「プレゼント…、これが欲しいんだけど…いい?」
一也はどうして、恥ずかしげもなくこういうことが出来るんだろう。
それは俺がいつも思っていることだ。
だけどこの時だけは、何だか嬉しくなってしまった。
素直に言ってくれた俺だけのサンタクロースに、プレゼントをあげたいって思ったんだ…。
「ん…ふ……。」
その後俺達は予定していたデートをやめた。
さすがに俺の家ですることは出来なかったから、一也の家まで移動した。
その時抱き抱えるようにされたのは、やっぱり恥ずかしかったけれど…。
「柊、いい匂い…風呂入った…?」
「か、母さんがうるさくて……あっ!」
「美味しそうな匂いがするな…。」
「や…恥ずか……はぁっ、あぁ…っ!」
母さんが買って来るシャンプーや石鹸は、女の人が使うようなものが多かった。
自分のだけ別にしようとすると自分でお金を出せというから、俺は仕方なくそれを使っていた。
それが今そんな風に言ってもらえるだなんて…。
「柊……ここ…いい?」
胸を弄られていた俺の下半身は、服の上からでもわかるほど形を変えていた。
先端からは透明な液が滲み出していて、それを一也の舌が絡め取る。
そんなところを口に含まれたのは初めてだったし、あまり考えたこともない行為だったけれど、俺はほとんど抵抗することもなく、受け入れた。
「あ…っ、んっ、一也…っ、一也ぁ…っ!」
信じられないようないやらしい音を立てて、一也はそこの愛撫を繰り返した。
自分で触れるよりもずっと気持ちがよくて、すぐに達してしまいそうになる。
「ごめん…我慢出来ない…。」
「えっあ…っ?あっ、あぁ…んっ!!や…一也それ…っ!」
「嫌か?」
「やじゃな…けど…っ、変…っ、変になる……っ!」
一也が触れたのは、男同士でそういうことをする時に繋がる場所。
そんなところに指を入れるなんてことは、一也と恋人同士にならなければ考えもしなかったことだ。
濡れた指が次第に奥に行くにつれて、俺の体内におかしな感覚が広がり始める。
「柊…。好きだよ…。」
「一也…ぁ…俺も…っ、俺も一也が好……っ、ん────…っ!」
俺達はお互いの気持ちを口にして、一つになった。
半年以上もしていなかったせいか、慣れていないせいか、切り裂けそうな痛みが全身に走る。
「柊…っ、息…っ、ゆっくり息して…っ。」
「はぁ…っ、はあぁ…っん……っ!!あっ、ああぁ───…っ!!」
「そう…ゆっくり…ゆっくりでいいから…っ。」
「んんっ、一也あぁっ、ああぁ…っ!」
どれぐらい長い時間をかけたのかはわからないけれど、一也は本当にゆっくりと俺の中に入って来てくれた。
キスをしながら奥へ奥へと進む一也のそれは熱くて、そこから溶けてしまいそうになる。
「柊…っ。」
「あ…っ、ダメも…っ。一也…っ、も…ダメ…っ。」
「イきそう…?」
「やっ、そんな…あっ、やあぁ…っ、それダメ…っ!」
奥を突く一也のそれが、俺に快感を与える。
始めは痛みと異物感だけだったのに、こんなにも気持ちがよくなってしまうものなんだ…。
初めての時はそんなことも考える暇がなかった。
身体を繋げることが、とても大事なことだっていうことも…。
「柊…っ、一緒に…っ。」
「あっ、一也あぁっ、やあぁっ、ダメ…っ!」
「柊………っ!」
「あ…あああぁ…………っ!!!」
激しく揺さ振られながら、俺達は同時に達した。
俺は白濁が吐き出されたシーツの上にぱったりと倒れて、暫く声を出すことさえ出来なかった。
***
「まったくもうっ、ご飯の後ちゃんと布団も掛けないでお風呂にも入らないで寝てるからよぉ。」
翌日俺は、情けないことに熱を出してしまった。
それが母さんの言う原因ではなくて、一也とのことだと思うと、恥ずかしくて堪らなくなった。
「今日は一日寝てなさいよ?学校が休みに入ってまだよかったわ。」
クリスマスの前に、俺の通う学校は冬休みに入った。
そうでなければもっと母さんに文句を言われていたかもしれない。
普段からご飯の後に寝るなということを、母さんは口を酸っぱくして言っていたから。
「はぁ…。」
一也にはこんな状態になっているなんて絶対に言えない。
一也は優しいから、きっと心配をしてしまう。
それでまたあんな風に我慢をしたり悩んだりしたら申し訳ない。
俺は布団を被って、穏やかな太陽が差し込む中、うとうとしながら眠りに就こうとした。
「柊…入ってもいいか?」
「……え?!」
「柊?寝てるのか…?入るぞ…。」
「かっ、一也……っ。」
一也のことを考えていたのが悪かったのか、その一也本人がドアをノックして入って来てしまった。
俺は思わず布団に潜り、一也から隠れてしまった。
「なんだ、起きてたのか。」
「あ…あの…。」
「柊?そんな潜ったら窒息しちゃうぞ?」
「あ…あの俺…っ。」
窒息の前に、心臓がバクバク言って死んじゃいそうだよ…。
どうしてこんな時に…タイミング悪過ぎだってば…。
一也が布団を捲り上げる中、俺はもっと熱が上がってしまいそうだった。
「柊…その…、俺のせい…だよな…?」
「いっ、言わないでいいよ…っ!」
「え…?」
「あんな…たった一回で寝込むなんて…っ、恥ずかしいんだってば…!それに一也のせいじゃないし…っ。」
どちらかと言うと俺自身のせいなんだから。
男のくせに、一回しただけで熱を出すなんて…そんな情けないことを知られたくなかった。
絶対に一也だって心配した後笑うに決まっている。
「柊…こっち向けよ。」
「や、やだよ…っ、だって俺…っ。」
「うん、真っ赤だな…。」
「一也……っ。」
俺は無理矢理布団を剥がされ、真っ赤になった顔を露にされてしまった。
慌てて手で顔を覆おうとしても、一也がそれを阻止してしまった。
「お見舞いにメロン持って来たんだ。おばさんに切ってもらったから食べようぜ?な?」
「な、何それ…余計恥ずかしいよ…っ。」
「ほら、口開けて。あーん?」
「ちょ…一也…っ!」
お見舞いに来られてメロンまで持って来られた挙げ句、食べさせてもらうだなんて…。
それじゃあ子供か女の子の扱いだ。
別にそれが嫌だっていうんじゃないけれど、本当に恥ずかしいんだ…。
「よかった。元気はあるんだな?」
「う……。」
「ほら、メロン。」
「い、いいってば…。」
「柊ー、拗ねるなよ…それとも口移しの方がいいか?」
「も、もうっ、一也いい加減に…っ!」
冷たくて熱いメロンなんて、初めて食べた…。
二つの温度が交じり合って、生温くなったら、メロンなんてあんまり美味しくないはずなのに、物凄く甘い…。
触れているのは金属製のフォークじゃなくて、一也の唇だった。
「美味いだろ?メロン。」
「う………うん……。」
「お見舞いは半分ホントだけど半分嘘。柊に会いたかったんだ。」
「一也…。」
本当に美味しいのは、一也のキス。
俺は口元を押さえながら、首を縦に振った。
そこには悪戯っぽく笑う一也がいて、俺はまた布団に潜り込んでしまった。
今年のクリスマスは、俺にとっては物凄く前進をしたと思う。
来年はもう少し…、次の日にもっと素直になって、ちゃんと準備をして、一也を喜ばせてあげたい。
早くも俺は来年のクリスマスのことを考えながら、サンタクロースがメロンを食べる音を聞いていた。
I wish you a Merry Christmas.
END.