「MY LOVELY CAT」その後の二人編「MY SWEET DAYS」-2




「志摩ぁ…ごめんなさい…!」
「え?ど、どうしたの??」
「うんと俺…せっかく可愛がってもらってたのに…。」
「虎太郎?」
「俺の前にいた猫もいなくなって、俺までいなくなって…志摩は寂しんぼなのに俺…。」
「虎太郎ぉ〜…。」

俺は猫神様から聞いてしまったのだ。
俺の前に飼っていたシマという猫を、志摩は物凄く可愛がっていたこと。
そのシマを猫神様にあげちゃって、志摩はとても寂しがっていたこと。
そして隼人がそんな志摩のためにもらって来てあげたのが、俺だって言うことも…。
それなのに俺は突然に人間になるとか言って、いなくなってしまった…。


「ごめんなさい志摩…。」
「えへへ、大丈夫だよ!だって虎太郎はすぐ隣にいるもんね?」
「そうだけど…。」
「それに虎太郎が幸せになれるのは嬉しいもん。だから俺反対しなかったんだよ?大丈夫だよ虎太郎!」
「志摩ぁ〜…!」
「わっわっ、虎太郎ってば今はもう猫じゃないんだから…。」

志摩…なんていい奴なんだ!!
俺は志摩に飼ってもらえて幸せだ!
どうして志季はこんな志摩をいじめたりするんだろう?
こんなにいい奴なのに…こんなに可愛いのに…。


「ふぅん…。僕なんかやめて志摩にすれば?」
「わあぁ!!志季っ!び、びっくりしたー!!あっ!遊びに来てくれたのか?」
「別にっ!買い物行くだけ!!虎太郎には関係ないでしょ?!」
「へへっ、俺も一緒に行く!志季ぃー俺もー。」

その時急に後ろから声がして、振り向くとそこには志季が立っていた。
なんだ…思い直して遊びに来てくれたかと思ったのに違うんだ…。
でもいいか…、買い物…街に出るのに一緒に行けばいいんだよな…。
それでもっと志季と仲良くなったら、ラブラブっぽくなるかも…!


「ついて来ないで!」
「えー?なんでだよー?俺も行く!おやつ買って?志季ー。」
「虎太郎は志摩と遊んでれば?!いい?絶対ついて来ないでよねっ!!」
「志季ぃ〜…。」

また怒られてしまった…。
どうして志季はすぐに怒ってしまうんだろう?
俺が悪いのかな…俺、何か悪いことしたっけ…??
そんな風に強く言われると、無理矢理ついて行くことだって出来なくなってしまうじゃないか。


「虎太郎、ごめんねっ!」
「え?なんで志摩が謝るんだ…?」
「俺がここにいたから…それで志季怒っちゃったんだよ…。」
「え…?それって、それって…!」
「あの…多分だけど…、俺は志季じゃないからわかんないけど…、ヤ…ヤキモチだと思う…。」
「ええぇ?!」

ヤキモチ…。
志季はそんなこと絶対にしてくれないと思っていた。
いつもみたいにただ俺が遊んでばかりいるのが気に入らなくて、それで怒っているのかと思ったんだ。
それにしてはいつもとちょっと違うなぁと思っていたけれど…そんなことだったなんて…!


「虎太郎?どうしたの?虎太郎?」
「志摩…、俺頑張る…!俺、志季とラブラブになるっ!!」
「う…うん、が、頑張って!」
「絶対ラブラブになるんだっ!志摩も応援しててっ!!」

俺は志摩の慰めと励ましを受けて、またやる気を出すことが出来た。
俺にとっては志摩はやっぱり大事な人なんだ。
ただし恋とか愛とか、そういう気持ちはまったくない。
俺を可愛がってくれた飼い主に対しての感謝とか尊敬みたいなものだ。
それを志季にもわかって欲しいと思うのは、俺の我儘なのかな…?


「志季ー!あの俺…。」
「わっ!!こ、虎太郎…。痛…っ!!」

志摩に対する俺の考えを話そうと、志季が買い物から帰って来たのをこっそり見計らって、勢いよくドアを開けた。
志季は台所に立っていて、辺りには買い物して来た食べ物が散らかっていた。


「志季っ!!」
「わ…ひゃ…!!な、何すんの虎太郎…っ!!」
「大丈夫か?痛くないか?志季、泣くなよ?!」
「こ、こんなことぐらいで泣かないって…ちょ…もう離して…っ!」

志季は包丁を持っていた手を滑らせ、少しだけ手を切ってしまったみたいだ。
すぐに俺はその手を取って口の中に入れて、舌先を使って丁寧に舐める。
大事な志季の大事な手に傷か残ったりなんかしたら大変だ。


「志季…料理…、料理してたのか…?」
「こっ、これは違…っ!」
「志季、料理苦手だったんじゃないのか…?もしかして俺のために…?」
「何勘違いしてんのっ?!ち、違うって言ってるでしょ!!た、ただ包丁で遊んでただけ!!勝手なこと言わないでよっ!」

でも志季…、俺バカだけどわかるよ…?
包丁で遊んだりなんかしたら危ないに決まってるし、そんな遊びする奴なんかいないって。
志季は料理をしていたってことぐらい、見ればわかるのに…。


「志季ぃ〜…。」
「何甘えてんのっ?!虎太郎は志摩と一緒にいればいいでしょ?!」
「志季…それってあの…。」
「志摩の料理が美味しいっていっつも言ってるじゃないっ!ずっと志摩の傍にいれば?!」
「志季、俺そういうんじゃ…。」
「虎太郎は志摩が大好きなんでしょ?志摩とくっ付いてればいいんだっ、僕なんか放っておいてよ!」

どうしよう…!
俺、物凄く嬉しい…!!
志摩…、やっぱり志摩の言ってたこと、本当だったみたい…。
真っ赤になって怒る志季が俺の目を見ないで言っていることは、ヤキモチみたいだよ…?


「へへっ、志季〜♪」
「な、何っ?!ちょっともう離してってば…!!」
「やだ、離したくない!俺志季のこと好きだから離したくないっ!」
「もうっ、何言ってるのっ?!バカっ、離してって………ん…っ、んー……っ!」

可愛い志季、俺の志季。
俺だけが見れる、志季の可愛いところ。
猫だった時はこんな日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
こうして志季を抱き締めることも、ちゅーをすることも…。


「志季ぃ、たまには志季からちゅーしてくれ!」
「はぁ?!な、何調子に乗って…。」
「えー…だって志季一回もしてくれたことない…。」
「バカじゃないのっ?!そんなこと出来るわけ…。」
「俺バカでもいい!志季がちゅーしてくれるならそれでいい!志季、ちゅーしてくれっ!」
「そういうことじゃないでしょ!もうっ、いい加減にしないと…。」

志季、俺のこと好きだって言ってくれたよな?
俺とずっと一緒にいるって言ってくれたよな?
俺は志季が言うようにバカだから、ちゃんと言ってちゃんと行動にしてくれないとわからないんだ。
ごめん、志季…俺みたいなバカを好きにさせちゃって…。


「し……。」
「んー……っ!!こ、これでい…。」
「志季…ここ顎…。」
「………!!も、もう終わりっ!!あっち行ってよもう!!」

初めての志季からのちゅーは、見事に的を外れてしまった。
口では強いことばっかり言っているけれど、そういうところが好きだと思う。
交尾もしたことがなくて待ってって言った時も、抱き締めた時も、ちゅーをする時も…。
志季の身体がカチンコチンに固まって、熱が上がったみたいになって、心臓がドキドキ言ってるのが面白い程わかるんだ。


「志季ぃ…。」
「な、何……え…?!」
「ちょっとだけ…、触っちゃダメ…?俺、志季に触りたい…。」
「な、ななな何言って…っ、ダメに決まってるで……ん…っ!」

その固まった身体に触れたくて、でももっと熱くさせたくて堪らないんだ。
ちゃんと身体も一つになりたいって思うんだ…。
そうすれば志季も前よりは俺に優しくしてくれるかもしれない。
俺のことをもっと好きになってくれるかもしれない。


「志季…、志季…っ。」
「ちょ…あっ!どこ触…っ、や…!」
「んー?志季のおっぱいー。可愛いな…。」
「バ…バカぁ…っ、やめ…っ、やめてって言ってるでしょ!!!」
「んわっ!!いててて…!!」
「いい加減にしてよっ!!なっ、ななな何発情してんの…っ!!」

あーあ…俺って本当にバカだなぁ…。
志季は待ってって言ったのに、俺も待つって言ったのに、すぐに忘れてしまうんだから。
やっぱり思い切り殴られてしまったじゃないか。


「うんと、ごめんなさい!」
「あ、謝るぐらいならしないでよね…っ。」
「うん、俺我慢するって言ったもんな!よーし交尾は我慢するぞ!うん、俺頑張る
っ!」
「だからそういうこと言わないでってば…!」

ぎゅっと抱き締めた志季の身体は、小さく震えていた。
そうだった…志季は恐いって言っていたんだ…。
いつか恐くなくなったらしてくれるって言ってたんだよな…。
でも志季には悪いけど、そういうのも俺は幸せだと思うんだ。
志摩や隼人の前では恐いなんてことは言わないし、そういう顔もしない。
それがすごく可愛いって、世界一可愛いって思うんだ…。


「志季ー♪」
「もう離してってば…!」

志摩の話は今度にしよう。
志季が優しくならなくてもいいことにしよう。
このままの志季が可愛いからもういいことにしよう。
俺の世界は全部志季を中心に回っているんだ…。


「へへー、志季可愛いー!真っ赤だー。」
「う、うるさいっ!!」

抱き締められながらそっぽを向いてしまった志季は、耳まで真っ赤になっていた。
これ以上何か言ったら、きっと本気で怒ってしまうだろう。
だけど俺は言い続けようと思う。
だって俺の気持ちは本当だし、志季がほんのちょっとだけでも素直になってくれたら嬉しいから。
だから俺は毎日毎日、いつでもどこでも、こう言うんだ。


「志季ー、好きだぞ!大好きだ!」
「しつこいってば!!もうあっち行ってって言ってるでしょ!!」

ラブラブっていうのには、まだまだ遠いかも…?







END.





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