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キリバン小説、シーズン企画など

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「さよならLonely heart」*(一話完結)

「近江、今日放課後待ってるから。」

そいつの妖しい声が、耳元で囁かれ、背筋にゾクリとしたものを感じた。
同じクラスの松阪は、顔だけはいい男で、女子にモテモテだが、その人間の冷たさと言ったらうちの冷凍庫に入ってる氷より冷たいと思う。
何か頼み事をしても知らないだの関係ないだの言うし、女子が騒いでも涼しい顔して目に入ってない感じで。
俺はというとそんなタイプの人間とは徹底的に合わない人間で、なるべく話さないよう、関わらないようにしていた。
なのに俺は先月から松阪と急接近してしまった。

それはちょうど一ヶ月前のことだった。
その日俺は委員会の仕事があって、クラスがひやかし半分で持って来ていたエロ本を借りて、放課後の誰もいない放送室で暇潰しに読んでいた。
健康な高校生男子なら誰でもあることだろう。
そういうので興奮して、いわゆるオカズにするってやつ。
エロ本の中の女の裸を見ていたら、なんだか下半身が疼いて仕方なかった。


「ヤバ……、……っ。」

俺は放送室ということを忘れて、下半身に手を伸ばした。
熱いその中心を、掌で包んで、変化し始めたそれを擦り始めると、止まらなくなってしまった。
滲んだ先走りを指に絡めて、時々先端を撫でながら、完全に勃ってしまったそれを一心不乱に弄り続けた。


「…はぁ……っ。」

息が乱れて、視界が虚ろ虚ろしてきて、快感に身を捩りながらその絶頂へと自らの手で導いた。


「すっげやらし。」

ヤバい、もうイく!と思った瞬間、俺の後ろから声が聞こえて、でも車…いや、手は急に止まれない、ってやつだよな…。


「松阪っ?……っ、やっ、あ───…っ!」

俺はなんと、松阪の目の前でイってしまったのだった。
頭の中が真っ白になった後、俺はどうしてこんなところで一人エッチなんてしてしまったんだ、誰か来たらどうする、とか考えろよ、そんな後悔が押し寄せて来る。


「あの…、これはその…!」

何か言い訳しようと必死で言葉を探すけど、出て来ない。
手には放った自分のものが付着し、制服のズボンは半分下げられてこんな状態で何か言っても無駄だとは思うけど。


「頼む!今のことは…!」
「言わねぇよ。」

手を合わせてまるで神様にお祈りするかのようにして、目を瞑って必死で頼み込もうとした。
絶対無理だと思ったのに、涼しい顔で松阪はそんな返事をしてくれて、ホッと一息吐こうとしたのは早過ぎたことだった。


「その代わり、また見せて。」

松阪はそれだけ言うと微笑を浮かべながら去って行ってしまった。


それ以来、俺は何度か松阪に呼び出され、放送室で一人エッチを見せる羽目に…。
なんだってこんなことに…。
普段はこんな人に弱みなんか見せないのに。
松阪には逆らえなくなってしまっている。


「じゃあやって。」

放課後の放送室に二人きりで、鍵を閉めてそんなことを繰り返す。
今思えばあの時も鍵閉めてやればよかったのに…。


「…っ、ん…。」

松阪の鋭い視線を感じながら、下半身に手を伸ばした。
普段は冷めてるクセになんでそんなに熱くじーっと見るんだ。
こんなことされてるのに、興奮しちゃうだろうが。


「俺に見られて勃ってる。」
「や…、言うな…っ!」
「手伝ってやろうか?」
「いらな…っ。」

普段は無口なクセにこの時だけはやけに饒舌になる松阪が憎い。
お前になんか誰が触らせるか。
目の前でこんな行為させられてるだけでもプライドはボロボロなんだ。
これ以上どうして俺がそんな目に遭わなきゃなんねーんだ…。


「…っ、く…っ、は…っ。」

さっきよりも視線がきつくなり、俺はそれだけでイってしまいそうだ。
手の動きが早くなり、またあの達する感覚が蘇る。


「俺にも教えてくれよ。」
「……はっ、あ、は…??」

快感でおかしくなりそうな俺のすぐ隣に松阪は立って、突然ズボンのジッパーを下げ始めた。
こんなこと今までなかったぞ…。


「…な、なんで…?」
「なんでって、したいから。」
「…は?」
「早く教えてくれよ。」

自分のものを触っていた俺の手が強く掴まれ、松阪の下半身に無理矢理持っていかれた。
つーかなんなんだよもう…!


「ふざけんなっ、なんで俺がそんなことまで…!」
「お前だから。」
「わかんねぇよ!いい加減にし…。」
「好きな奴に頼んで何が悪い。」

今、松阪はなんて言った?
好きな…奴…??
ここ、俺と松阪以外誰もいねぇよな…?
わけがわからなくなった俺は、辺りを見回した。


「好きだ、近江。」
「は…はいぃ??」
「お前が一人エッチしてる姿に惚れた、俺と付き合ってくれ。」
「ちょ…、待…バカかてめ…、んぅっ、松阪…っ!」

余計こんがらがるようなことを言われて、激しいキスをされた。
なんで俺こいつにキスなんか…!


「じゃあ最後は一緒にイくぞ。」
「な…っ、ちょっ、やっ、あぁ───…っ!」

俺の手が松阪のそれに、松阪の手が俺のそれに、
お互いのものを触って、信じられないけど、イってしまった…。


***


「俺と付き合ってくれるよな。」
「なんで付き合うって前提で言うんだよ…。」

同時に達したのに、俺だけまだ息が整っていない。
二人で隣同士で立って一人エッチ、すっげーおかしかったぞ、その光景。
絶対見られたくない、こんなの。


「お前俺のこと好きだろ?」
「だからなんで…!」
「見られて、声で興奮してたのに?」
「それは…。」
「お前喧嘩強いんだから、なんとでもできたのに?」
「…だからそれは……。」

白状しよう、実は俺は、そうなんじゃないかって思っていた。
じゃなきゃこんな恥ずかしいことできるか…。
俺の悩みや迷いは松阪に言葉で解決してしまったようだ。
あぁ、なんて情けない…。
しかも好きになった理由がお互い一人エッチってどんなカップルだよ…。
そんなの人に言えないだろ、その前に男同士だしよ…。


「ダメ?嫌?嫌いか?俺のこと。」

そんな目で見るなよ、そんな捨てられた犬みたいな。
絶対わざとくせぇ…。
なのに何心ん中でちょっと喜んでるんだ俺は…。

「お前の一人エッチまた手伝ってやるから。」
「バカっ、エッチてのは普通二人で…、……っ!」

しまった、なんか俺変なこと言った…。
もう、遅いんだけど。


「じゃあ今度は二人で。」
「…違…って…。」

松阪が楽しく笑ったのなんか初めて見た。
多分あのクラスの誰も見たことがないと思う。
あぁ、俺ってこんなに流されやすい人間だったのか。
とりあえず、もう一人でさせられることはないってことで、なんて納得はでいきないけど。


「好きだ、近江。」

大負けに負けて、両思いになったからよかったってことで。
よかった…のかはこれからの俺たち次第だと思うけど。


END.


■カウント1000番…七架様リクエスト
テーマ「一人エッチ」(爆)、攻は冷たい感じ、受は強気な感じ
…すいません、全然なってないです。(泣)
単なる変態な松阪、流されやすい強気でもなんでもない近江…。
というかどっちもどっちでアホです…。(書いた私が一番アホ)
七架さんどうもありがとうございました!
(またこのヘタレアホ管理人にチャンスを下さい…!)

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