■これはWeb拍手の御礼に書いたもので、カップリングなりきり100の質問ではぐらかす洋平に対してシロと志摩が突っ込みを入れる、という話です。
ちなみに文中の「アンケート」というのは時々やっている人気投票みたいなものです。
ある日、いつものように仕事を終えて自宅に帰ると、そこにシロとその隣のシマっていうのが遊びに来ていた。
「あっ、洋平~、おかえり。」
「洋平くん!おかえりなさい!」
銀華が出迎えの挨拶をするより早くシロとシマは俺のほうを見て、
嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。
その後銀華が小さな声で挨拶を呟いて、立ち上がった。
「私は買い物に行って来るから、この二人を頼む。」
「ん?あぁ、いってらっしゃい。気をつけてな。」
わかってる、とまた小さな声で言った銀華の後ろ姿を見送って、シロとシマのほうをチラリと見る。
また銀華に子供扱いされたことに怒っているのか、二人して頬を膨らませていて、まん丸な顔が二つ並んだのを目の当たりにすると、
堪え切れなくて思わず吹き出してしまった。
だいたいいつもこんな感じで、銀華はまるで二人の親みたいだ。
「やだよ、シマが聞けよ~。」
「えー俺が聞くのー?いいのかなぁ。」
ふと気付くと、二人は並んで座ったまま、俺の顔をじーっと見ている。
あれ…俺、なんか変なこと言ったっけ?
それかなんか顔に付いてるとか…?
二人がヒソヒソ声で話しているのを横目に、荷物を置いて自分も床に座ると、そのままの体勢で二人は近付いてきた。
「はいっ、質問です!」
「な、何?どうしたシマ。」
「あの、えっと、あの…。」
「シマ、頑張れ!」
「洋平くんと猫神様の51問目からを聞かせて下さいっ!」
「…え??」
51問目って…なんだっけ…。
二人して何言ってるんだ…??
思い悩む俺とは別に、二人はまたじーっと俺を見上げている。
小さい猫が二匹いるみたいだ…おもしろいかも…。
同じように瞳を大きくして、キラキラさせて。
「猫神様今いないから教えてー?」
「そうだ、ちゃんと言わないのずるいぞ。」
「だから何が?」
「あの100の質問のやつだよー。」
「そうだ、シマの言ってるやつ。」
「…あぁ!!あれか!!」
そういやそんなことやったっけ…。
あの時は銀華が途中で何度も怒り爆発しそうになって大変だったよな…。
えっと…確か51問目からって…。
それって、あのテの質問だよな…。
いわゆる、その、夜の質問ってやつ。
「今がチャンスだもんねー、シロ。」
「そうそう、チャンスってやつだ。」
「ダメ。」
「えーーなんでーー?猫神様今いないよー?」
「買い物行ってる間に大丈夫だって。」
「ダメ、銀がいる前では言わないって言っただろ。」
俺がきっぱりと二人に断ると、二人は揃ってぶーぶー文句を言う。
子供扱いするな、なんて、無理だろ、これじゃ。
またそこが可愛いところだと思うし。
俺が言わなくてもこいつらの相手は十分過ぎろほどわかってるんだろうけど。
「今いなくても、ここは銀華の家だからダメ。」
ここには銀華がいる空気が漂っている。
今は出掛けていても、存在はあるんだ。
ここが銀華の場所だっていう、見えないけれど確かな姿がある。
「わぁ…。」
「おぉ~…。」
「何?今度はどうした?」
「さすがだねー、アンケートで毎回人気あるよねーカッコいい!」
「オレも思った。いっつも一位なんだ、洋平。」
「え…、何言ってるんだよ。」
「あ、でもー隼人のほうがカッコいいけど。」
「え~、そしたら亮平のほうがカッコいいぞ!」
そうハッキリ言わなくてもな…。
たった今俺をカッコいいって言ったクセに、すぐに自分の恋人の話になるんだから。
単純で、素直で、おもしろいよな。
銀華とはまったく逆だけど、嫌いじゃない。
「じゃあ今度猫神様に聞いてみよー?」
「そっか~、そうすればいいのか!」
「こらこら、ダメだってそれは。」
「え~!!」
「もうちょっとお前ら二人が大人になったら教えてやるから。」
また子供扱いしたー、なんて、二人揃って膨れ顔で、声まで揃えて。
大人になる=大きくなる、と信じている二人は、この時から毎日飲む牛乳の量を二倍にしたらしい。
そういう考えが子供なんだよな。
でもそういうのも嫌いじゃなくて、銀華の周りで騒いでるのを見ると俺まで楽しくなってしまう。
それは銀華が、煩いなんて言いながらも楽しそうだから。
そういう空気が今も、そして常にこの場所には漂っているから。
だから、あの質問の答えは、教えない。
ごめんな、シロ、シマ。
END.