「薔薇色☆王子様」-7







リゼの家。


「リゼー、死んじゃやだぁー。」


どうしよう、どうしよう。
僕のリゼが。 まだ式も挙げてないのに。
新婚旅行も行ってない。 初夜だって…。
バカロシュ! こんな時にそんなこと考えちゃダメだ!


「おい…何ヘラヘラ笑ってんだよ…。」

え?バレた? …って、


「リゼ───っ!!」
「バカっ、くっつくな!」

よかった。
よかった、僕のリゼが無事で。
神様ありがとう!


「ファボルト!リゼが生き返ったよ!」
「死んでねーよ…。」

僕は大喜びで台所にいるファボルトを呼びに行った。


「おぉ!それはようございましたね。」

あれ? なんか、いい匂いと湯気が…。


「ファボルト…何やってるの?」

何、ファボルトってば、エプロンなんかしちゃって。
に、似合わないし…。


「風邪の時に日本で食べられているおかゆ、というものを作っておりました。」

む…‥。
ファボルトのやつ、また点数稼ぎして。
しかもその格好ったらまるで…。


「ダメー!僕がやるー、リゼの奥さんは僕なの!」

僕はファボルトを引っ張って、台所から退かす。


「何をおっしゃってるんですかっ、第一、王子は料理なんかなさったことないでしょう!」

うっ…‥。 そうだ、僕、料理なんか一度も…。
いや、負けてたまるか!


「ダメなの!リゼは大事な僕のお嫁さんなんだから、僕にやらせてよー。」
「王子っ、あなたとリゼ殿は一体どちらが奥様なんですか。おっしゃってることがバラバラですよ。」
「いいから貸してってば!」

僕とファボルトはなんだかこう、おっきいスプーン?みたいなのを取り合った。
ピンポーン…。


「おや?ナツ殿でしょうかな。」

ナツ…?
ファボルトが玄関に行ってしまう。
よし、今のうち…。
僕はその、おかゆ、なるものを掻き混ぜる。


「よくいらっしゃいました、ナツ殿。」

え…‥。
日本の、女の子…?
なんか、可愛いかも。
あれ? なんとなく…。


「あの、で、お兄ちゃんの具合は…?」

リゼの妹──?!
似てるかも。 強くて大きい瞳とか、漆黒の髪とか。
うわぁ、この子が僕の将来の妹になるんだ。
ロシュお兄様、なんて呼ばれるのかなぁ。


「あのー、鍋が…。」
「えっ?うわー!」

鍋が見事に噴いてしまった。
どうしよう、おかゆ…。


「あなたが、ロシュ王子?」
「はいっ、僕がロシュですっ、リゼの婚約者の!」

僕とナツは握手をした。
これで家族公認?


「那〜都〜…、なんでいるんだよ。」
「やだ、お兄ちゃん、生きてたの?ファボルトさんが知らせてくれたの。」

ナツはリゼの元へと寄った。
その手に林檎やら何やら果物を袋から出し始めた。


「ファボルト、なんで那都のこと知ってんだ?」
「王子のご家族になる方ですからね。調べ済みですよ。」

またファボルトのやつ!ポイント上げたな。
僕の立場考えてよ。


「じゃ、あたし、剥いてくる。台所、借りるね。」
「僕もやる!」

僕はナツについていく。
鍋も、片付けなきゃいけないし、ね。


「よかった、お兄ちゃん、無事で。」
「あー、うん、そうだね。」

僕は鍋の中身を三角の網に入れて、水に浸した。


「あのさ、お父さんとお母さんには、言ったの?」

ナツの表情が少し暗くなる。
林檎の皮を剥きながら、ナツは笑った。


「うち、両親いないのよ。小さい頃、事故で…ね。」
「え…し、知らなかった…‥。」

リゼ、なんにも言ってくれないから。


「お兄ちゃん、弱いとこ見せるの嫌いだから。」

鼻歌を歌いながらナツが剥いた林檎を水に入れた。


「あなたたち、随分打ち解けてるみたいで、嬉しい。」

ハイ、と林檎を手渡され、口に運ぶ。


「お兄ちゃん、結構人嫌いっていうか…一緒に住んでるのとか、びっくりしちゃった。」
「そ、そうなの?」

人嫌い。 リゼ…そうなんだ。


「でもあたし、あなた見て納得した。だってさ、幸せオーラ?みたいの出てるんだもん。」
「幸せ…オーラ…?」

僕は林檎を噛りながら、ナツを見つめた。


「うん、なんか、なんだろ、人を幸せにするオーラが出てる。」

幸せに、する…。
幸せに、したい。 リゼを。


「えへへ、ナツ、いい人だねー…。」
「お兄ちゃんを、よろしくね。」

ナツは笑って、また僕と握手をした。
可愛くて、いいコだなぁ。
さすがリゼの妹。
あ、でもやっぱりリゼの方が可愛いけど。


「もちろん。リゼは僕が幸せにするから、任せて、ナツ。」
「頼もしいわね、ロシュ王子。」

わー! 嬉しい、嬉しい。
頼りにされちゃった。
こうなったら、何がなんでもリゼと結婚する。
あんな日本人なんかに負けてたまるか。
僕は決意新たに、リゼとの恋を成就させることにした。









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