一也と両思いになれたことと、3度のキスで、幸せ気分に浸っていた。
待ってて、と言う台詞を胸の中で噛み締めながら、布団に潜って温まっていた。
母さんが途中でお風呂に入るよう言ってきて、仕方なくその夢心地から抜け出したけど、自分の部屋に帰るとまたその幸せに浸った。
雪はあれから何時間も深々と降り続いて、また積もるんじゃないかという勢いだった。
夜の闇に、白い花びらが舞い散るみたいで、これなら寒くてもいいかななんて調子に乗った考えまで浮かんでしまう。
あんなに嫌いだった冬も雪も、寒いのも、恋にかかるとなんでもよくなるから凄い。
それから更にどれぐらい経った頃だろう。
またコンコン、と窓を叩く音で目を覚ました。
どうやら布団の中でうとうとしてしまっていたらしい。
ハイベッドのパイプに手を掛けて、なんとか身体を起こす。
寝癖がついていないか、確かめたかったけど、それよりも早く一也に会いたい。
「ごめん、すっげー遅くなった。」
「仕事、お疲れ様。」
「眠いだろ?ごめんな。」
「ううん、大丈夫だよ。早く入りなよ、風邪ひくよ。」
1階で寝ている母さんに気付かれないように、ヒソヒソと会話をして、静かに窓を開けて一也を中に入れる。
頬が凍りそうなほど冷たくて、身体の芯まで冷えているのがわかる。
吐く息の白さが外の寒さを示している。
サンタクロースって、大変だなぁ…。
「柊、寒いだろ?布団入ってろよ。」
「でも一也は…。」
「ん?俺も一緒に入るから。」
「えぇっ!」
さらりと言うその言葉に、思わず大きな声をあげてしまった。
しーっ!と一也が口元に指を当ててきて、心臓が跳ね上がる。
だって…、一緒に入るって…。
そんなこと普通に言わないでよ…。
「柊?入っちゃダメ?」
「えっと、でもその…。」
「大丈夫、何もしないから。」
「な、な、何もって…!」
顔を背けて、布団の端を捲ると、ありがとう、と一也が呟いて潜り込んで来た。
こんな近距離で、籠もった場所で体温を感じるなんて…。
ドキドキし過ぎて変になりそう。
「それともなんかする?」
「なんかって…あの…それはその…。」
「ウソウソ、しないって。っていうかできないって、憧れの人の家でなんか。しかもその息子に。」
「一也…。」
父さんのことを思い出した。
一也の憧れのうちの父さんは、立派なサンタクロース。
サンタクロースと結婚した母さん。
なんだか自分の家族が不思議な感じがする。
「子供の寝顔見てたらすっげぇ楽しみだよな~、明日の朝がさ。もちろん見れないけど。」
「そうだね。」
「あと、起きちゃう子供もいてさ、そしたらすっげー喜んでて。握手求められちゃった、俺。」
「うん、よかったね。」
子供の話を一也は凄く嬉しそうにする。
サンタクロースって、こういう人だからみんなに人気なんだなぁ。
話してる一也のほうが子供みたいに嬉しそうだよ。
物凄くこの人が好きだって思う。
「んじゃ、ほら。」
「何?」
「プレゼント。交換しようか。」
「交換?どうやって??」
一通り話し終えた一也は、改まったように近付いて、腕を広げた。
すぐにその腕が巻き付いて来て、ぎゅっと抱き締められる。
一也って、結構ロマンチストだったんだ…。
こういうの照れもせずにするんだもん。
「おやすみ、柊。メリー・クリスマス。」
「うん、おやすみ。メリー・クリスマス…。」
額に軽くキスされて、その後程なくして、眠りに就いていた。