「神様は恋に夢中」-6




「ん〜…?アオギぃ〜?いないの〜…?」

シマが目を覚ましたのは、それからすぐだった。
俺が隣にいないことに違和感を感じたのか、眠い目を擦りながら布団の中でモゾモゾと動いている。
普段はこの甘い声を聞いてしまったら、可愛くて仕方がなくて抱き締めたくなるところだが、俺は何とかその衝動を抑えた。


「悪いな、急にやらなきゃいけないことがあるんだ。今日はまた瑠璃と遊んでてくれるか?」
「お仕事…?」

シマはまだ目を擦りながら、何とか身体を起こした。
俺は一旦机から離れ、起き上がるシマの背中を支えた。


「あぁ、そうだな。仕事…だな。」
「そっかー、わかったの…。」

布越しでもわかる体温が、掌に浸みて、何だか泣きそうになってしまった。
俺はまだこんなに小さくて頼りない背中を、置いて行こうとしていたのか…。
例え咄嗟に出た言葉でも、猫に戻そうとしていたなんて…。
何も方法がなくて遠くへ行くのはどうにもならなかったとしても、そんなことはできそうにない。
この姿をこの世界からなくすことなんてできるわけがなかった。
この身体も心も、離すことなんてできるわけがなかったのに。


「すまんな。桃と紅ももう起きてると思うから。」
「うん、いい匂いするもんねー?今日の朝ご飯は何かなー?」
「あ…、その…ご飯は…。」
「大丈夫だよ!一人で食べるの頑張るから!アオギがお仕事頑張るから、僕も頑張るの!」

アオギが頑張るから僕も頑張る。
アオギがこう言ったから僕もそうする。
アオギがそうしたから僕もそうする。
俺はまだ何も知らないシマをこの姿に変えて、色んなことを教えてきた。
俺以外の奴が何も言っても聞かないぐらい、自分の色に染めてきた。
『そんなの…神様じゃない…っ。』
投げ付けられた桃太の言葉が頭を過ぎって、胸の奥に突き刺さる。
そうだ、俺は神様失格だ。
このシマを置いてどこかへいなくなっていたら、そんな罪悪感に苛まれた毎日を過ごしただろう。


「アオギ…?どしたの…?」
「んー…シマにゃんこは温かいなぁ…。」

俺は堪らずシマの身体をぎゅっと抱き締め、深い溜め息を吐いた。
何としてもこの小さな身体を守らなければいけない。
使命感にも似た強い思いと、何も知らずに俺を慕うシマの愛おしさに、耐え切れなくなってしまったのだ。


「??変なのー。」
「変か?」
「うん、変だよ?いつものアオギとなんか違うもん。」
「そうかぁ?」

シマの体温と柔らかさを感じながら、目を閉じた。
シマの言う通り、俺は変かもしれない。
いつもの俺じゃないかもしれない。
初めて会った時は、こんなに夢中になるなんて、思ってもいなかった。
俺は自分で思っていたよりもシマのことが好きで、シマが大事だ。
こんな自分は、今まで生きてきて初めてだったから、変に見えるのは当たり前だ。


「お仕事終わったら遊んでね?あのね、志摩ちゃんのとこにも行きたいの。」
「そうだな、いっぱい遊ぼうな。志摩ちゃんのところにも行こうな。」

俺は名残り惜しみながら、シマの身体を離し、頬に触れるだけの軽いキスをした。
だけどくすぐったさに顔をしかめる顔まで可愛くて、また抱き締めたくなるのを我慢するのが大変だった。



***



「待たせたな、瑠璃。出かけるぞ。」

俺が「仕事」を終えたのは、翌日の朝だった。
瑠璃はまるで前からここにいたみたにに、桃太や紅丸、そしてシマと一緒に食卓に着いていた。


「あっ、は、はいっ!ちょっと待ってくださいこれを片付けて…。」
「あぁ、いいぞ。ゆっくり食え。」

まだ食べている途中だった瑠璃は、箸を置いて席を立とうとした。
いくら急いでいるからと言っても、大猫神のところまでは長い距離だ。
飯も食わせずに行ったのでは、まだ小さな瑠璃は途中で疲れ果ててしまうだろう。


「じゃ、じゃあ青城様もご一緒に…。」
「ん?あぁ、そうだな、もらうか。桃、すまんが俺の分も…。」
「え…!あ…は、はい…!い、今用意します…。」

俺はいつもの通り桃太に準備を命じたが、桃太は何だかよそよそしかった。
それもそのはず、あの大激怒以来、俺と桃太は口をほとんど利いていなかったのだ。
俺は部屋に閉じ籠もりっきりだったし、何かあれば紅丸が来ていた。
それも多分、桃太が行ってきてと頼んでいたに違いないだろうけれど。


「きょ、今日は青城様の好きなスープにしました…。」
「おぉ、本当だ。朝から大変だっただろう?」
「べ、別に…。朝作るのも夜作るのも同じですから…。」
「ん、美味い。桃太の作るご飯はいつも美味いな。ありがとうな。」

桃太は相変わらず気まずそうに、俺と目線を合わせないまま、俺の目の前にスープを置いた。
それは俺がここに来て、一番美味いと褒めたスープだ。
野菜を切るのが大変だからと、いつもは夜にしか出て来ないものだった。
俺はいつも以上に早起きをして頑張った桃太の姿が頭の中に浮かんで、思わず礼を口にしていた。


「な、なんですかいきなり…!い、いつもはお礼なんか言わないのに…気持ち悪いです…っ。」
「おいおい、気持ち悪いとは失礼な奴だな!」
「だ、だって…。」
「まったく…俺だって礼ぐらい言うんだからな?自分の好物が出てきたら、そりゃ感謝はするだろう?」

そういえば俺は、桃太や紅丸にきちんと礼を言ったことなんてなかったかもしれない。
ご飯を作るのも掃除をするのも、身の周りの世話をすることが従猫として当たり前だと思っていたからだ。
その「当たり前」に甘えて、感謝をすることまで忘れていたのかと思うと、改めて自分は神様失格だと思わされる。
魔法を教えることももちろん大事だけれど、そういうことも一緒に教えなければいけないのに、逆に教えられてしまったようだ。


「青城様、ずっと寝てないから…体力つけてもらわないといけないと思って…。」
「あぁ、確かにこれで体力がつきそうだな。」
「途中で倒れたら大変だし、げ…元気で帰って来てもらわないといけないと思って…。」
「桃……。」

桃太があんなに怒っていたのは、俺に隠し事をされていたことがショックで、その内容もショックだったからだ。
普段は神様扱いをしていなかったけれど、心の中ではきちんと認めてくれていた。
そんな俺に裏切られてしまったことがショックだったのだろう。
そうでなければ、桃太の目がこんなに真っ赤なわけがない。
すぐに思い上がる俺でも、はっきりとわかる。


「シ、シマにゃんもちゃんと自分で食べてるんだよね?昨日より上手くなったもんね?」
「ねー?」

桃太は照れ隠しからか、向かいに座るシマに話題を向けた。
ダラダラと零しながらも一生懸命スプーンを使うシマは、いつもと変わらない笑顔だ。
今俺に起こっていることなんて何も知らずに、その眩しい笑顔を俺に向ける。


「アオギ、また大猫神様のところ行くの?そしたら僕ね、こないだのいちごがいいの。」
「ん?土産か?そうだな、見つけたら持って帰って来るよ。」
「やったー、いちごいちご!桃ちゃん、いちご!」
「うん!よかったねぇ、シマにゃん。」

持って帰って来る。
俺は絶対に、ここに帰って来る。
桃太はそれに安心したのか、さっきまでの強張った表情が一気に解けた。
やっぱり桃太は笑っている方がいい。
それは俺だけでなく、隣で静かに見守る紅丸も同じだった。


「じゃあ行って来る。夜までには戻ると思うけどな。」
「はい、今朝のスープ温めて待ってますね。掃除もしておきます。洗濯も…。」
「お、おれも手伝って待ってるから…。」

朝飯を済ませた後、急いで準備をして、俺は瑠璃と共に玄関にいた。
いつもみたいに待っています、だから絶対帰って来てと、桃太と紅丸は言いたかったようだ。
何だかんだ言っても、まだこういうところは可愛いんだよな…。


「ふえぇ瑠璃ちゃ〜ん…、えっえっ、また遊びに来てねぇ?元気でねぇ〜…?」
「う、うん、絶対遊びに来るよ!またげーむ、しようね?」
「うん、えっぐ…、する〜…!」
「またね、シマにゃん。また遊ぼうね?」

シマはせっかくできた友達と別れるのが寂しいみたいで、見送りの間ずっと泣いていた。
瑠璃はそんなシマに対して、涙を見せることはなかった。
自分の方がシマよりも大きいから、泣くわけにはいかないと堪えていたのだろう。
もうここに来ることなんて、ないかもしれないのに…。


「じゃあ…、行って来る。」
「はい、気を付けて行って来て下さいね!」

シマの泣き顔には後ろ髪を引かれる思いだったけれど、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
俺は瑠璃を連れて、もう一度あの大猫神が待つ場所へと向かった。


「緑葉!おい緑葉、そこにいるんだろう?出て来い。」

それから数時間後、俺と瑠璃は大猫神の近くまでやって来た。
途中で足が痛くなった瑠璃を抱えて飛んで来たから、予定よりも随分と早く着いた気がするけれど、早い分には越したことがない。
大きな木の上の方に向かって、緑葉の名前を呼んだ。


「な…何?何の用?青城に命令される覚えは…。」
「なんだやっぱりいるじゃねぇか。さっさと降りて来いよ。こっちは急いでるんだから。」
「あ、相変わらず勝手だね!何なのそのエラそうな態度!」
「そりゃお前よりはエラいからな。まぁいいから俺の話を聞けよ。」

緑葉はブツブツと文句を言いながら、木の上から降りて来た。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、とはよく言ったものだ。
俺の反撃は、まずはこの緑葉と会うことから始まった。


「俺が最北に行けと言われたことは知ってるな?とぼけたって無駄だぞ。」
「し、知ってるけど…。それが何か?」

俺は持っていた水筒から、緑葉の好きそうな甘いお茶を差し出した。
お茶にミルクと砂糖を入れたものだが、緑葉は小さい頃からこれが好きで、作ってやると喜んで飲んでいた。
中に何が入っているかなんて、何も知らずに。


「ほら、俺も一匹だと寂しいだろ?人見知り…いや、猫見知りってのか?知り合いがいないところに行くのはなぁ…。」
「ふ、ふんっ、青城がそんな繊細なわけないじゃない…。」
「そこでだ、緑葉。お前に一緒に来てもらおうと思ってな。」
「はぁ?!げほっ、ごほ…!な、なんで僕が?!」

俺が言ったことに緑葉は驚き、思わず飲んでいた茶で咽てしまった。
それはそうだろう、緑葉は俺のことを良く思っていないし、俺も緑葉を良くは思っていない。
そんな奴から一緒に次の担当の場所へ行こうなんて、普通は言われるとは思わないだろう。


「なんでって…あっちの相性は結構良かっただろう?昔を思い出したら燃えると思うんだがな。」
「な……!へ、変態…っ!だ、誰が青城なんかと…っ!」
「大猫神に触られてないんだって?代わりに俺が触ってやるよ。そろそろ身体も熱くなってきただろうしな…。」
「え…身体……?まさか…こ、これに何か入れたのっ?!」
「俺特製のアレだ。ほら、昔飲んだことあるだろ?久々だったから作るのにほぼ一日かかっちまったけどな。」
「ふ…ふざけ……っ、あ……!」

俺は一日部屋に籠もって、いわゆる催淫薬のようなものを作っていたのだ。
昔から自分より小さな猫を抱くことが好きだった俺は、それはもうそういう研究を熱心にしていた。
その実験台になっていたのが緑葉で、今みたいに大好きな飲み物に混ぜて飲ませたりした。
まさかあれから何年も経って同じ手に引っ掛かるとは思っていなかったが、そういうところは緑葉は変わっていない。
昔はそれがまた可愛くて、何度も同じ方法で引っ掛けたものだ。


「効いてきたみたいだな。」
「ひ、卑怯者…っ!ぼ、僕は行かないからね…っ!青城となんか…っ!」

緑葉は膝をガクガクと震わせ、その場に座り込んだ。
熱に浮かされて涙を浮かべながらも、強い目で俺を睨み付ける。


「えー、どうしようっかなぁ。そんなこと言うならこれ、大猫神に見せちゃおうかなぁ?」
「な…っに……?」
「瑠璃、あれを出してくれ。」
「あ…、は、はい…!よいしょっと…。」

瑠璃は背負っていた荷物の中をガサガサと漁り、四角くて薄い機械を出した。
それを開いて俺が言う通りにボタンを押すと、画面に幼い頃の緑葉が映し出される。


「アレを飲んだ時のお前と俺を、映像にしてみた。大変だったんだぞ、記憶を映像化するなんて。まぁでもさすが俺だよな、できないことはないっつーか?」
「はぁ……っ?!ちょ…ふざけないでよ…っ!そんなもの何に…っ!」
「これを大猫神に見せれば、お前が俺に夢中だってわかるだろ?連れて行くことを許してもらえると思ってな。」
「な…に言って……っ。」
「結構良くできてると思わないか?売り物にもできそうだろ?」
「へ、変態…っ!最低…っ!そんなことに魔法を使うなんて…青城のバカ……っ!」

そこには薬を飲んで今と同じような状態になった緑葉と、俺が映っていた。
熱に浮かされて俺に触ってと強請り喘ぐ姿は、俺の記憶を辿ったものだ。
俺は薬を作るのと同時に、自分の頭の中の映像を映し出すという作業をしていた。
緑葉の言う通り、変態でも最低でもいい。
そんなことに魔法を使うなんて、バカな神様だということはわかっている。
大猫神が緑葉を使ってきたなら、俺も緑葉を使って反撃をする、それだけのことだ。
俺はあの小さな背中を守るためなら、どんな方法でも使ってやる、そう決めて考えついたのがこれだった。


「何とでも言ってろ。瑠璃、こいつを縛ってくれ。急ぐぞ。」
「え…!で、でも…。あ…は、はい…。緑葉さん、ごめんなさいっ!」
「瑠璃までそんなことするの…っ?う……も、もうダメ…っ。」

瑠璃は躊躇したものの、神様である俺の命令に従った。
緑葉の強い目は緩むことはなかったけれど、もう身体が動かないのだろう。
自分よりも小さい瑠璃に、されるがままになっていた。
そんな緑葉も、逆らえない瑠璃も気の毒に思ったけれど、今更そんなことを思っても仕方がない。
俺は手足を縛られて自由が効かなくなった緑葉を連れて、大猫神の元へと急いだ。


「おお青城、決意はできたのか。わざわざ来なくても手紙で良かったんだがな。」
「決意…はできました。ただ、一つ頼みがあります。」
「何だ、例の小さな猫を連れて行きたいとでも言うのか?それはいかんぞ。それでは最北へ行く意味が…。」
「いえ、大猫神様のところの猫を一匹連れて行きたいのですが…。」

大猫神は余裕の笑みを浮かべて、俺を出迎えた。
その顔が歪むのも、あと少しだ。
そう思うと俺の方が笑いたくなってしまって、堪えるのに必死だった。


「いいだろう。お前も確か、小さいのが好きだったな。では…。」
「いえ、緑葉を下さい。」
「何……?」
「聞こえませんでしたか?緑葉ですよ。褒美をあげていないということは、もう必要ないんでしょう?」
「そ…れは…。」
「おや?違いましたか?」

大猫神は明らかに動揺して、今にも冷や汗が出てきそうな勢いだった。
俺は小さい猫が好きだと思いこんでいたために、まさかそこで緑葉の名前が出て来るとは思わなかったようだ。
俺の作戦は、ほぼ成功したらしい。


「あ…おぎ…っ、も…ダメ…っ。」
「いやぁ、緑葉も久し振りに会って俺への思いが溢れてしまったようで…。」
「な……!お、お前またおかしな薬を…っ!」
「はぁ…っ、青城ぃ…っ。」
「おかしな薬だなんて…大猫神様にもあげたじゃないですか。随分楽しんだでしょう?」
「ふざけるな…っ!お前っ、私を誰だと…!や、やめろっ、緑葉に触るな…っ!」

俺は何とかしてくれと喘ぐ緑葉の胸元を肌蹴けさせ、掌で撫で回した。
大猫神は普段の冷静さを忘れ、余裕の欠片もない表情で、俺と緑葉のところまで走って飛んできた。
こんな大猫神を見るのは初めてで、俺の方が焦ってしまいそうだった。


「大猫神さまぁ…っ、ごめ…なさ…っ。」
「もういい、何も話すな。こちらへ来い。」
「う……大猫神さまぁー…。」
「青城、お前…。」

緑葉は泣きながら大猫神に抱えられ、俺の手から逃れた。
俺だって本当に触る気も、抱く気もなかった。
あの映像だって見せるつもりもなかった。
第一あれに映っている俺も緑葉も今よりも若いのに、見せたところで信憑性なんてないのだから。
そもそも緑葉を一緒に連れて行こうなんてことも、本気で思っていなかった。
だけどこのひねくれ者の大猫神を何とかするには、こういう方法しかなかったのだ。


「そろそろ言ってやったらどうですか?好きなのは緑葉だけだって。このままじゃ他の猫達も可哀想だ。」
「わ、わかった振りをするな…。」
「プライドも大事かもしれないけど、一番大事なのは緑葉じゃないんですか?俺とシマの話をどこかから聞いてそう思った、違いますか?」
「お前は昔から…生意気なことを言う…。」
「生意気ついででお願いなんですけどね、俺の異動も取り消してくれます?」
「し、仕方ないだろう…。まさかお前にここまで悟られるとはな…。」

大猫神は諦めたように溜め息を吐いて、がっくりと項垂れた。
それは大猫神なんて役職も何もない、ただの恋する雄猫に見えた。
俺はそんな大猫神が弱っているのを狙って、自分の異動取り消しという大きなものを掴むことができた。


「俺も、まさか自分の上司の恋の世話までするとは思いませんでしたよ。ホンットひねくれてんなぁあんた。」
「お前はそういうところが生意気だと先程から言っているのだ…。」
「まぁまぁ、緑葉のこと、大事にしてやって下さいよ。それですべてオッケーじゃないですかね?」
「何がオッケーだ…まったく…。」
「あぁそうだ、何か誤解しているようですけど、緑葉の浮気相手は俺じゃないですよ?俺が今抱くのは、シマだけですから。」
「お前やっぱり…。ふんっ、お前もせいぜいそのシマとやらを大事にするんだな…!」

大猫神は長い髪をくしゃくしゃと掻いて、俺を恨めしそうに睨んだ。
それでもきっと、こうなって欲しいと望んでいたのだろう。
緑葉を抱く腕は優しくて、まるで愛おしいと言っているみたいだったから。
俺はそんなひねくれ者の神様と、昔可愛がった猫が上手くいくことを、心から願った。





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