まったくロシュのやつ…いい歳して迷子になるなんて。
だからこいつとどっか行く、とか嫌だったんだ。
見付かったからよかったものの、俺の生まれ育った日本で、他人に迷惑かけるなんてな。
ロシュが先週、花見に行きたい行きたい、ってうるさいから、俺は久々に日本に来たのだ。
邪魔されたくないから、なんてまた我儘言って、ファボルト以外は誰も付けなかった。
そのお陰で俺とファボルトは大変な目に遭ったっつーのに…。
「あ~いいお湯だった~。」
何呑気に風呂なんか入ってるんだよ!
反省っつー言葉を知らねぇのかこいつは。
「リゼ?どうしたの?リゼも入ってきなよ~。」
「あのなぁ…。」
「あ、それとも先にえっちする?」
「ふざけんなっ!お前ちょっとは反省してんのか?」
俺は怒りのあまり、大きな声を出してしまった。
だってそうだろ…あんな迷惑かけて。
あんな心配させて。
そう、心配だったんだ…。
「ごめんね…。リゼ、ごめんね。」
うっ…、な、なんて顔しやがるんだ。
そんな瞳潤ませて見つめられたら俺どうすればいいんだよ。
「リゼ、すごい心配してたんだよね、ファボルトが言ってた。」
「……余計なこと言いやがって…。」
あの時、ロシュが迷子になった時、ファボルトにまで動揺を隠せなかった。
俺はこんな人間じゃなかったのに…。
全部ロシュと会ってからだ。
こんなにいちいち態度とか表情に出るのは。
「ごめんね、僕、悪いと思ってるんだよ?」
わかってる、ロシュは悪気があってそんなことしないってこと。
それから、言葉に嘘なんかはないってことも。
その証拠に、そんな顔してんだから。
「リゼ~ごめんね…。」
「もうわかったよ、反省してんならいいんだ。」
そんなに謝られたら、俺が責めてるみたいじゃないか。
許さないって言ってる、鬼みたいだ。
そこまで俺、心狭いわけじゃねぇし。
「リゼ~愛してる~。」
「あーわかったわかった。離れろよもう。」
「だからえっちしよ♪」
「なんっでそうなるんだよ!」
俺は思わずロシュを突き飛ばした。
けど、俺よりデカい身体はそう簡単に退けるハズなんかなくて。
「…っ、ん…!」
ベッドにどさりと押し倒されて、瞬時にキスされた。
しかもまた激しいのを。
俺は逃げようとしてもがいたけど、叶わなくて、深くなるキスにクラクラと眩暈を覚えた。
「僕たちまだ日本でしてないから、初日本えっちしようよ~。」
「アホ…っ、何言って…んん!」
ああ…どうすんだよもう。
俺、なんでこいつにこんなことさせてんだ。
何言ってんだ、なんて、ホントは嫌でもないのに。
ただ俺が、同じ男にこういうことされて、感じて、喘いでるなんて、恥ずかしいんだよ。
「リゼの顔、今日の桜よりピンクで可愛い。」
「バカっ、変なこと言うな…、あっ。」
俺のシャツの中に、ロシュの手が忍び込んで、胸の突起を触られただけで、声をあげてしまう。
しかもすぐにそこは硬くなって、全身にまで快感が広がってしまった。
「んんっ、あ、ああっ。」
執拗にそこを弄られて、次々に甘い声が洩れた。
そうだ…、なんかいつもと違う…。
なんかしつこいぞ、こいつ!
動きも何もかも。
キスもいつもより濃厚だった。
「リゼ、こっちは?もう勃ってるよね?」
「あっ、やめ…っ!」
ズボンの上から、下半身の熱くなった中心を、まさぐられて、俺のそこは、余計反応してしまった。
くっそ…、そんな触り方じゃあ…。
「ちゃんと…っ、ちゃんと触れよ…っ!」
我慢出来なくなった俺は、自ら望んで、あろうことに自らロシュの手を素肌に導いた。
俺は淫乱かよ…こんなこと…。
「うん、もう濡れてるもんね、リゼの。」
「あ…っ!んん…っ!」
勃っているそれを、ロシュの手が、濡れた音をたてて、擦って、もう完全に形が変わってしまった。
俺いつからこんなエロくなったんだ…。
「リゼ、後ろ、いい?」
「いちいち聞くな…って、あっ!」
俺の脚が広げられて、高く掲げられて、その後ろ部分に、ロシュの指が挿入された。
敏感なそこは、ビクビク伸縮して、指が動く度に、また濡れた音が響く。
指の数は増えて、中を蠢く感触に、身体が震えた。
「んっ、あ、もう…っ、頼む…っ。」
「入れてもいいの?」
「早く…っ、早くしろ…っ!」
「うん、わかった。」
俺はロシュに入れて欲しくて、ロシュの腕を掴んで、強請ると、入って来る準備をした。
入口にロシュのものが添えられて、一瞬身体が大きく跳ねた。
「あ…はぁ…っ、んん…っ。」
「リゼ、可愛い。」
「いいからもう…っ。」
「愛してるよ、リゼ。」
ロシュが耳元で囁いて、俺のそこに、一気に挿入された。
「あぁ―――っ!」
「どうしよう、リゼすごいえっちな顔してる!」
「…るせ…っ、何言って…、や、そんな急にっ、あ、あぁっ!」
「僕もうダメ…っ!」
は……?何?
今入れたばっかりだぞ?
まさかもうイくっつーんじゃないよな?
「は?何っ?え……!!」
「どうしよう出ちゃった…。」
射精の瞬間、ロシュは自身を抜いたらしく、俺の身体に白濁したものが飛び散っていた。
おい…、嘘だろ…。
「このバカっ!何先に自分だけイってんだよ!」
「ごめんねリゼ~。だってさ、僕ロザからもらったジュース飲んだら…。」
「なんだそれ?」
「桜色☆花汁、っていうの…、さっきお風呂でこっそり飲んだの…。」
あんのクソバカロザ!
また変なもん人に飲ませやがって…!
「日本ではお花見の時必ず飲むって…。」
「嘘に決まってんだろ!」
「ええっ?そうなの?」
「あぁもうわかったよ、もう寝ようぜ、風呂入ってくる。」
入れる方がそんな簡単にイってどうすんだよ。
ロザの奴、帰ったら一発殴ってやる。
俺はブツブツ呟きながら、風呂場へ向かう。
その俺の腕を、ロシュが強い力で引っ張った。
「大丈夫!また元気になったから♪」
「……!!」
ロシュが自分の下半身を指差して、俺は唖然とした。
ホントになんてもん寄越したんだ…。
俺はその元気なロシュに、何度もイかせられる羽目になった。
最悪な日本初となってしまった。
***
「リゼ、おはよう、僕のヒメ…。」
「うるせぇ…、起きてる。」
「えへへ~ごめんね昨日は。」
翌朝俺は立つのもままならない程で、もう誰を恨んでいいかわからなかった。
「おはようございます、王子、リゼ殿。」
「おはようファボルト。」
「王子っ、朝からなんと破廉恥な格好を…!」
「え~、だって昨日えっちしたんだもん、裸の何が悪いの?」
俺はもう反論する気も起きないぐらい疲れていた。
あーあ、これじゃファボルトも苦労するよな。
ぐったりとベッドに横たわったまま、二人の言い争いを聞いていた。
「まったくあなたは…、いいですか、時期国王としてそのような行為は…(以下略)」
「あ~もう、朝からお説教なんていいよ~。」
「よくありません!ちゃんとお聞き下さい…(以下略)」
始まった、ファボルトの説教。
俺も傍で聞いてたけど、これがまた長いんだよな。
今の俺にとっちゃ時間稼ぎにいいけど。
なんせ日本に一泊なんてスケジュールだ。
花見はお忍びだけど、空港では記者が待ってる。
こんな状態で行けるかっての。
「え~、じゃあお父様に言って、えっちの後は裸でいるって法作ってもらおーっと。」
「アホかお前は!」
俺は布団から飛び起きた。
冗談じゃねぇつーの。
どこまで我儘なんだこのアホたれ王子は。
「リゼ殿、起きれるんですか?」
「あ…いや、それは…。」
「じゃあもう一回お花見に行こうよ~、まだ出発まで時間あるし。」
「それは勘弁してくれ…。」
「え~そうなの?」
「また来年来ればいいだろ。」
そうだ、また、日本に来ればいい。
俺は再び布団に潜った。
「ただし迷子になるなよ。変なもん飲むなよ。」
今度は日本人というファボルトの奥さんも誘って。
昨日の人達もまた一緒に。
それから那都と…ムカつくけどロザと、生まれて来るその子供と。
「うん、そうだね、また来ようリゼ。」
俺の生まれた、日本に。
また桜の咲く、この季節に。
END.