「志摩…。」
「あ…あのっ、お、俺っ、ご飯の準備しなきゃ…!」
志摩は明らかに、気まずい空気を察知したみたいだった。
青城さんの言う通り俺が苛立っていることに、気付いてしまっていた。
どもりながらキッチンへ慌てて逃げて行くなんて、わかりやすいにも程がある。
「志摩…。」
「はっ、隼人ちょっと待っててっ!これ温めるか……。」
「お菓子は?」
「……ほぇ?!」
俺はすぐに後を追いかけて、キッチンに辿り着いた途端志摩へと詰め寄った。
料理の入った鍋へ伸ばそうとする志摩の手を掴み、自分の方へ引き寄せる。
「俺の分のお菓子は?」
「あ…あの…、隼人…?」
「お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ…だったか?」
「あ…!え、えっと…お菓子……んっ、んう…!」
俺が帰るまで、志摩はあの二人とお菓子を食べていたのだろう。
貪るようにして奪った唇が、異常なほどに甘い。
おまけに柔らかくていい匂いがして、それこそお菓子みたいだ。
「トラックじゃなくてトリックだろ?トリック・オア・トリート。」
「え…!あ…そ、そっかぁ…!」
「志摩はバカだな…。」
「う……ご、ごめんなさい…。」
バカだっていい。
バカな方がいい、バカなところがいい。
バカなままでいて欲しい。
間違いにしゅんとしている志摩を見てしまうと、俺の欲望は急激に加速し始めた。
「こんな格好までして…。」
「あ…あの…隼人やっぱり怒って…。」
「言ったよな…?やめろって…。」
「で…でも可愛かったから…。ま、魔女の服が可愛くてそれで…!」
「可愛いから怒ってるんだ…。」
「え…?あ……ひゃ…っ!わ…!ひゃあぁっ!」
俺は言い訳をして逃れようとする志摩をキッチンへ押し付け、後ろからきつく抱き締めた。
ヒラリと揺れる黒いスカートの裾から手を突っ込み柔らかな大腿に触れると、志摩の身体がビクリと震えた。
「は…やと…っ、お菓子…っ、お菓子あげるから…っ!」
「そんなことで誤魔化すなよ…。」
「でも…っ、お菓子をあげたら…っ、んん…っ!」
「いたずら…して欲しくてこういう格好したんだろ…?」
「や……っ!違…ああぁっ、んっ、あぁ……!」
「ほら…もうこんなに…。」
お菓子をくれてもいたずらしてやる。
志摩にとっては理不尽な俺の我儘も、身体が反応してしまっていては受け入れるしかなくなる。
そんなずるい俺のことも、好きだと言ってくれるよな…?
「う…ふぇ…っ、あ…ぁんっ!や……も…っ!」
「もう?もうイきそうなのか?」
俺はそのままの体勢で、スカートの中の志摩自身を激しく手で擦り続けた。
そこがぐちゃぐちゃに濡れてはち切れそうなぐらい膨張して、志摩の出す甘い声が大きくなるまでは、それほど時間はかからなかった。
同時に後ろに手を伸ばして二つの丘の間に指を入れると、志摩は今にも達してしまいそうになった。
「や…っ、ああぁっ、んんっ、あ……!」
「ダメだろ…志摩…。」
「う…あ……っ!!隼人っ、それ…やあぁ…っ!」
「や?やな時は何て言うか…わかってるよな…?」
俺は志摩の後ろを指で責めながら、志摩自身の先端をきつく塞いだ。
達したいのに達することが出来ない、志摩にとっては苦しいことをして、その先を強請らせたかった。
何度も目の前で泣かれて反省をしているのに、俺という人間は懲りることを知らない。
「あ…おねが……っ、隼人…っ、隼人ぉ……っ!」
「お願い?どうして欲しい?何が欲しいんだ…?志摩…。」
「ふえぇ…っ、隼人…っ、意地悪しな……う…ふえぇ…。」
「志摩…言えよ…、どうして欲しい?何が欲しい…?」
懲りるどころか酷くなっていく俺の意地悪にも、志摩は応えてくれる。
どこかにそんな自信があるからこそ、俺は意地悪をしてしまうのだろう。
だけどどこかで自信がないからこそ、俺は意地悪をしてしまうのだろう。
相反する思いが俺の中で蠢いて暴走をして、すべて志摩へと向けられる。
「隼人…が…っ、隼人がほし…です…っ、隼人…、はや……あああぁ…っ!!」
志摩が泣きながら俺の思いに答えた瞬間、俺は志摩の体内へ自分を沈めていた。
狭い入り口を無理矢理抉じ開けて最奥を激しく突き、その熱さを自分自身で確かめる。
そして志摩も同じように俺を思ってくれているということを、深く確かめる。
「だめえぇっ、も…だめっ、いっちゃうっ、隼人…いっちゃ…ああぁ───…っ!!」
「志…摩……っ!」
俺はキッチンのシンクに食い込みそうになるぐらいの力で、志摩を押さえつけたまま何度も揺さ振り続けた。
程なくして志摩が今度こそ達したのと同時に、俺も志摩の中で白濁を放っていた。
「隼人…ごめ…なさ…。」
「え…?」
一瞬だけ気を失ってしまった志摩が床に倒れたまま、ぼそりと呟いた。
涙を滲ませながら濡れた身体で、乱れた衣装のままで。
「俺…もうやめます…。」
「やめるって…。」
「隼人こういうの嫌いだから…もう魔女とかやめるの…。」
「べ、別に嫌いなんて言ってな…。」
「ほぇ…?」
「いや…その…。」
まさか今になって、言えるはずがなかった。
あれだけ怒ってこんなことをしておいて、「もっとしてくれ」だなんて…!
見せたくないのは他人に対してだけで、自分だけには見せて欲しいだなんて…!
いつもと違った感じで燃えるからなんて、絶対に言えるわけがない。
「じゃあ好きなの?」
「す、好きなわけないだろ…。」
「??変なのー。」
「………。」
俺は志摩によって目覚めさせられた自分に、頭を抱えてしまった。
決して人に堂々と言うことの出来ない性癖に、ハッキリと気が付いてしまったのだ。
そして何だかいたずらされたのは志摩ではなくて俺の方かもしれないと思うと、こんな時なのに可笑しくなってしまった。
END.