「チャイルドライク」─これから-1








「うー…難しいぃ。」

ただいま12月。
受験生の俺には残された時間もなく。
もちろん、デートなんかしたりする余裕もない。
図書室で問題集と睨めっこしながら、大和を待つ。


「大和…。」

会いたい。
毎日会ってるのに、なんでこんなに会いたいんだろう。
なんでこんなに好きなんだろう。


「や…まと…‥。」








「先輩、羽野先輩。」

あ、大和の声…‥。
大好きな、大和の声が、こんな近くで…。
あれあれあれ?


「大和っ?」
「はい。」
「わわっ。」

気が付くと机の上に突っ伏して居眠りしてしまっていた。


「先輩、おはよ。」
「お、おはよ。」

あ、キス…。
大和のキスは、気持ちいい。
触れるだけでも身体全体が熱くなる。
身体…。
この間、ここで大和とエッチしてしまった。
帰りは家までおんぶしてもらって。
俺はキスもエッチも初めてで、
全然余裕とかないぐらい大和でいっぱいになっちゃって。
大和は年下なのに落ち着いてて、なんだかなぁ。
あれ?大和、なんか、慣れてた?
もしかして…。き、聞けない。
だってもし初めてじゃなかったら、ショックだから。


「先輩?どうしました?難しい顔して。」
「な、なんでもない!」

なんか醜いよ、こんなの。
これだけ頭もよくてカッコいいよくて性格もよくて…、きっと前に付き合ってたコぐらいいるよね。


「寝癖、ついてますよ。」
「え!うそっ!」
「違います、ここですよ。」


あ…大和の手。
髪を撫でられて、そのまま頬に触れられる。


「大和、手、冷たい。もしかして、ずっと待ってた?」
「だって先輩の寝顔、可愛くて。あ、顔に机の跡もついてます。」

そう言って優しく撫でる大和の手は、冷たいハズなのに、顔はまた熱くなる。


「あ、ごめんね…。」

あぁどうしよう。
ちょっと顔触られただけなのに、なんでこんなに。
眩暈がする。倒れそう。
またキスしないのかな…。その後も…。


「帰りましょう。」
「う、うん。」

やめなくて、よかったのにな。
あれからキスしかしてない。
…って、俺、欲求不満? やだな、こんなの。


「先輩?」
「あ、うん、今行く!」











「先輩、大丈夫ですか?」

毎日の帰り道、俺たちは手を繋いで歩く。


「え、何が?」
「なんか、疲れてるみたいなんで。」

あ、どうしよう、また。
大和に心配かけちゃだめじゃないか。


「大丈夫だよ!俺、大和みたいに頭よくないから。人より頑張らないと。」
「受験ですもんね。先輩だけじゃないです、 誰でも疲れますよ。あともう少しですけどね。」

あともう少し。
もう少ししたら、俺は高校生になって、大和は三年になって。
離れ離れ…。やだ…!!


「大和ぉ…。」
「どうしたんですか?」

立ち止まって、しがみ付いた。
大和は、平気?俺と離れて平気?
なんか最近女々しくてやだなぁ。
嫌われそう。


「あのさ、今度の土曜、うちに来なよ。」
「え?」
「だ、誰もいないんだ、その日!」

うぅ…。 はしたないかな。
やらしいかな。
大和、俺に呆れる?


「でも邪魔じゃ…。」
「邪魔なんかじゃ!むしろ一緒にいたいっていうか、その…。」

あああ、やっぱり恥ずかしい。
こんな、自分からなんて。


「わかりました。」








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