「メルティング・バースディ 2」-1




「シロー?ケーキ食うぞー。」

シロはいらないと言ったけれど、結局途中でケーキを買って帰って来た。
やっぱりなんだか二人きりで祝いたかったからだ。
俺の自己満足かもしれないけれど、本当に何もせずに終わるのは味気ないと思った。


「オレいいって言ったのに。」
「んじゃ食わないか?俺一人で食うぞ。」
「えっ、それはやだ。」
「ぷ…、やっぱり食いてぇんじゃねぇか。」

いらない、なんて口だけなのは知っていた。
シロは甘いものならいくらでも腹に入る奴なんだ。
こんなに痩せているくせに、俺よりも食う時だってある。


「うん、食う〜。」
「んじゃほら座れよ。」

ダイニングの椅子に腰掛けると、俺は自分の膝の上を指差した。
くっ付くのが好きなシロのための、ここは指定席だ。
テーブルの上にケーキを置いて、軽すぎるシロの身体を抱き上げて座らせる。


「蝋燭…、うわ、なんだよ10本しか入ってねぇのかこれ。」

付属の蝋燭のい袋を開けようとすると、中には10本しか入っていないことに気付いた。
シロは人間で言うと今年で18になる。
それも猫神の奴がそれぐらい、と言った適当な歳だけど。


「亮平、オレ2本でいい。」
「は?2本?…あぁ、そうか。」

うっかり忘れてしまっていた。
去年の誕生日は、蝋燭が1本だったこと。
それはシロの初めての誕生日、ここから始まるという意味を込めて1本にしたのだ。
それで携帯電話が欲しいなんて言うから同じ機種の白を買ってやったんだ。
あの時もシロはバカみたいに喜んでくれたんだっけ。


「よし、シロ、電気消してくれ。」
「うんっ!」

シロが立ち上がって蛍光灯からぶら下がった紐を引っ張って、部屋の電気が消えた。
暗闇に浮かぶ蝋燭は、去年のちょうど二倍の明るさだ。
ゆらゆら揺れる小さな蝋燭の炎が、シロの白い肌を照らす。
去年同様歌は勘弁してくれと言うと、シロが自分でハッピーバースディを歌った。
きっとシマか誰かから聞いて覚えたんだろうけれど、それがまた俺と同じぐらい下手くそで吹き出しそうになってしまった。


「シロ、誕生日おめでとう。」
「ありがとう!」
「ほら、火消して。」
「うんっ、ふー…っ。」

たった2本の蝋燭は、少し吹いただけで消えてしまった。
何も明かりがなくなった部屋の中で、振り向いたシロにキスをする。
実はイベント好きでロマンチストなのはシロよりも俺なんじゃないかと思った。


「んじゃ食うか。」
「うん!電気点ける!」

再びシロが立ち上がって、電気を点けると、部屋が一気に明るくなった。
まだ蝋燭の炎が目の中をチラチラと燃えているみたいだ。
また俺の膝の上に座ったシロが、やけに眩しく見えてしまう。


「シロ、こっち向けよ。」
「え…オレ自分で食べれる…。」
「いいから、ほら口開けろ、な?」
「うんっ、へへっ。」

フォークにケーキを突き刺して、シロの口まで運ぶ。
隣に座らせた方が楽なのはわかっている。
シロが自分で食った方が楽なのもわかっている。
だけどどうしても俺は、今はべったりしたかった。
それこそシロが言う、くっ付いていたい、そんな気分でいっぱいだった。


「シロ、ついてる。」
「ん?どこ……っ、亮平…っ。」

俺はもしかしなくても、こうなることを狙っていたのかもしれない。
いや、仕組んだと言ってもいい。
シロの口の周りについてしまった生クリームを、舌先で丁寧に舐めてやる。


「ほら、シロ。」
「りょ、亮平…、恥ずかしい…。」
「誰も見てねぇからいいって。」
「でも…っ、猫シロが…っ、ん…!」
「あ?シロにゃんはおねんねしてるからいいんだよ。」
「でもりょうへ…ん…!」

次に俺はフォークに刺したケーキを、自分の口に入れてからシロの口まで運んだ。
さすがのシロも恥ずかしくなったのか、一度は顔を背けた。
リビングの方では床に猫のシロがいたけれど、日中遊び回って疲れて眠っている。
途中で目を覚まそうが、相手は猫だ、俺は気にしちゃいなかった。
恥ずかしさで頬を赤く染めたシロの口に無理矢理ケーキを押し込むと、観念したのかそれに応えるようにして受け入れてくれた。


「美味いか?」
「うん…っ、んっ、りょうへ…っ、ん…っ。」

もう一度ケーキを口に入れて、シロの口内を探るようにして運ぶ。
俺の唾液を含んで水気を増したケーキが、更に重なるシロの唾液で溶けてしまいそうになる。
そんなことをしていて、俺が止まらなくなってしまうのは当然のことだ。
シロの服を捲り上げて、胸元を撫でるようにしてその先端に触れる。
膨らんだそれはケーキの上に乗った苺よりも美味しそうだ。


「あ…っ、亮平っ、ん…っ!」

フォークをテーブルの上に置くと、今度は指先で生クリームを掬った。
それをシロの胸の粒に擦り付けて、口に含む。
弾力のある丸みを帯びたそれは、やっぱり苺よりも美味しいと思った。


「やだ…っ、亮平…っ。」
「やだ?ホントにやだ?」
「だって…っ、あ…ぁっ。」
「シロ、こっちに座れよ。」

それを綺麗に全部舐めると、シロの脇を支えてテーブルの上に座らせた。
行儀が悪いなんて思ってもいない。
だって俺にとってはシロは何よりも美味しいご馳走なんだから。
下着ごとずるりとズボンを下ろすと、今度はまた違う果実のようなシロ自身が現れた。






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