今日は銀華と初めて出掛けた。
出掛けた、と言っても、二人きり、というわけでもなく、遠出したわけでもない。
銀華は人間嫌いで、まだ俺たちの住む人間界にも慣れてない。
もっとも、銀華がこの地に住んでいたのがどれぐらいの間なのか、
100年も前のことだから、俺にわかるわけなんてないんだけど。
それでも、ここで生きていくと、俺と一緒にいてくれると、そう言ってくれたから、少しづつ慣れていってくれれば、と思った。
史朗改め、シロ、から花見に誘われたのはいい機会と思った。
俺は花屋で働いていて花が好きだったし、銀華もそうだったからだ。
俺は仕入れがあるため、毎日朝早く仕事に行く。
まぁ俺はついででついてってるだけなんだけど。
銀華が日中何をしているかは知らないけど、最近はシロがちょくちょく来ていたみたいだった。
料理の苦手なシロが、俺の兄貴のために花見の時弁当を作りたいからって、教えてやっていたようだ。
俺も料理があんまり得意な方じゃなかったけど、銀華は本を見て、簡単に上手くなってしまった。
日中もしかして、それやってたりすんのかな…。
今日の弁当も美味かった。
シロの卵焼きは…かなり甘かったけど。
まるで兄貴とシロそのものみたいだった。
俺はそれが実は羨ましかったりする。
目の前でいちゃいちゃされると、時々そういうのもいいなー、なんて思ったりするんだよなぁ。
でも相手が相手だけに、どうもそうならない。
どうしたもんかな…。
「何をぶつぶつ言っている。」
帰宅した俺と銀華は、二人で窓際にいた。
うちのアパートから、桜が見えるんだ。
細くて、なんだか頼りないけど、立派に咲いてる。
まるで隣にいる、銀華みたいだ。
花びらが、春の風に吹かれて、ひらひら暗闇を舞っていた。
「いやぁ、今日の桜は綺麗だったなぁーと思って。」
なんだか適当なことを言ってしまった。
いや、別に嘘じゃねーけど…。
「そうだな、それに、楽しかった。」
「そりゃよかった…、あのさ。」
俺は銀華の、俺よりちょっとだけ低い位置にある肩を抱いた。
同じ男なのに、ガリガリってわけでもないのに、なんだか折れそうだ。
「何だ?……っ。」
ふわりと微かに笑った銀華を見たら我慢出来なくなって、キスしてしまった。
銀華はゆっくり瞳を閉じて、キスに応えようと、俺の服の袖を握っていた。
ちょっと苦しそうになっている表情を見てしまったらもう、俺は止まらなくなって、その口の中を探った。
「だから何だ…っ、突然このようなこと…っ。」
「あ、ご、ごめん…。なんかしたくなった。」
「馬鹿者、そんないい加減な考えで……あっ!」
「じゃあ訂正、今凄いしたいから、いい?」
いい?なんて、床に押し倒して身動き取れなくしといて、そりゃねーだろ、って感じだけど。
銀華がいいって言うのも待てなくて、俺は服を捲って胸の粒を触った。
手で、指先で、舌で、優しくしようとするけど、感じてる顔が見たくて、つい激しくしてしまう。
「あぁっ、洋平…っ。…あっ。」
俺は手を銀華の下半身に移動させて、膨らんだそこを開放してやった。
胸を弄られただけで、もうその先端から雫が零れていた。
俺はこれまでしたくてもできなかったことをしようとした。
「ば、馬鹿っ、何をする…離せ…っ!」
主張したそれを、自分の口に含んだ。
一番好きな人の、一番男らしい部分だ。
「なんで?ダメか?」
「当たり前だ…っ。」
「だからなんで?」
「……見られたくないからだ…。」
銀華は怒ったように顔を腕で隠して、部屋は暗かったけど、きっとその頬は真っ赤だろう。
俺はなんだか嬉しくなった。
「何を笑っている。」
「同じ、俺も恥ずかしい。」
だって俺は男で、男のもの舐めるとか、今まで想像つかなかったんだ。
でもこういうことしてるうちに、色々したくなってしまって、つまりは俺の欲望っつーか…。
男同士でもいい、それどころか、好きな人の隅々まで味わいたいと思うんだ。
まぁ俺も健康な青年男子っつーことで。
しかもあの兄貴と血が繋がってるわけだから、スケベなのは仕方ないっつーか…。
そんなこと言ったら兄貴に殴られそうだけど。
「それならしなくても…っ、んっ、あ…。」
「でも気持ちよくないか?」
げっ…、俺なんかホントにスケベっぽいな…。
でもお前がそんな風に感じて、涙滲ませて、震えてると、俺、もっと気持ちよくしてやりたいんだよな。
「駄目だ…っ、やめ……っ!!」
「あ…。」
そこを口でして僅かしか経ってないのに、銀華が俺の口内に放った。
俺は迷わずその白濁液を飲み干した。
他の男のなんて、御免だけど。
好きな奴のだから、気持ち悪いとかはなかった。
「馬鹿者…っ、そんなもの飲むな…っ。」
「なんで?別にいいじゃん、好きなんだから。」
「お前はまったく……ひゃっ!」
「ココも、濡らさないと。」
俺は舌を後ろに滑らせ、銀華の秘密の場所を唾液で濡らした。
熱いその中を、出来るだけたっぷりと。
嫌がっていた銀華も、快感に負けたのか、言ったら怒られそうだけど、腰の辺りが揺れていた。
その中に、入りたい、と思う。
入って、その一瞬でも、一つになりたい。
俺は銀華を見ていたことによって変化した自身を、その濡らした入口に付けた。
「銀華、いい?」
「……っ。」
もう言葉が出ない銀華は、返事の代わりに首を上下に振って、俺の肩に掴まった。
「っあ―――っ!」
入ってみるとやっぱりその中は熱くて、蕩けそうだ。
物凄い締め付けで、俺の方が先にイってしまいそうだった。
「んっ、あ、あぁ…っ!」
銀華の口の端から、光る糸が垂れている。
決して女でもないのに、その声は高く、世界一甘い。
そのまま俺は激しく身体を揺さ振って、一番高いところへ駆け上る。
「銀…っ、いい…?」
「んっ、あ…、ああ――――っ!」
銀華が再び放った直後に、その中に自分も放った。
***
「お前は時々わからないな。」
行為が終わって、身体を綺麗に拭いた後、裸のまま、毛布に包まりながらまた窓際にいた。
まだ銀華の顔は紅潮したままだ。
俺も多分そうだろう。
「俺だっていつもいい人間なわけないって。」
そうだ、俺だってわがまま言ったり、イチャこいたりしたい。
まだ俺、落ち着くには早いよな。年齢的に。
甘い恋人の雰囲気だって味わいたいんだ。
「それならはっきり言ってくれればいい。」
「いいのかよ、言っても。」
「内容にもよるがな。」
「んーじゃあさ…。」
俺は無表情で凭れる銀華の顔を覗き込んだ。
あんまり見せない、笑った顔が見たくて。
「とりあえず昼の弁当、毎日作って欲しい。」
その俺の言葉を聞いて笑った銀華の顔は、今日見た桜より、外で咲いている夜桜より、ずっとずっと綺麗だった。
END.