パーティーが終わって、俺達は泊まる部屋へ向かった。
もともとこのホテルも、遠野の家がやってるんだけど。
「と、遠野っ!」
「あぁ、どうした名取。」
「いや、ほら、今日はクリスマスだろっ?!」
「それがどうかしたのか?」
だけど実際はこれだもんなぁ…。
顔色一つ変えずに、どうかしたって…そりゃないだろ。
もうちょっと頬なんか染めて「ロマンチックだな、名取☆」ぐらい言えないのかよ…。
そしたらもっと盛り上がっていいだろ!
「ホワイトクリスマスだしな!」
「もう止んでるけど。」
「うっ…!」
自信満々に、指差した窓の外はすっかり雪が止んでしまっていた。
あぁ、今の俺、なんて情けないんだ…!!
もうちょっと強引にいってみるか?
「遠野、好きだ…っ。」
「どうしたんだ急に。酔っ払ってるのか?」
「だあぁーー!!そうじゃなくて!!!」
「そう興奮するな、名取。まずはゆっくり寝て明日…。」
そ、それは困る!!
明日になったらイブじゃないんだぞ!当たり前だけど。
せっかくこんな豪勢なホテルに泊まって、しかもイブだっていうのに、このまま何もしないで帰れるか───…!!
俺は、もう理性が飛ぶどころか飛んで消えるぐらいの勢いで、遠野を押し倒した。
「名取…っ、んんっ!」
強引に唇を重ねて、口内に舌を滑り込ませる。
やればできるな、俺。
いつもと違う俺に、遠野もメロメロに…!!
「名取、それはダメだ。」
「なんでだよっ!イブだぜ?ヤらないで帰ってどうするんだよ!」
「その理由はどうかと思うが…まぁ置いておいて。いいのか?」
「?何がだよ??」
それは俺も思ったけどな。
別にイブだからって必ずヤるって法律があるわけじゃないし…。
でもそうじゃないだろ…。
そんな情熱的な俺とは正反対に、遠野は冷静なままだ。
「俺は8時間は寝るぞ。」
「う…それがあったか…くそー…。」
でもやめたくない。
こういう場合はどうすればいいんだ。
みんなの前で、昨日ヤりました、とバラすか。
それとも遠野目の前にして我慢するか。
どっちだ…、社会を取るか、自分を取るか。
「じゃあな、おやす……、名取…っ!」
「ダメだー!!頼む!!ヤらせてくれっ!!遠野様ぁ!!」
そういえばもう理性なんかなかったんだ。
そう思うと、後のことなんかどうでもよくなって、そのまま遠野に覆い被さった。
「…はぁっ、名取…っ。」
何度もキスをして、裸になった遠野に触れる。
胸の先端や下半身に至るまでを丁寧に愛撫した。
同じく裸になった俺の下半身も、異常なぐらい反応してしまっていて、早く遠野の中に入りたかった。
なんだか今夜の遠野はやけに素直に俺にさせてくれる。
いつもっは俺が入れるだのなんだのって、それまでに時間がかかる。
昨日もそのパターンで、だから余計朝までヤってしまったんだ。
「名取…っ、…むい…っ、ダメだ…っ!」
「もうダメか…?でも俺もだ遠野…もう入れ…、ん??」
「ねむい…っ、もうダメだ……。」
「と、遠野っ?!」
ああぁ────っ!!
う、嘘だろ?!
こ、こいつ、寝やがった!!
エッチの最中に!!
こんなんで下半身が眠れるわけがない、と思って布団をめくって見てみると、ちゃんとそこは治まって普通サイズになっていた。
萎えたっていうのか、どうにかして鎮めたっていうのか…。
なんて器用な真似できるんだ…。
ホ、ホントに変な奴だ…、前から知ってるけど…。
そんなこんなで、仕方なく俺は遠野が眠る横で自分で処理をして眠った。
俺、ホントにこんなんでラブラブなのかよ…。
***
「…り、名取。」
「…ん…、もうちょっと…。」
「ダメだ、起きろ。」
「…いでででで!!」
思い切り頬をつねられて、目を覚ます。
そこには素っ裸の遠野が正座していた。
な、なんだなんだ…??
「昨日はすまない、じゃあするぞ。」
「は??何を??」
「セックスに決まっている。途中だったから。」
「は?待て待てっ、そんなバカな…っ!」
エッチって途中でやめて再開できるのかよ!!
いや、こいつなら有り得るよな…。
今までもそういう感じのはあったし…。
「じゃあ名取、尻の力を抜くんだ。ほら。」
「バ、バカっ!何するんだよっ!」
着ていた服をあっという間に全部剥ぎ取られ、俺の脚が天井に向かって持ち上げられる。
起きてからまだ1分も経ってないこの短い間に一体どうなってるんだよ…。
「大丈夫だ、俺がちゃんと解してやるから。」
「ま、待てよ!だって昨日は俺が入れる役じゃなかったのかっ?」
「そんなことは認めていない。」
「認めるとかいう問題じゃね…、あっバカやめろって!昨日は色々させてくれただろっ?!」
あんなに素直に俺に応えてたじゃないか。
まぁ途中で寝たけどな。
ピタリと動きが止まった遠野の目が真剣で、物凄い嫌な予感がした。
「あぁ、あれは眠かったからだ。」
そうだよな、そういうこと言うと思ったよ、うん。
でも俺、まだ後ろは無理だ!!
つーか夫も譲りたくないし!
今までどれだけ死守してきたと思って…。
そんな慌てる俺をよそに、遠野は実に楽しそうだ。
滅多に出ない俺にだけわかる笑顔が、その楽しさを物語っている。
「名取、好きだ、もう観念してくれ。」
「い、嫌だ!嫌だ───っ、やめろ遠野─────…っ!!」
きっと、ずっとこの先も、俺と遠野はこんなんだろうな…。
それでもいいんだ、誰も思ってくれなくても、俺はこれをラブラブだと思っているから。
END.