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「貴方の熱に蕩けたい」

ある日、バイトに行こうとした朝、俺の携帯が鳴った。
このメロディは、あの人専用だ…。
画面の「藤代亮平」という文字をしっかり確認して、緊張しながらボタンを押す。


「ぼじぼじ(もしもし)…。」
「どうしたんですか?その声…。」
「がぜびいだ、じごどやずぶ(風邪ひいた、仕事休む)…。」
「ちょ、大丈夫なんですかっ!」
「お~、ねだらだおる(寝たら直る)。」

寝たら直るものじゃないだろう。
何を無理しているんだ、この人は…。


「隼人ー?どうしたのー?」
「あ、そうだお前……いや、なんでもない…。」

近くにいた志摩に、看病に行ってくれるように頼めばいいと思った。
だけどその時、俺の心の中で、浅ましくて醜い思いが湧いてしまったんだ。
あの人の弱っているところを、誰にも見せたくない、と。
一瞬にして物凄く迷ったけれど、何事もなかった振りをして、家を後にした。

バイト中は何も手につかなかった。
あの人が家で一人、うなされているかと思うと。
仕事休ませるのは悪いから、と、シロにも強がりを言ったらしい。
あの人らしいと言えば、とてもあの人らしいと思った。

なんとかなんの問題も起こさず、バイトが終わった。
店で売っているレトルトのおかゆと、ミネラルウォーターを手にして、一目散に走った。
自分の家ではない、その隣の家に。


「藤代さん…?」

前に渡された合鍵で静かに部屋の中に入った。
寝ているのか、または倒れているのか、前者であって欲しいと祈りながら寝室の扉を開けた。


「水島…?あれ…?俺…。」
「大丈夫ですかっ、…大丈夫じゃないなこれは…。」
「いや、寝たら結構よくなったぜ…?声もマシになっただろ?」
「でも…。」

フラフラと起き上がる藤代さんに、思わず手を伸ばした。
今の藤代さんは、無防備で、弱々しくて、脆くて、危なっかしい。
肩を抱いて、起こすのを手伝うと、その熱さにびっくりした。


「汗かいたら熱も下がったしよ。」
「着替えました?」
「いや、着替えてねぇけど…。」
「ダメですよ、ちゃんと着替えないと…。」
「水島…?」
「俺が手伝ってあげますから。」

熱でぽやんとしながら頷く藤代さんのパジャマに手を掛けた。
湿った布地が手にまとわりついて、髪からはシャンプーの匂いが漂った。
その瞬間に、ひどい眩暈を起こした。
自分の手なのに、自分の身体なのに、言うことをきかないみたいに手が勝手に動く。
気付くとそこには、生まれたままの姿になった藤代さんが、真っ赤になって震えていた。


「水島…っ。」
「着替えですよ…。」
「じゃあ早く新しいパジャマ持ってきてくれねぇ…?」
「その前に、身体拭かないとダメですよ。」

近くにあったタオルをお湯に浸して固く絞って、藤代さんの身体にあてる。
灼けるように熱い体温を、直に感じると、欲望が止まらなくなるのは当然のことだった。


「……っ、水島…っ!」
「どうしました?俺は身体拭いてるだけですけど?」
「あ…、悪ぃ…っ、……っ!」
「どうしたんです?藤代さんのココ…。」
「あ、違…、水島っ、やめ…っ!」
「何が違うんです?こんなに勃たせて…。」

タオルで藤代さんのそこを包んでゆるく擦った。
布が擦れる音に紛れて、くちゅりと濡れた音がして、いよいよ抑えが効かなくなった。
熱のせいじゃない、これは、俺のこの人に対する思いのせいだ。


「水島…、来てくれよ…、頼む…っ。」
「いいんですか?もっと熱、出しても…。」

藤代さんからセックスを強請ることは珍しいことではない。
だけど潤んだ瞳と甘えるような声があまりにも可愛くて、意地悪したくなってしまったのだ。
藤代さんは溜め息を洩らしながら、消えるような声で、来てくれ、と言う。


「いいんですね…?言ったのは、藤代さんですよ…?」

<続く>

亮平「いいわけねぇだろうがよ!!」
隼人「俺が藤代さんを…。しかもなんか俺変態っぽいし…。合鍵って…。(ブツブツ)」
亮平「俺こんな乙女ちっくじゃねぇし!なんで俺から強請ってんだよっ!気持ち悪ぃ!」←そこじゃねぇだろ
隼人「もう俺嫌だこれ書いてる人…。(涙目)」

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