはしてくんないし、売りはやりたくないし…。
まぁくんとも実際そうなったらできないだろうなぁ…。
だってやっぱりさ、エッチは好きな人とじゃなきゃできないし、したくないよ。
だけどもう俺このままじゃ欲求不満で死んじゃうよ…!


「よしっ!出でよ俺のゴッドハンド!!」

そんで結局、今日も一人エッチか…。
まだ若くてピチピチなのに…、可哀想な俺!






まぁ結局どうしたらいい、なんてどうすることもできないから、今日もコインランドリーに行くしかないわけだ。
いい加減毎日コインランドリーに行くのも面倒だし、
この金のない時にたった200円とはいえ、 結構な金額になる。
うちの近所の安いドラッグストアでティッシュ5箱入り買えるぞ。
毎日消費するから(注:一人エッチで)ティッシュは切らしちゃいけない。
Kくんが来たのがわかると、乾燥機も使うから(注:そこにいたいから)、余計金がかかるし。
でもパンツって毎日洗っても平気なのかな…。
いや、パンツに限らず、服でもなんでも。
毎日バカみたいに着替えるわけじゃないから、着てないやつまで洗ってんだよね俺。
無駄使いっちゃあ無駄使いなんだよなー。

そんな俺の毎日にも、変化が表れた。
それは、Kくんもこのところ、毎日ここに来ているということだ。
もしかしてKくんも俺狙い??ぃやっほーう♪とか思って舞い上がっちゃったけど、逆も考えられるわけで…。
そう、たとえば、他に恋人がいて、そいつと暮らしてるから洗濯物が増えるとか。
俺の知らない誰か、可愛い男とデキてたりするんだろうか…。
俺以外とエッチ…、俺以外のケツに突っ込んで…!!


「ああぁー嫌だぁー!そんなの嫌だー!Kくうぅーん!!」

ゆ、許せねぇ…!!Kくんの恋人R!!(今決めた仮の名)
俺が一番したくてもできないこと、つまりはエッチを、 あのKくんとしてるなんて…!!
俺はこんなに好きなのにいとも簡単にその座を手に入れて!!


「あの…、大丈夫ですか?」
「大丈夫もクソもあるかよ!聞いてくれよ!」
「はい。」
「えっ!!!」

ぎゃああぁーーー!!けけけけけKくん!!
俺ってば本人相手に何言ってるんだよ!!
そこには心配そうに見つめる、Kくん本人が立っていた。


「さっきから叫んでいたんで…、どこか具合が悪いのかと…。」
「ハイっ!具合悪いですっ!もうずっとこのへんが!!」

そう、この下半身がずっと疼いているのだ。
この2ヶ月半、自分で慰めるしかなかった俺のあれ(後ろも含め)を今こそKくんに捧げます!
そして俺は、Kくんの手を無理矢理自分の股間に押し付けながら、勢いに任せて言った。


「おおお俺と付き合って下さいっ!!!」

言った!!言ったぞ俺!!
よくやった、頑張ったねあっくん!
いや、まぁやるのはこれからか。
やっと言えた…大好きだった、片思いだったKくんに…。感無量…。
Kくんは真っ赤になって固まっていたけれど、次の瞬間、俺のほうが固まりそうになった。
びっくりした心と、Kくんの手のあたっている部分が。


「あ…、はい…。」

そう、なんと!!Kくんが、俺の男の一世一代の申し出を受け入れてくれたからだ。










「最初は変わった人だなって思ってたんです、よく一人で喋ってましたよね。」

げ…、俺、なんか変な人だと思われてた…!!
超ショックかも。
数分して、Kくんと俺は、コインランドリーの椅子に座りながら、 落ち着いて話をし始めた。


「よく見るとその表情が面白くて、気になり始めてその…、好きになりました。」

うっはぁ〜、照れてる顔もまた可愛い〜ん。
好きになりました、なんて、なんてストレートな表現なんだろう。
そういう顔に幼さが残っていて、なんだかこうムラムラするというか…。


「あの、ところで、この間言ってたけい?ってなんですか?」
「あっ、そ、それはそのー、きみの仮の名前というか…。コインランドリーでK。」
「あの、すいません、コインランドリーなら…、Cだと思います…。」
「ええっ!マジで?!じゃ、じゃあラバーズは…仮の恋人で…Rだよねっ?」
「ラバーズなら…Lだと思いますけど…。」

が、がぁ────ん…。
確かに俺、小学校も中学校も高校も勉強は苦手で…。
テストとかの順位は下から数えるどころかほとんど下から一番だったよ。
英語もアルファベット全部言えるかわかんないよ。
だけどずっと、Rはさっきだけど、間違えてたなんて!!
あぁー、Kくん(まだ呼んでるし)にバカだと思われた…、俺、超ショックかも!


「あ、いや、でも人間誰でも間違いはありますし…。」
「そうだよね!で?本名は?俺、篤紘、あっくんでいいよーん♪」
「あっくん…ですか…。えっと、まさずみって言います、聖書の聖に、純度の純って書く…。」
「ええぇっ!!」

ななな…なんつー清潔感漂う名前!!
後ろに光が見えるぞ!
つかなんかそれってエッチできない?!
なんだかこう、汚しちゃいけないようなヤっちゃいけないような…。
どどど、どうしよ〜!!


「どうかしました?」
「いやあの…、ううぅぅ〜!!」
「名字は清原です、あの、篤紘さんは…。」
「清原!!!ぎゃあー!」

無理!!絶対無理!!
絶対俺、エッチできない気がするよ!!
あぁ、恋愛の神様、エッチの神様、下半身大明神様ぁ!!
俺は、俺は一体どうしたらいいんでしょうか…。
俺の人生、最大の危機に、Kくん、いや、聖純くんは、 震える俺を心配そうに覗き込んでいた。







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