「魔法がとけたら…」-7
「シロー、朝だぞ、起きろ、おーい。」
翌朝、布団に包まって横に寝ているシロを起こそうと、耳に優しく唇で触れた。
「…起きてる。」
「わっ、なんだよ、ビビらせんなよ。」
「また…立てない…。」
「あー…、えーと悪ぃ、悪ぃ。」
ぼそりと呟いて、振り向いたシロが、瞳を真っ赤に腫らして、恨めしそうに俺を見つめる。
そのご機嫌を取るように、俺は謝る。
だって、お前が可愛すぎんだよ。
誰だって何度もヤりたくなるって。
「なんでいっつもオレばっかり…。オレばっかり変になって恥ずかしい…。」
「バカ。俺だって十分変だっつーの。」
「ホントか…?」
「ま、まぁな…。」
シロはしゅん、となって溜め息を吐いた。
安心して欲しくて、正直に自分のことを打ち明けると、
途端にシロの表情は明るくなった。
単純だなぁ、なんて思いながらも、そんなこいつが愛しくてたまらない俺も、単純なんだろうな。
あ、そう言えば…。
俺は不審に思っていたことがある。
「なぁ、なんでお前、洋平とんな仲いいんだ?もしかして…。」
そんなことはない、とは思ったけど、一応聞いてみたかった。
いつもコンビニ行くだけにしては、遅い理由も。
「うん、字、習ってた。」
「は?字??」
「だって亮平がこのままじゃダメだって言ったから。」
それだけでかよ。
俺が言ったこといちいち全部覚えてんだな。
「ちゃんと書けないと、一緒にいてもらえなくなるかと思って。」
どうしよう。
こんなに思われて。
俺は、危うく泣きそうになってしまった。
しかもそんな不安に思ってたのかよ。
なんでも言葉にしたらいいってもんじゃねぇけど、言わないと、伝わらないよな。
今までは、恥ずかしいとか、そういうのあったけど。
「シロ、好きだよ。大好きだ。」
お前に会えたから、俺は素直な人間になれた気がするよ。
これからはもっともっと素直になるよう、お前に合う男になれるように頑張るつもりだ。
「俺を好きになってくれてありがとう。」
「亮平…。」
「お前に会えてよかった。」
「オレもよかった!オレも大好き!」
あの魔法がとけたら言おうと思っていたその言葉を、呪文のように何度も繰り返す。
そして今度は俺が、お前に、とけない魔法をかけるんだ。
ずっとずっと、続く魔法。
^END.
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