「さっきので?」
「そうだ…。」
帯を解き、何も着けていない状態になった私の下半身は、先程の行為でだらしなく変化してしまっていた。
私は膝立ちのまま、洋平は私よりも低い位置で食い入る様に見つめている。
其処を緩やかに洋平の手が擦り始めると、直ぐに完全に上向きになる。
淫らな身体だと自分でも思う。
だが、此れは仕方のないことだ。
それ程までに洋平を愛して堪らぬのだ。
「…あっ、あぁ……っ。」
速度を上げた洋平の動きに合わせるかのように腰元が揺れる。
たとえ厭らしいと思われようが、どうでもよかったのだ。
洋平を感じることが、私の今の使命であり、私の願望なのだから。
暫く其処を弄られた後、濡れた指が後ろへと移動した。
何度も其処で洋平と繋がっているというのに、其処を弄られること自体はやはり慣れることはない。
「くぅ……っ。」
「痛い?ごめん。」
「謝るな…っ、よいから…っ。」
「うん、わかってる。」
淫猥な音をたてながら、何度か出し入れすると、私の其処は嬉しそうに洋平の指を咥え込んでいる。
同時に前の方も口で愛撫されて、あまりの快感に意識が飛んでしまいそうになる。
汗で濡れた洋平の髪を強く掴んだ。
「入れていい?」
床に伏して、耳元で確認の言葉を囁かれ、無言で首を縦に振った。
上から洋平が覆い被さり、ぴたりと肌を付け、弄られていた箇所に洋平自身が当てがわれる。
息を飲んで、その瞬間を待つ。
「…────あぁっ!!」
あまりの圧迫感に、心臓が止まりそうだ。
洋平の息遣いが、耳元ではっきりと聞こえる度に、また意識が飛びそうになる。
目の前が真っ白になり、金属が飛び散るような幻想まで見えた。
「銀…っ、いい…っ?気持ちいい…っ?」
「あ…、あ…っ、ああ…っ!」
言葉を口にすることなど不可能だった。
涙が面白いぐらいに畳に零れ落ちて、次々に染みを作る。
身体が熱く、痙攣でも起こした様な感覚だ。
「銀、ダメ、爪立てるなよ。」
激しさに耐えられず、全身を支えるように畳に爪が食い込んでいた。
痛んだ指を洋平が上から外し、音を鳴らして吸う。
一度洋平が私の体内から抜かれ、身体を半回転させられた後、再び洋平自身が挿入された。
「あ…はぁ…っっ!」
「立てるなら俺に立てろ…っ。」
洋平の背中に腕を回された。
それは駄目だとわかっていても、耐え切れずに背中に爪を立ててしまう。
洋平に傷が付くことが、私の物だという証であるかの様に。
「洋平…っ、好きだ…っ、愛しているっ、好きで堪らぬ…っ。」
「俺も好きだっ、銀華…、銀…っ、愛してる…っ。」
言えばいいというものでもないのに、愛の言葉を繰り返しながら、揺さ振られて絶頂へと駆け昇る。
洋平の額から汗が雫となってぽたりぽたりと私の顔に降って来る。
「イきそ…っ、いい…っ?」
「洋平っ、あっ!ああぁっ、ぅああ────っ!!」
殆ど同時に、熱を放出した。
暫く洋平に掴まって、その激しさに酔う。
「ごめん、ちょっと無理させた。」
「…なことは…い…っ、洋平…、…りぬ…。」
「何?聞こえない…。」
「…まだ、足りぬ……っ!」
何処まで私は欲深なのだ。
狂おしい程、私はこの人間を愛して止まないのだ。
馬鹿だとは思う。
だが止まらぬものは無理なのだ。
洋平もそう思ってくれていると信じたい。
私達は、その後も、幾度に渡り、それこそ意識が無くなるまで繋がった。
***
肌の温もりで、目が覚めた。
直に触れるその肌は、未だ熱を帯びている様な感じだ。
昨晩の遅くに再び振り出した雪は上がり、燦々と太陽が照っている。
明るくなってみると、何故だか昨日の行為が、恐ろしい程恥ずかしい。
私は一体何をしているのだ…。
盛りのついた猫でも有るまい。
「…銀……?」
僅かに掠れた声が私の名を呼ぶ。
深い羞恥心と罪悪感に襲われ、思わず布団に顔を埋めた。
「おはよう。」
「あぁ…。」
「何?どうした?なんで布団被ってんの?」
「お前は…恥ずかしくないのか…、あの様な…。」
それとも昨晩の事は私が見た幻だったとでも言うのか。
馬鹿馬鹿しい考えまで浮かんでしまう。
「まぁちょっとは…。って言うかさ、だったら昨日みたくいちゃいちゃしようぜー?」
「お前は何を馬鹿なことを…!」
「そう?俺、人並みに…、もしかしたら人以上に我儘だけど。」
「……っ…。」
そのような台詞は自信満々に言うことではないだろう。
参ってしまった私は何も言えなくなるではないか。
お前が言うなら叶えてやろうと思ってしまうではないか。
「…あ。よかった外れてない。」
ふと握られたままの手を、洋平が探った。
固いくて少しだけひんやりとした物体が、私にも感じられる。
「うん、やっぱり似合う。」
「寸法は…、間違っていたがな…。」
「それは言うなよー…。」
「…ふ……。」
困ったように笑って、頬を膨らます洋平は、何時もより幼く見える。
その表情が可笑しくて、もっと見ていたいような気分で、気付かれないように私も笑った。
拗ねて背中を向けたそこには、私が残した深く強い印がある。
何とも言えぬ様な幸福感に浸りながら、放たれた手を光の方へ翳した。
「今度直しに行こうな。」
反射した指輪が、背中の傷に負けない位、一瞬強く煌いた。
END.