「あの…隼人…っ。」
「志摩…次は…、次はどうして欲しいんだ…?」
「ふぇ…意地悪しな…で…。」
「ちゃんと言わないとわからないだろ…?」
「うっうっ、隼人の……っ。」
「俺の…何?どうして欲しい?」
そして俺の意地悪はエスカレートして、もっと恥ずかしくしてやろうと思ってしまう。
もっと志摩が泣いているところを見たいし、俺を欲しがって欲しい。
「ふぇ…えっえっ、隼人の……っ、うえぇ…恥ずかしいです…っ、隼人の…えっえっ。」
「ごめん…、ちょっと意地悪だったな…。」
さすがにそこまで泣かれると、罪悪感でこの先が出来なくなりそうだった。
俺は志摩の真っ赤に腫れた瞼にキスをして、仰向けにして脚を開かせた。
「はや……あ────…っ!!あっ、隼人…っ!んん────…っ!!」
「…き…つ……っ。」
大きく開いた志摩の脚の間にある入り口に、俺は自身を沈めた。
まだ指で完全に慣らしていなかったせいか、普段よりもそこは狭いように思えた。
奥まで行こうとする俺自身を、志摩のそこがきゅっと締め付ける。
「隼人…っ、ふぇ…好きです…っ、隼人好きいぃ…っ!!」
「志摩…っ、俺も…っ。」
俺もお前が好きだ、志摩。
物凄く好きで好きで、それでこんなことをしてしまった。
嘘を吐いたり騙したりしてしまったことは申し訳ないと思っている。
ただ俺の思いだけはわかって欲しいんだ…。
どれだけ俺が志摩を好きで、どれだけ欲しいと思っているのか。
志摩が思っている以上に俺は志摩のことが好きなんだと言うことをどうしてもわかって欲しい。
そうしたら俺はどんな罰でも受けるから…。
「隼人…っ、ああぁ────…んっ!!」
「志摩………っ!」
「魔法のくすり」を塗られたのは志摩だったけれど、繋がったことで俺にまで影響を及ぼしていた。
それとももしかしたらこの時、志摩の風邪がうつって熱もあったのかもしれない。
そのせいで俺までもがおかしくなってしまっていたのかもしれない。
二人で達したその後も身体が疼いて堪らなくて、お互いにもっとしたいという衝動に駆られた。
「隼人ー…っ、はぁ…はぁ…。」
「志摩…もっと…。」
まだ息が整わない志摩の濡れた身体を抱き締める。
さっきの甘い匂いが鼻を刺激して、眩暈がしそうだ。
「隼人…俺…っ、俺あの……っ。」
「もっと…したいんだよな…?」
「う……ごめんなさ…っ、ふぇ…。」
「もっとしよう…志摩…。」
志摩が真っ赤になって首を縦に振ってくれて、俺達はその後何度も行為を繰り返した。
「お前らがラブラブカップルなのはわかるけどよ…。二人して寝込んで何やってんだよ…。」
翌日になって、志摩だけでなく俺まで寝込む羽目になってしまった。
それも本当なら志摩は治っていたかもしれないのに…全ては俺のせいだった。
そんな俺達のところにやって来たのは、呆れ顔の藤代さんだった。
「ラブラブって…。あの…、俺…シロに頼んだはずなんですけど…。志摩が腹空かせると泣くんで…。」
「そのシロは仕事なんだよ、クリスマスのケーキ屋だぜ?代わりに俺が来てやったんだから感謝しろよな。」
「す…すみません…。」
「ったくよー。」
本当ならここには、ブツブツを文句を呟く藤代さんの恋人であるシロが来ているはずだった。
だけどその電話をした時俺は熱で意識が朦朧としていて、ちゃんとシロと話したのかもわからなかった。
ついに記憶障害までいったのかと思いきや、そうではなかったようだ。
「つぅかシマたんのは風邪じゃねぇだろ?」
「な、何言ってるんですか…。」
「りょ、亮平くん…っ!」
「何って…とぼけんなよ、どうせお前がエロいことして無理させたんじぇねぇのかよ?」
「そんなことしてな……!」
「ええっ!!亮平くんどうして知ってるの…っ!!」
「ぶはは!やっぱりそうなのかよ!!水島ぁ、お前どんだけしたんだよ!」
「し、志摩っ!」
「ひゃあっ!ご、ごめんなさ…!!でも風邪も本当で…昨日は風邪だったのです…っ!」
志摩の言い訳は墓穴を掘るだけで、俺は藤代さんに向ける顔がなくて、布団を被った。
こういうことを言われると思ったからシロに頼んだのに…。
シロの仕事のことまで頭が回らなかったのは悪かったけれど、藤代さんが来るとこういうのが大変なんだ。
しかも来て速攻でバレるし…風邪が治ってから俺はどんな顔をして会えばいいんだ。
「まぁ自業自得ってやつだな、水島。」
「………。」
「メシでも作ってやるから寝てろよ、ラブラブでな。」
「………。」
確かに自業自得だ。
昨日どんな罰でも受けると思っていたのが、本当に罰が当たってしまったのかもしれない。
この歳になってひく風邪はなかなか酷いもので、会社まで休んでしまった。
これに懲りてもうあんなことをするのはやめよう…。
藤代さんが楽しそうにキッチンへ向かう中、俺は何も言えずに布団に潜っていた。
「あの…隼人…、ごめんなさいなの…。」
「え…?」
「俺…また変なこと言っちゃって…。」
「いや…俺のせいだし…。それに…。」
扉の向こうには藤代さんがいる。
そんな危ない状況なのに、俺は布団の中の志摩をぎゅっと抱き締めた。
「隼人…?」
「それに…こうしていられる…。」
この時の俺の熱も、相当酷かったのかもしれない。
普段は素直に言うことなんか出来ない台詞まで、次々に出て来たのだ。
風邪をひいたら寂しくて人恋しくなるというのを、俺は初めて経験したような気がした。
「えへへー志摩湯たんぽだよー。」
「うん…。」
俺は志摩の頬にキスをした後、目を閉じた。
そしてすぐに深い眠りに就いて、暫くの間その感覚に溺れた。
「おい、メシ出来た……ぷ…、水島の奴…何だかんだ言ってやっぱりラブラブじゃねぇか…。」
この時藤代さんが携帯のカメラで俺達を撮っていたことには、もちろん気付くはずがなかった。
ただ温かくて触り心地のいい俺だけの湯たんぽを、俺は離すことなく抱き締めていた。
END.