「ただいま~!」
誰もいない家に、夕方前に帰った。
今日は、亮平は夜遅くまで仕事なんだ。
誰か風邪ひいちゃって、来れなくなった代わりに働くらしい。
亮平はそういうところが優しいし、真面目だと思う。
そういう不満がある時も絶対口にしないし、オレ、そういうとこすっごい好きなんだよな~。
暫くして、お菓子を食べていた俺は、郵便が来る時間を過ぎていたことに気付いた。
いつも郵便物を持ってくるのは俺の仕事。
隣に住んでるシマもやってるって言ってた。
走って1階の郵便ポストのところまで行った。
今日は何が来てるかな…、電気代とかかなぁ…。
どうせオレに手紙なんて来ないだろうけど。
だってオレ、元は猫だったから、知り合いなんていないし。
「…あれっ。」
オレ宛てに、手紙…?!
漢字はまだ書けないけど、読むだけならだいぶできるようになった。
『藤代シロ様』
住所ってやつの下に書かれたオレの名前。
藤代っていうのは、亮平の名字ってやつだ。
オレ、亮平と同じ名字になってる…。
「へへっ…、オレ、亮平の奥さんみたい。」
誰だろ~?
なんだか派手な薔薇の柄の封筒で…。
裏に書いてある人の名前は、英語?とかそういう外国の字で読めない。
よしっ、早く部屋に帰って開けてみよう!
急いでそれを持って、3階の部屋へと戻った。
「誰だろ~?誰かな~?」
鼻歌を歌いながら、その封筒を汚くならないように開ける。
中の紙も薔薇の柄で、一緒に綺麗に乾かした花びらも入っていた。
「おお~、いい匂い…、あっ!」
それは、オレが、花見の時に会った、外人で、時々メールとかしてる、ロシュっていう友達からだった。
☆☆☆
シロへ
やっほ~、元気?
ロシュだよ☆
あのね、僕、今度、日本に行くんだ。
もちろんリゼも一緒だよ。 ついでにファボルトもね。
そ・こ・で!!
クリスマスイブに、パーティーをやろうと思ってるんだ!
僕の友達のお父さんがやってるホテルの最上階を貸し切れることになったんだよ。
勝手に決めちゃってごめんね。
できればシロとか、お花見の時のみんなに来て欲しいな。
久し振りに会いたいんだ。
リゼも、こっちではあんまり日本人がいないから、きっと喜ぶと思う。
シロ、考えてみてくれる?
いっぱい友達呼んでやろうよ!
時:2005年12月24日
場所:Hotel grand-T 最上階紅龍の間
時間:18時より 当日は最上階は自由に使えるから、泊まって行ってね。
返事はメールでもいいよ。
また詳しいことは連絡するね。
いい返事、待ってるね☆
ロシュより
☆☆☆
「わ~ロシュだ!」
パーティーかぁ…、絶対行きたいなぁ…。
いっぱい美味しいの出るかな。
友達…、オレ、そんなにいないけど、猫神様と、洋平は花見も一緒だったし…。
「あっ、そうだシマ!シマとミズシマ!」
隣に住んでるシマとは仲良いんだ、オレ。
シマもオレのことお兄さんみたい、って言ってくれて、オレ嬉しい。
あと、シバサキも来るかなぁ…、アケミも一緒に。
それからヨシフミさんと、奥さんと…。
なんだ、オレ、こんなに知ってる人できたんだなぁ。
去年の秋は、まだ猫だったのに。
亮平の傍にいれるようになって、こんなに…。
「亮平…、早く帰って来ないかな…。」
12月24日は、クリスマス・イブと、もう一つ大事な日。
オレの大好きな、亮平の23回目の誕生日。
びっくりさせてやりたいから、前の日まで黙っていよう。
でもシマには教えて、一緒に色々考えて…。
「へへ…、楽しみ…。」
そんな楽しい想像を膨らませながら、亮平の帰ってくるのを待った。
END.