「美味い?」
「馬…鹿…なことをする…。」
「でも美味いだろ…?」
「わからな……ん…!ふ…ぁ…。」
俺は志摩からだと言い張るチョコレートを台所の上に置いて、もう一度キスをした。
そのキスは深いものになっていき、ゆっくりと身を委ねようとしている銀華が可愛くて愛しくて、堪らない。
「でも一番美味しいのはこれだよな…」
「ふ…ざけ……あ…!はぁ……っ!」
俺が一番欲しいもの。
俺が一番好きなもの。
それはチョコレートでも何でもなくて、銀華ただ一人だ。
観念したように俺にしがみ付いてキスに応える銀華を、俺はきつく抱き締めてゆっくりと床に押し倒した。
「あのさ…していい…?」
そのようなことは聞くな、そう言った銀華はもう俺を受け入れる表情を浮かべていた。
銀華の手から包み紙ががさりと落ちたのを合図に、俺は俺だけの「美味しいもの」を食べ始めた。
「ん…ふ……あぁっ、あ…!」
まさか銀華とこんな風にバレンタインを過ごせるとは思ってもいなかった。
これならもっと他のイベントでも積極的になってもいいのかもしれない。
それともそんなことをしたらやっぱり怒ってしまうだろうか…?
俺は色んなことを考えながら、目の前にある銀華の服を脱がせ、唇で肌に触れた。
「甘い…。」
「はあぁ…っ、あ……!」
その肌までもが甘いような気がするのは、俺の勘違いだろうか。
一日中志摩とチョコレートを作っていたせいで、肌までその匂いや味が滲みるなんてことはあるのだろうか…。
「ん……っく…うぅ…っ。」
「ダメだって…。」
「い…やだ…っ。」
「なんで?せっかく可愛い声なのに…。」
後ろを振り向かされて胸を弄られながら、銀華は自分で自分の口を塞いでいた。
いつもそうやって声を我慢しようとするのは、銀華の悪い癖だ。
「馬鹿者…っ、外に聞こえたらどうす……んん……!!」
「うん…でも興奮するだろ…?」
「何を馬鹿な……あ…や……!」
「だってここ…いつもより勃つのも濡れるのも早いんだけど…。」
「────…!!」
「当たり?だよな…。」
俺は胸から一旦手を離し、下半身へ手を伸ばすと下着の中に突っ込んだ。
着ていた服がきつくなるほど膨らんだ銀華のそこは、既に先端から先走り液まで溢れ始めていた。
「お…まえ…っ、あぁ……!」
「そんなに怒るなよ…今日ぐらい優しくしてくれよ…な?」
怒った顔も可愛いけれど、たまには優しくして欲しい。
俺のことを好きだと言って、思い切り甘えて欲しい。
それは恋人に対して普通に思うことだ。
いくら俺が物分りのいい振りをしていたとしても、たまには思ってみてもいいじゃないか…。
「あ…はぁ…っ!ん……ひぁ…っ!!」
俺は一気に銀華のズボンを膝まで下ろして、後ろの入り口に指で触れた。
そこに自分のものをすぐにでも入れたかったけれど、何せまだ何も慣らしていない。
さすがにそれは銀華を傷付けてしまうからと、自分の指を唾液で濡らした。
「すご…もう熱い…。」
「あぁっあ……!」
「俺の指…チョコレートみたいに溶けてく…。」
「う…うるさ……はあぁ…っ!」
「だってもうトロトロ…。」
「ち…違……あぁ!」
いくら五月蝿いだの違うだの言っても無駄なのに…。
こういう時でも銀華は強がることをやめない。
それを何とかして覆してやりたい、認めさせてやりたいと思う俺は、間違ってるのかな…。
もっと素直になって思うままを口にして欲しいと思うのは、俺の我儘なのか…?
「あ……ああっ!ひ…ああぁ───…!」
そんな思いを振り切るかのようにして、俺は再び立ち上がって銀華の後ろへ自身を挿入した。
まだ完全に解されていなかったせいか、いつもよりきつく感じる。
だけどそんなのもほんの僅かなことで、次第に受け入れていくのを、俺自身で感じることが出来た。
「あぁっ、はあぁっ、洋平…っ、っく…ああぁっ!」
「そ…んな締め付けんなって……っ!」
「はあぁ…もうっ、もう……!」
「…っく……俺も…っ、俺もイくから…っ、銀華…一緒に……っ。」
「ああぁ……!!は…ああぁ───…っ!!」
「う……っく……はぁ……っ!」
やがてそれは大きな快感の波になり、俺達二人を支配した。
台所のシンクに置かれた銀華の手に重ねるようにした自分の手に力を込めて揺さ振って、二人で絶頂を迎えたのだった。
「お前は…無茶をする……っ。」
「ご…ごめん…。」
二人で同時にぱったりと倒れて、まだ息が整わない中、銀華は俺をキッと睨み付けた。
あーあ…やっぱり怒ってる…。
そうだろうと思ってはいたけれど…さすがにちょっとキツい。
まぁそれも自分が悪いんだけど…。
「本当に仕方のない奴だな…。」
「うん…ごめん…。」
でも俺はわかっているんだ。
そうやって呆れたように言いながらもしっかり俺を抱き締めて離さない銀華の気持ちが…。
そういう俺でも好きだと言っているような気がしてならないんだ。
多分それを言ったらまた怒るだろうから、思うだけ…今日だけは許して欲しい。
「本当に……。」
「うん……。」
ゆっくりと目を閉じた銀華に、俺は優しくキスをした。
それを止めなかったのは、やっぱりこんな俺でも好きだから…と思ってもいいのだろうか。
それとも今日はバレンタイン・デーだから特別なのか…。
どちらかはわからないけれど、俺は幸せな気分でいっぱいで、銀華を抱き締めながら自分もゆっくりと目を閉じた。
Happy valentine's day
END.