「ラブホリック・ランドリー」-8
「うー…いたたた……。」
翌朝、俺はバカデカいベッドで唸っていた。
なんだっけ、宮付きって言うんだっけ、お姫様が寝てるようなベッド。
一体聖くんってばどんだけお坊ちゃまなんだろ…。
隣ではその聖くんが、寝息を立てて眠っている。
「…むふふ……。」
一人でニヤけてしまってしょうがない。
だって俺…、俺と聖くん、エッチしたんだもんっ!!
初めてが玄関付近ってのもまた野性的でいいじゃないの。
し・か・も…。
あれから1回だけじゃ足りなくて(俺が)身体を洗うという言い訳で風呂場で1回、
更にベッドに行って1回、また風呂場に行って…、ベッドに行って…。
そんなこんなで繰り返して合計7回!!(ラッキーセブンだし♪)
いやぁ、久し振りなんでやめられなくなっちゃったんだよねぇ…。
だけどさすがの俺もあんなデカいもん突っ込まれ続けたもんだから、全身がおかしい。
最後の方なんて正直、意識飛んでたもんなぁ…。
聖くんってば見かけによらず絶倫くんなんだから…ふふ♪
「ふふふ…、うへへ…。」
「楽しそうですね。」
「そりゃあやっと聖くんとエッチでき……、お、起きてたのっ?!」
「おはようございます、篤紘さん。」
うおおおおー!!
あんなエロいことしたっつーのに…、な、なんて爽やかな笑顔なんだっ!!
なんて朝に相応しい笑顔なんだっ!
益々惚れたぞ聖くん!
身体の相性もバッチリ☆だったしね。
しかし俺…、今一人で笑ってたの見られてたのか…。
あっくんちょっぴり恥ずかしいん!
「お、おはよう!!いやぁ昨日はどうもどうも!」
「あ…、き、昨日…。」
なぜか礼を言ってしまった俺の目の前で、聖くんは真っ赤になっている。
そりゃあ…、聖くんにとっては人生初のエッチだったんだ。
恥ずかしいのは仕方ないか…。
「すみませんでした俺…。」
「いや、謝らなくても!むしろ嬉しいぐらいで…なんて!」
「俺…、篤紘さんになんてことを…、本当に申し訳ないです…!」
「いやいや、7回もしといてそれは!」
「すみませんっ!本当にすみませんっ!」
「あ、そうじゃなくて、ホントに嬉しかったから!」
そんなに必死で謝られると、どうしていいのかわからなくなる。
昨日も思ったけど、今までそんなに大事にしてくれる人いなかったから…。
俺自身、エッチがすべてだと思っていたし、エッチ目的でも何とも思わなかったし。
だからそんな風に言われるとなんだか…。
「うっうっ…。」
「あ、篤紘さんっ、やっぱり俺ひどいことを…そんな泣くほど…。」
「ちっがーう!感動してんの!!聖くんの思いやりに!!」
「感動だなんて…!篤紘さんっ!!」
出たぁ、聖くんの熱い抱擁!!
しかも今も二人して素っ裸だし…。
どうしよう、こんな時なのにまたムラムラしてきちゃったよ!!
既に下半身なんか反応し始めてるし!(俺って敏感くんだから)
「俺、絶対篤紘さんを幸せにしますっ!ちゃんと結婚できるよう頑張りますっ!」
「いや、結婚は頑張っても…、あーううん、ありがとう聖くんっ!!」
「はいっ、俺のほうこそありがとうございますっ、こんなに幸せにしてもらって…。」
「あ、そお?それならさー…。」
抱き締めてくる聖くんを、無理矢理ベッドに押し倒した。
だってもう…、我慢できないんだ!!もう無理!!
まぁくんに下半身野郎と言われようが、好きなもんは好きなんだ!!
聖くんも大好きだけど、俺はエッチが大好きなんだ────…!!(って叫びたいぐらい)
「もう1回、いや何回でもいいや、お願いっ、今すぐしてっ、しよう聖くんっ!!」
「あ、篤紘さんっ、ダメです朝からっ、あ、篤紘さん────…。」
「へええぇー…それで朝からずっと。呆れたもんだな、この下半身野郎が。」
その日の夜、まぁくんの店に行くと、当のまぁくんの第一声がこれだった。
そこまで予定通り下半身野郎って言うまぁくんて、なんだか感心しちゃうよなぁ…。
グラスを拭く手が僅かに震えてるし。
絶対説教とかしてくるんだよね、こういう時って。
「別にっ、まぁくんに怒られても恐くないもんねー。」
「怒ってねぇよ!呆れたって言ってるだろうが!!」
「呆れられてもいいの!ラブラブなんだもん、ねっ、聖くーん!」
「何がラブラブだ、嫌がってるじゃねぇか、しかもかわいこぶりやがって。」
「そ…、そんなことないですっ!!」
カウンター席で、腕組みする俺を除けて、聖くんが椅子から立ち上がる。
こ、これはまた嵐(?)の予感がするぞ…。
また聖くん怒ったりしないかなぁ…。
そしたらまた家に帰ってまたエッチか…それもいいな…。
「あ、篤紘さんは、可愛いですっ!」
「は?あー…、そ、そうなんだ…へぇー。」
「将志さんにはわからないかもしれないですけど…、凄く可愛かったです!!特に昨日!!」
「せ、聖くんっ、そんなバラしちゃあっくん恥ずかしいっ!」
「お前ら二人ともバカだろ……。」
まぁくんは本当に呆れてしまって、店のキッチンの方へ行ってしまった。
周りに他のお客さんもいるのに…。
聖くんってこういう時、見えなくなっちゃうんだよね。
でも俺、そういう聖くんが凄く好きだ。
バカと言われようが、俺はこの恋を貫いてやる!!
そして夜は(別に夜だけじゃなくていいけど)聖くんに貫かれるぞ!!
「聖くんっ、幸せになろうねっ!」
「はい…!篤紘さん、俺、必ず幸せにします…!」
手と手を取り合って、なんだかこれから結婚する気分になってきたぞ。
ここで誓いのキスでもしたいぐらいだ。
だけどまぁくんに迷惑がかかるから、そこは我慢我慢。
家に帰ったら、思いっきりしちゃうもんね。
「あ、篤紘さん、あの、今日辺り洗濯しに行かないといけないんですが…。」
「そうなの?俺も溜まってるなー、んじゃ1回家帰ってから行こうよ。」
って…俺の家じゃないけどね…。
こんな会話も自然になってくるだろうな。
ふふふ…、結婚してるのと同じようなもんじゃーん♪
っていうか…、ちょっと前から気になってたんだよね、このこと…。
「30分って結構長いですよね。」
「うん、そうだね…。」
家に帰って、洗濯物を持って俺達は出会ったコインランドリーにいた。
そう、俺が気になっていたこと。
あれだけ金持ちの坊ちゃんなのに、どうしてこんなところに来ているのか。
しかも風呂場の近くにちゃんと洗濯機があるのを、俺は知っているのだ。
「聖くん…、あのさ、なんで家の洗濯機使わないの?」
「あ…、あの、あれは壊れているんです…。」
「え、そうなの?あのさ、じゃあ買えばいいんじゃないの?なんで?」
「あ、それはその…。あの俺、こんなこと言うの凄く恥ずかしいんですけど……。」
だって俺みたいに金がなくて家具売るような人じゃないんだ、聖くんは。
ってことは…、もしかして、コインランドリーに来たいから?=俺目的?!
この真っ赤になって言い出しにくそうにしている聖くんの表情からして間違いない?!
だってそれ以外理由がわからないし…もう決定だなこりゃ!(万歳!!)
「いや、そんな俺も恥ずかし…。」
「洗濯機ってどこで売っているのかわからなくて…。」
「………は?」
「自分で買いに行ったことなくてわからなくて…。恥ずかしいんですけど…!」
俺、撃沈、そしてどこかへ他界。
仏壇の鐘が鳴ったぞ、俺の頭ん中で。
そんな気分だった。
つか、洗濯機売ってるところがわかんないなんて、どんだけ箱入り娘…いや息子なんだっ!!
もう色んな意味で言葉も出ないよ俺…。
「篤紘さん、知ってますか?今度一緒に買いに行ってくれませんか?」
「あー…うん、そうだね…。」
「よかった、これでまた家で洗濯ができます!」
「あー…うん、そ……。」
いや、待てよ…。
俺達が出会った記念すべきこの場所でエッチっていうことは絶対できなくなるわけか。
それはそれで俺としては残念だな…。
ここに来るのも、ちょっとした同棲気分(気分だけじゃないけど)で、楽しいのに…。
よし…、こうなったら…、必殺奥の手!!
「あ、俺も実は知らないんだ!」
「そうなんですか…!やっぱりわからないですよね…。」
「そーそー!だから調べておくからさ、それまではここでいいんじゃない?」
「ありがとうございます!やっぱり篤紘さんは頼りになりますね!」
「いやぁそれほどでも…!やー照れるなぁ。」
「篤紘さんのそういうところ好きです!凄く好きです!」
聖くん、ごめん!
胸の中でそう呟きながらも、俺はすっかりそっち方向へ思考が向かっていた。
この先、何があっても俺は聖くんと愛し合い続けるぞ!
まずは身体もたくさん繋がらなきゃってことで…。
「聖くーん、俺も好きだからぁー。」
「あ、篤紘さんっ?!」
「ね?エッチしよ?今ずぐエッチしよ!ここで!!」
「いや、あの、篤紘さんっ、公共の場でそんなことは…!!」
確かに公共は公共だけど。
俺にとっちゃ公共だろうが私的だろうがいいんだよね。
ここが聖くんとの一番の大事な場所だから。
大事な場所でエッチ!これこそが愛し合う二人の感動的セレモニーってもんだろ!
結婚式みたいなもんだ!!
「大丈夫!見られても俺平気だし!!もう勃ってるし!!」
「あああ篤紘さ…!あっ、篤紘さんダメです────…!!」
エッチの神様お願いです!
俺の記念すべき30回目の恋が、どうか永遠に続きますように。
頑張れ俺、そして今まさに俺に襲われている聖くん。
END.
back/index