「薔薇色☆お姫様」-7








「たっだいま帰りましたぁ〜♪」

リゼ、喜ぶかな。 喜ぶよね。
それできっとリゼの方から、僕を誘って来て、今夜は寝ないで朝までえっち!!
ふふふ。 楽しみだなぁ…。
僕は、箱を抱えながら、お城に戻ると、足取りも軽く、僕たちの部屋へと向かった。


「王子?」
「なぁに?僕今急いでるんだけど。」

廊下で、ファボルトに呼び止められた。
もう、ファボルトってばいっつも邪魔するんだから。
リゼが待ってるじゃないか。
僕は膨れながら、仕方なく返事をした。


「あ…の、リゼ殿は?」

珍しいな。
あのファボルトが弱々しく尋ねて来るなんて。


「え?何言ってるの?これからリゼのとこ行くの。邪魔しないでよ?」
「リゼ殿と…‥、一緒、ではなかったのですか?」
「え??」

ホントに何言ってるんだろう、ファボルトってば。
お酒でも飲んで酔っ払ってるのかな。
熱でもあるとか。


「リゼ殿は王子を迎えに行くとおっしゃって…‥ああぁぁっっ!!」
「わぁっ!!な、何!びっくりするよ、そんな叫ばないでよっ!」

鼓膜が破れそうなぐらい大きな声で叫ばれて、ファボルトの顔を見ると、真っ青だった。


「騙されました…‥。」

ファボルトは深い溜め息をついて、がっくりとうなだれた。


「このファボルト、我が人生に於いて大きなミスを犯しました。どうか…、どうか死刑に…!」
「えっ?えっ?何?なんで泣いてるの?」
「お願い致します、王子のその手で…!」

泣きながらどこからか刀物まで差し出して纏わり付いてくるファボルトを、僕はわけがわからずに、目を白黒させた。


「リゼ殿が…、王子の姫が…、さらわれました…っ、
申し訳ござ、ませっ、このファボルト、自らの命を以て償いを…!」
「わーっ!!ちょ、ちょっと待って!」

しゃくり上げながら、自分の身体に刃先まで宛てているファボルトを必死で止める。


「ちゃんと説明してよ!リゼがさらわれたって何?」
「ロザ殿に…‥、リゼ殿が…、王子が、迎えに…。」
「あーもう!全然わからないよ!落ち着いてってば。」

震えるファボルトの肩を掴んで、訳を聞く。
まだ泣き続けるファボルトをなんとか落ち着かせないことには話がわからないじゃないか。
あ、そうだ。


「ファボルト、それでも僕のお付きの者なの?王族ファルベ家に仕えて来たんでしょ?」
「お、王子…。」
「僕はファボルトを心から信頼してるよ?」
「申し訳ありません。私としたことが取り乱してしまいました。きちんとご説明致します。」

やっぱりね。 ファボルトにはこの方法が効くんだよね。
心から…っていうのはちょっと大袈裟かもしれないけど。
信頼してるのはホントだし。
あれ…?今なんか嫌な名前が出たような…。





「ええぇっ!!」

落ち着きを取り戻したファボルトが、事件(?)の内容を簡単に説明して、
僕は心臓が止まりそうになってしまった。


「バカー!!何やってんの!ファボルトはだからダメなんだよ!」
「先程は認めて下さったのに…いや、それは今は…。」

よーし。 こうなったら!


「今すぐ軍隊の準備して!戦争する!!」

許せない…。
ロザは大事な従弟だけど、僕の一番大事なリゼを奪おうなんて。


「あとテレビ局と警察に連絡して!誘拐事件で公開捜査にしなきゃ!リゼが!どうしよう!!」
「王子っ、落ち着いて下さい!王子っ!」

今度は僕をファボルトが押さえた。
だって…。 だって僕のリゼが。
まだ正式に夫婦にも……‥‥やめろロシュ、考えるな。


「う…‥っ。」

涙が僕の瞳から溢れて頬を流れた。
どうしよう…。 どうしよう…‥! リゼ…‥!!
僕が混乱していたその時、すぐ近くにあった電話が鳴った。

『お前の姫は預かった。返して欲しければお前一人でこちらに来い。いいか、サツに通報なんかしてみろ。姫の身体はないと思え。』

機械的に変声されてそれだけ告げると、一方的に電話は切られた。
これ…、日本のテレビでやってたやつだ。
落ち着け。 落ち着くんだ、ロシュ。


「ファボルト、僕行ってくる。」
「少々お待ち下さい。今警察に…。」

小型の電話機のボタンを押しているファボルトの手を止めた。


「いい。リゼは僕のヒメだもん。僕が助けに行く。」
「王子…。」
「じゃ、行ってきます。」

僕は笑顔で手を振って、一度部屋に急いで戻ってから、お城を後にした。


「王子…ご立派です…。さすがは次期国王になる者、心得ていらっしゃって私は…私は…‥(略)」

ファボルトがなんかブツブツ言ってたみたいだけど、耳も向けないで、ひたすら走った。
リゼ、僕のヒメ、今、助けに行くからね…!!









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