「Love Master.」-中級編








「ん…っ、名取…‥。」

俺と遠野は今日も日課のようにキスを繰り返す。


「は…っ、ぁ…っ。」

ハッキリ言って俺は遠野のことを同室で、一応友達、ぐらいにしか思っていなかった。
そう、いなかった…過去形になりつつあるのだ。


『俺たち、ホモだから。』


クラス全員が見ている中、公言してしまった。
俺だって、最初から男が好きなわけじゃない。
突然遠野にホモにしてくれ、なんて言われたからだ。
そして遠野とキスした時、その色っぽさとか、エロさにやら れた、というか…。


「遠野…ダ、ダメか?」

俺は遠野の私服の中に手を伸ばす。
そう、俺たち、まだキス止まりなんだよ。
……あれから一ヵ月も経つの に!!


「なんで?」
「なんでと言われるとな…。」

そりゃああれだ、なんつーか、俺もちょっとはお前のことを…。
あれ?俺は、遠野が好き??


「いやっ、ほら、そのー、ホモというからにはデキてるわけで、それがキスだけってのも味気ないっつーか …。」

吃り過ぎだ、俺。
何わけわかんないこと並べてんだよ。


「それもそうだな…。」

おっ、これはもしかして…OKか?OKなんだな?
俺は遠野の胸の突起を探った。


「で、何をするんだ?」
「は?」
「具体的に、どういう風に、どこをどうするのか、教えてくれ。」

探る俺の手の動きは止まる。
なんだそれは。
もしかして、わからないのか?
いや、でも俺も童貞だけど、エロ本ぐらい読んで大体は…。


「する前に説明してもらわないと、困る。」
「え?何が困るんだ?」
「お前が触って、その触り方によって声を出さなければならないだろう。」
「あ…それはだな…。」

遠野は難しい顔をして考え込んでいる。
やっぱりわけわかんない奴だな、こいつは。
そんなん普通言うか?


「そういうのは、流れっつーか、自然でいいと思うんだけど…試しにちょっとだけ…。」
「ダメだ。説明してくれ。じゃなきゃ触るな。」

俺はまた手を動かした。
しかしその手を遠野に止められた。
おい…マジかよ。
頭のいい奴ってこれだからわかんねんだよ。


「あー…、だから、まず、乳首を弄るから…。」

わー!何言わせるんだよ!


「それは何を使ってだ?」
「あ…っと、ゆ、指とか…、し、舌とか?」

恥ずかしいぞ。
行動するより恥ずかしいって、これ。


「それで多分、その、お前は感じてその、なんだ、勃起すると思うから…。」

なんで俺が勃起、とか言わなきゃなんねんだ。


「したら?」
「し、したら…。」

くっそ、拷問だぞこれ。
俺にそれを言えと。


「それを俺が手とかで扱きまして、し、射精を促すわけでして…。」

いかん、日本語がおかしい!


「だから遠野は俺に任せて下さいませ!」
「よし、わかった。」

完璧に壊れてきた。
どこの店の店員だ、俺は。
しかし遠野は、強く決意したように頷いた。


「わかったって?」
「お前のしたいことはわかった。早くやるぞ。」

嘘だろ?!何言ってんだ。
俺があたふたしていると遠野は俺の腕を引っ張って、ベッドへとダイブした。


「い…いいのか?」
「いつでも来い。」

今から喧嘩するわけじゃないんだからその言い方はやめてくれよ。
もっとこう、ムードとかよ。


「あ、じゃあ、電気消して…。」
「電気は点けたままだ。」
「ちゃんと見ておきたいから。次回の参考にする。」

いや、そりゃいくらなんでも恥ずかしいだろ。
参考ってなぁ…。
もういい、やってやる。
俺はヤケクソ気味に遠野の服を捲り、さっき言った通り、突起を 指の腹で撫でた。


「…‥ん、あ…。」

何度も撫でると、そこは赤く腫れてくる。
そしてまた言った通り、舐めてみた。
濡れた音がイヤらしく耳を刺激する。


「あぁ…っ、んっ。」
「遠野…こっち見るぞ。」

遠野の喘ぐ声もまたイヤらしい。
俺はジッパーを下げて、多分勃っているだろうそこを露にした。


「やっぱり…勃起してるぜ。」
「んっ、名取…っ。」

染み出た先走りを絡めて、性器全体を愛撫する。


「あっ、あ…。」

ちょ、ちょっと舐めてみたりして…。
俺は口でするのを試してみようと、遠野の股間へと頭を持っていく。
するとイキナリ肩を掴まれた。


「な、舐める気か?」
「えっ?ダメなのか?」

俺は驚いて顔を上げる。
なんだなんだ、エッチの時ってよくこういうことするんじゃないのか?


「まだ風呂に入っていない!ちょっと待っててくれ。」

遠野はそのままバスルームへと走って消えた。

「え…あ…??」


俺、放心。
普通途中でそりゃないだろ。
盛り上がってんのに。萎えるだろ。
しかし遠野は本当に風呂に入って来て、裸のまま俺の前にまた現れた。


「ちゃんと洗って来たから、大丈夫だ。」
「はは…そりゃどうも…。」

もう俺は笑うしかなくて、もう一度ベッドに横になった遠野のそれを口に含んだ。


「あ…‥っ!あっ。」

口の中を唾液をたっぷりと絡ませながら、出し入れをすると、また勃ち始める。


「や…ぁ、ん…っ。」

ちくしょう、なんて声出してんだよ。
しかもその顔。ヤバいだろ。エロ過ぎるって。


「ん…っ、名取っ、口から出せ…っ!」
「え、なん…‥!!」

口から出した途端に、俺の顔目がけて遠野は白濁を放った。


「だから言っただろう、顔射なんてしたくなかったのに。すまん。」
「いや、別に…いいけど…。」

俺は顔に付いたそれを掌で拭った。
遠野は近くに置いておいたティッシュで自分のそこを綺麗に拭き取った 。


「じゃ、そういうわけだから。」


え───。


「お前も早く寝た方がいいぞ。」

いや、そうじゃなくて。


「と、と、遠野っ??」
「じゃあ、おやすみ。」


俺!俺はどうなるんだーー!!


途方に暮れながら、俺は遠野が寝ている横で、自分で処理した。
こんなのってありか?情けねーよ。













「名取ー、なぁなぁ。」
「お前遠野とホモなんだろ?もうヤったのか?」
「や…それは誤解で…。」

次の日の休み時間、クラスの奴が話し掛けて来た。
その話の内容に、俺は笑って誤魔化す。


「そうだ、誤解だ。」

後ろから、遠野が割り込んで来た。
頼む!変なことは言うなよ。
俺は目を瞑って祈った。


「やったのは名取で、俺はまだやってない。」
「何をやってもらったんだ?」

あぁ…‥。
俺の祈り、通じず。
興味津々にクラスの奴らは遠野に問い詰める。


「手とか口で、色々してもらっただけだ。」

もうダメだ!
俺、ホモ確実!決定。


「昨日は名取に見本を見せてもらったから、今度は俺がやる予定だ。」

やめてくれー!宣言するなー!


「そ、そうか…が、頑張れよ…いやー羨ましいなぁ、名取が。」

嘘つけ!んなわけねぇだろ!
でも…そうか、してもらえんのか、俺。
あれ?俺は何を喜んでるんだ。


「名取、楽しみにしてろよ。今夜。」

今夜?今夜ですかぁー?!
ど、どうしよう、夜が楽しみになってきたぞ!


「お前にそういうことするのは、俺だけにしとけよ?」
「え…それって…。」

遠野は耳許で小さく囁いた。
それってやっぱり、俺のこと…。


「じゃあな。」

微かに笑った遠野の後ろ姿を見ていた。
俺は、好きだって言ってもらいたい?
それはつまり俺もあいつが…‥‥いかんいかん!
これじゃ遠野の思い通りじゃねーか!
でも、それも悪くないな、とか思う俺は、既にあいつの思い通りなのかもしれない。










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