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「貴方の熱を感じたい」

恋人のことというのは、何に関しても気付くものだ。
隠し事をしている時の疚しい心や、具合が悪いといった身体の変化に至るまで。
自らの全神経は其の人間へと向けられているのだ。
其れは厄介で在りながら、自分だけが味わえる幸福なものだ。

日頃余り病気と言った病気をしない洋平も、この時ばかりは違うのを、銀華は見逃さなかった。
洋平が何時ものように花屋での勤務を終えて、自宅へ戻って来た時のことだった。


「どうしたのだ。」
「え?何?」
「お前の声、何時もと違うな。顔も紅い。」
「…あ~、もしかして。」

どうした、などと白々しいことを言ってみる。
本当は、昨晩熱い契りを交わしている最中から気付いていたと言うのに。
喘ぐ声の掠れ方が何時もと違う音色と言うことも、触れる肌の温度が違うと言うことも。
繋がった箇所の温度が、僅かに高いと言うことも。


「風邪かな…、今流行ってるからなー。」
「熱は有るのか。」
「いや、多分ないと思うけど…測ってないからわかんねーし…。」
「では私が測ってやろう。」

何も知らずに質問に答える洋平の額に手を伸ばす振りをして、銀華はきつく抱き寄せた。
背中に回した手を、瞬時に下部へと移動させる。
腰骨を厭らしくまさぐり、下着の中に手を滑り込ませ、あの熱い双丘の割れ目に指で触れた。


「ぎ、銀華…っ?!」
「どうしたのだ。熱を測ると言っている。」
「や、でもそこはちょっと違…。」
「知らぬか?直腸が一番正確だと言うことを。」
「や、でも体温計あるし…っ!」
「私はその様な機械の値など信じない。あぁそれとも…。」

驚いた洋平の身体が跳ねて、一瞬にして体温が更に上昇していく。
未だ銀華の指はその体内へは入ってはいないというのに、内部からひくつく筋肉の動きで空気が漏れる。
抱き締めたまま、耳朶を甘く噛みながら、銀華は息を洩らすかの様な声で囁いた。


「感じているのか。」

銀華の妖しい微笑みに囚われた洋平は、ゆっくりと目を閉じながら、無言で頷いた。
溜め息を洩らしながら、銀華の細くてしなやかな肩に掴まった。


「汗を流せば、その熱も下がるのではないか?」
「銀…っ、あ…!」
「あぁ、違うな、先程よりも熱くなっているな、お前のここは…。」
「…アッ!銀華…ぁっ!」

今か今かと待ち構えていた洋平の蕾に、銀華は引き寄せられる様にして指を挿し込んだ。
恐ろしい程に食らいついてくる洋平の其処の温度は、自分だけが知っている。
それは永久に下がることなどない、情欲の熱を秘めているのだ。

そして今宵も、其の熱を感じたい。
其れしか生きている意味などないみたいに。

恋とは、厄介で、幸福なもの。

<続く…のかよ…?>

銀華「ほう、此れは何時もと違って真面目だな…。」
洋平「銀っ、感心してんなよっ!」
銀華「どうしたのだ。顔が紅い…。熱を測った方がよいな。」
洋平「い、いいって!!やめ…、あっ、銀華────…っ!」←ホントにやめろ

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