「薔薇色☆王子様」-5








次の日の朝。


「リゼー、どこ行くの?」

リゼはなんだか本とかノートとかをいっぱい鞄に詰め込んで、家を出た。
僕も(ついでにファボルトも)追い掛ける。


「あ?学校だよ。」
「王子、リゼ殿は専門学校という所で音楽の勉強をしてらっしゃるのですよ。」
「へぇ…。」

音楽かぁ。 なんか、楽しそうだなぁ。


「なんであんた知ってんの。」

リゼは怪訝そうにファボルトを見ている。


「誠に勝手ながら調べさせて頂きました。王子の花嫁のことですから。」
「だから嫁にはならねぇって!…あ、やべ、遅刻する!走れ!」

リゼは小さな身体で思い切り走って行く。
僕はついて行けないよ。
走ったのなんて、僕の記憶にないよ。


「ま、待ってリゼぇー…。」









「体力ねぇなあ、お前。」
「だ、だって…。」
「王子、情けないですよ。」

僕はもう喋ることも出来ないぐらい息が乱れていた。
ファボルトのやつ、涼しい顔しちゃってさ。


「私は学生時代陸上をやっておりましたから。」
「すげーなあんた、おっさんのクセに。」

あ…。 またファボルトの味方して。
なんかなぁ…。
僕、カッコ悪いなぁ。
ちゃんと、好きになってくれるかなぁ…。


「おー、璃瀬!おはよーっす。」
「おう。おはよう。」
「なぁなぁ、一葉見なかった?」

あ、なんか、カッコいい日本人…。
リゼはこういうタイプとか好きだったりして…。
いかにも元気そうな、男らしそうな…。


「お前は口を開けば一葉、一葉って…。」

あ…れ…‥?
リゼの顔、ヘン…?
困ったような、寂しそうな。


「だって俺、一葉ラブだもーん。まぁ、本人は俺ラブじゃねぇけどな。」
「ハハ…、まぁ、頑張れ。」

リゼはその日本人の肩を叩いて笑っている。
笑ってるけど…なんかさ。


「当たり前よ。そう簡単に諦めねぇよ。んじゃなっ。」
「あぁ…。」

もしかして…さ…。


「リゼはあの日本人が好きなんだ…。」

手を振っているリゼに呟いた。


「え?な、何言ってん…!!」

リゼの顔が、真っ赤になっている。
言葉も続いてない。


「好きなんだ?」
「……‥‥。」

こんな弱そうなリゼ、初めて見た。
あの日本人が、そうさせてるんだ。
なんだか、悔しい。


「でも、あいつは友達としか思ってないから…。い、言うなよ?」
「言わないよー。」

でも、こんな顔より、僕は笑った顔の方が好きだよ。
僕なら、リゼを笑わせてあげられる自信あるのにな。


「なんかお前、オープン過ぎるから、どうだかな。」
「ひどい!信じてよー。」

あ、いつもの、リゼだ。
でも、僕の心はちょっと痛いよ。
リゼも、片思いなんだ、と思うとね。


「あんたもな、ファボルト。」
「承知しております。」

僕の後ろにいたファボルトも気付いたみたいだ。
っていうか…、ちょっと待って!


「ねぇ、リゼ、今さ、ファボルト、って呼んだ?」
「は?ファボルトはファボルトじゃん。」

違う! いや、違わないけど。
そうじゃなくってさ…。


「どうして僕よりファボルトの方を先に名前で呼ぶの?僕、婚約者なのにー!」

ひどいよひどいよ。
そんなにファボルトの方がいいの?
いや、いいのはファボルトよりさっきの日本人で…‥てことは僕、3位?!
あ、有り得ない!!


「だから、婚約はしてねぇだろ?」
「でもさ、僕のことも名前で呼んで欲しい…。」

僕はリゼの袖を掴んだ。


「あー、ハイハイ、わかったよ、ロシュ。」

あぁ…。 どうしよう、嬉しい。
僕、今、空飛んでるかもしれない。


「リゼー!嬉しい!ありがとう、愛してる〜。」
「バカ!やめろっ!言っとくけど、婚約したわけじゃねぇからな。」

僕はリゼに抱き付いて、ほっぺにキスを繰り返す。
リゼは怒ってるけど、その顔も好きなんだよね。
やっぱりリゼは、元気のある顔が似合う。
それでこそ僕のヒメ…。
フフフ…、あの日本人にはこんな顔させることは出来ないだろうね。
負けてたまるか。
あんな、リゼを悲しませるような日本人になんか、リゼはやらない。
婚約まで漕ぎ付けるのは、この僕。


「おい、何笑ってんだ。授業始まるから行くぞ。」
「はいはーい。」

楽しみだなぁ。 授業も、リゼとの恋も。






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