「章吾、大丈夫か?」
「大丈夫も何もお前…。」
大丈夫なわけあるか。
こんな事実突きつけられて、普通にしてられる奴なんかいないっての。
車内を転がってあちこちぶつけてフラフラになった俺は、
勇二郎におんぶまでされて、自宅へなんとか帰って来たのだった。
自分の部屋のベッドに横たわり、タオルをぶつけた顔にあてる。
「お前南の生徒って言ったろ…。」
「うん、南小学校…。」
「あ…そう…ははっ。」
「嘘は吐いてないと思う。」
あぁそうかよ、確かに俺も紛らわしい聞き方したけどよ。
もう何から聞いていいのかわからない。
「でも、隠しててごめんなさい。章吾、ごめんなさい。」
初めて会った時のあの迫力なんかまったくないほど、勇二郎はしゅん、となって落ち込んでいた。
それは本当に小学生が悪戯か何かして、怒られて落ち込んでいるそのものだった。
身体も普通の小学生よりデカいし、あんなに強引だったけど、今の勇二郎は年相応といった感じだ。
「もうわかったから。いいってもう。」
「よくない。」
「な、何が…?」
「俺、章吾に好きだって言ってもらってない。」
「は?だってそれは…、バカっ、何すんだ!!」
「章吾、好きって言ってくれないのか?」
俺が今、身動きを取れないのをいいこと(?)に、勇二郎は上に跨って迫って来た。
観覧車も逃げられなかったけど、これもまた逃げれないんじゃないか俺。
しかも都合のいいこと(?)に、ここはベッドで、今うちには誰もいない…。
「章吾、好きじゃないのか?俺のこと。」
「だ、だってお前は小学生だろ…。」
「そんなの関係ない、俺、頑張るから。」
「頑張るって何を…。」
「ちゅーの次とか。勉強もしてる。」
「は?勉強??ちゅーの次ってお前な…っ、おいっ!」
ヤバい…俺、このままじゃ小学生にヤられる?!
マジかよ…そんなん誰にも言えない…言わないけど!
「章吾、俺のこと好きじゃないのか?」
「う……。」
そんな捨て犬みたいな目しやがって…。
そんな目されたら余計逃げられなくなるだろ。
しかもちょっと好きなんじゃないかって思ってたところに…。
こういう表情、無意識にやってるから子供ってのは質が悪い。
「わかった。」
「えっ、諦めるのか?」
「うん。高校生に散々遊ばれて捨てられたって言う。」
「ま、待て!それじゃ俺が捕まるだろうが!」
こ、このやろー!
いらん知識つけやがって…。
この場合どう考えたって俺のほうが被害者なのに、捕まるのは俺になるんだもんな。
それに多分…、多分、おそらく、もしかしたら、だけど…、あくまで仮定ってことだけど!!!
俺は勇二郎のことが…。
「悲しいけど俺、我慢する。」
「し、しなくていい!!わかった!わかったから!!」
「んじゃ、俺のこと好きか?」
「う……。」
くっそー!言えばいいって言うのかよ!
そうなんだな、言えばいいんだな!!
これでも俺だって男だ、ちゃんと言ってやる!!
「す…、好き…だと…。」
「だと?」
「あぁもうっ、好きだ!勇二郎が好きだって!!これでいいのかちくしょう!!」
「章吾っ!」
ヤケクソのように、無事?愛の告白を終えた俺に、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた勇二郎が覆い被さって来た。
あーあ…、俺、こいつとホントにカップルになっちゃったのか…。
「おい、もういいだろ?そこどいてくれよ……っ!」
「初ちゅーだ、カップルになって初ちゅー。」
「バカっ、いいからどけ…っ、ななな何やってんだお前っ?!」
「ちゅーの次。」
ななな何──────っ!!!!
唇が離れた思った瞬間、俺の制服のシャツに勇二郎が手を掛けた。
手を掛ける、どころじゃない、既にボタンが外されようとしている。
「待て!待て待て!!お、お前まだ勉強中だろ?今しなくてもいいだろっ?」
「うん、章吾に今から教えてもらおうと思って。」
「おおお俺は知らないぞ!そんなこと知らないから!!」
「えー、でもこういうの見てるんじゃないのか?」
「お、俺のエロ本!!どこからこんなもん…!」
「ベッドの下にあった。うちの兄ちゃんも隠してるから。」
やっぱりみんなエロ本ってのはベッドの下に隠すんだな…。
なんて、感心してる場合じゃないぞこれは。
勇二郎の目…、マジだ、これ、マジでヤる気だ!
しかも俺がヤられる方ってどういうことだよ?!
「ちょ、ちょっと落ち着けって!冷静になれよ!」
「でも章吾のここ、冷静じゃないけど。」
「!!!ぎゃー!パンツ下ろすなバカ!!」
「俺、頑張る!もっと大人になるよう頑張るから。」
冷静になれ、と言っておきながら、恐怖で青ざめて行く顔とは裏腹に、俺の下半身は今のキスだけでとんでもなく熱くなってしまっていた。
バカは俺の方かもしれない…。
「さっき章吾が寝てる間に見たのやる。」
「うわっ!やめろって!!バカっ、ホントにヤバいって…っ!」
「すごい…、俺、できるかな…。」
「や、や、やめろー!やめろって………、あぁ─────…っっ!!!!」
笠原章吾、18歳、高校3年生、小学生に口でされました。
おまけに、開始5分、あっさりイきました。
俺は、これから一体どういう人生を歩んで行くんだろうか…。
「章吾、大丈夫か?疲れたのか?」
「…大丈夫…なわけあるか…。」
口でするだけでやめてくれてよかったけど…。
ぐったりとベッドに顔を伏せた俺の顔を、勇二郎は心配そうに覗き込んで来る。
今顔なんか見せられるわけがない。
恥ずかしいにも程があるってやつだ。
「俺、頑張って大人になるから!章吾に年追いつくようにする!」
「年が追いつくわけないだろ…。」
「俺、来年から中学生だし!」
「俺は大学生だっつうの…。」
どうやっても俺の年に勇二郎が追いつくわけがない。
頑張って年を変えることがことできるなら、俺がお前の年になりたいぐらいだ。
勇二郎だっていくらなんでもそれはわかっている。
「大人になるよう頑張るから…、だから俺と付き合ってくれ!」
「…ぷ…、ぷはは…。」
「何がおかしいんだ?」
「いや、もう、負けたわ、もうわかったよ。」
あんまり必死でそういうこと言うから。
頼んでるクセに大人びたエラそうな言葉遣いが面白くて。
自分勝手で我儘で時々ずるい子供だと思うけど。
そんな勇二郎が大人になっていくのを一緒に見たいと思った。
それはきっと、俺が描いていた平凡な人生設計より、何十倍も楽しいはずだ。
「俺、お前と付き合うよ、勇二郎。」
「本当?やったー、章吾大好き。」
「お前が大人になるの、楽しみに待ってるから。」
「うん!」
まだまだ、その笑顔も仕草も、子供だけど。
そんなお前と一緒にいたい、そう思うよ。
まぁさっきのも興味半分だっただろうし、一回やれば気が済んだだろ…。
その点については後々考えればいいことだよな…。
「じゃあ明日、またしような、あれ。」
「……え。」
勇二郎が大人になるのは、明日かもしれない、違う意味でだけど。
END.
■カウント5600番…七架様リクエスト
テーマ「大人っぽい小学生に惚れられる高校生」
小学生攻め、強気で流されやすい高校生受け、ギャグちっくな明るい話
毎度毎度ここで謝罪しております…。
今回も例に漏れず、リクエスト通りになってなくてすみません。(泣)
ネタは素晴らしいのに管理人の技量がまったく足りませんでした。
でもまたノリノリで書いてしまいました…楽しかったです。
七架さんどうもありがとうございました!
というかいつも踏んでくれてありがとうございます!!(感涙)