「100点満点ラヴァーズ」-1





毎月月末は戦いの日だ。
進学校というわけではないけれど、俺の通う学校では、毎月一科目ずつ集中して、実力テストというものが行われる。
そして今日はその結果発表の日。
わざわざ順位貼り出すなんて、今時古典的なことしてるなぁ、なんて最初は思ったけど、俺にとってはあいつに勝ったという重要な証拠なのだ。


「あ、長谷川。」

その敵が貼りだされた廊下にやって来た。
俺は貼り紙を指差しながら、そいつに向かって笑いを浮かべた。


「やっぱり今回も長谷川が一位か。残念。」
「当たり前だ、志水には負けない。」

勝った、今回も、二位の志水に俺は勝った。
万年二位の志水青は同じクラスの奴で、爽やかなルックスと、優しい台詞で女の子にモテモテだ。
俺はというと、そんな志水とは反対に、背は小さいわ、顔もカッコよくないわ、強気な性格だわ、まったくと言ってモテない。


「志水く〜ん、残念だったね〜。」
「あたしも応援してたのにぃ。」

それじゃあまるで俺に負けろって言ってるみたいじゃないか。
悪かったな、俺が勝って。


「う〜ん、頑張ったんだけど、やっぱり長谷川には勝てないよ。満点だし。」

さらりとそんなことを言って微笑むと、 たちまち女の子はうっとりする。
決して頭がよくても俺みたいに鼻高々になったりしないし、性格含め全般がいいから、そりゃあモテるのも仕方ないと思う。



そう、表向きは。






今回も一位だったけど、安心はできない。
志水とは5点差だ、あとちょっと、一問で負けるところだった。
そう思いながら、俺は放課後の教室で一人勉強をしていた。
だんだん夏が近付いたこの時期は、クーラーのついた教室は
勉強するには最適な場所なのだ。
がちゃり、と教室のドアが開いた。
背の高い人物がそこに立っている。
俺も思わず立ち上がる。


「こんな時間まで勉強?」
「今回危なかったからな。」

来るなよ、俺の近くに。
だってお前が近付くと…。



「なんでか教えてあげようか?」
「いいっ、いらないっ、いいから!!」

志水が微笑しながら俺の耳元で囁くと、クーラーが効いてるのに、俺の額に汗が滲んで、
それはたちまち粒状になって頬へと伝った。








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