「ベジタブル・ラブバトル」-7
「アツコさんに聞いて焦ったんだよ。」
ぐったりとしてベッドに横たわったまま、大樹は俺に言った。
俺の身体も大樹の身体もまだ濡れたままだ。
まだ…、熱いままだ。
「お前自分の気持ちに気付いてないみたいだったからな。」
「お前自惚れんのもいい加減に…。」
「忘れたのかよ、ガキの頃言ってたこと。」
「…ガキの頃?」
『ひろき、おれ、おまえをよめさんにするからな!』
『わぁい!おれもさいをよめさんにするぅー。』
『やくそくだぞ!おれひろきのことずっとすきだからな!』
『おうっ、おとことおとこのってやつだな!』
そんなこと言ってたのか俺…。
悪いけど忘れちまってた。
しかし二人してよめさんにする、ってそっからおかしいだろ。
男と男の約束って、まんまホモじゃねぇかよ。
そん時から負けないって気持ちあったのか?
「お前、最近前にも増して可愛くなってくからよ、オカマどもに取られるかって心配でな。」
「アホかお前…、それにその…、キュ、キュウリはねぇよ…。」
「だって仕方ないだろ、お前んちの風呂覗こうとすると毎回じいちゃんに見つかるから
そこまでの記憶頼りにするしかなかったんだからよ。」
「ぜってぇアホだお前…。」
じいちゃんそのぐらい昨日今日しっかり見張ってろよ。
俺の風呂なんか覗く奴がどこにいるんだよ。
お前ぐらいしかいねぇよ。
俺のことこんなに好きなバカもお前しかいねぇ。
そんなバカを好きなのも俺しかいねぇ。
「大樹、俺、お前が好…。」
「彩、俺も好…。」
こうなったら耳にタコができるぐらい好きって言ってやる。
もう一度、見つめ合ってキスをしようと大樹の唇を指でなぞった。
目を閉じて、息がかかるほど近くに……。
「こらあぁぁーー!彩ー出て来ーいっ!」
「大樹お前何やっとんじゃぁー!」
ドンドン、と両家のじいちゃんのドアの叩く音と怒鳴る声がする。
でも実はこの部屋、鍵ついてんだよな。
父ちゃんたちも勝手にやってんだ。
俺らだって勝手にするからな。
今まで10年以上この家族たちに邪魔されてきたんだ。
「うるせぇ、今セックスしてんだっ、邪魔すんなじじぃども!!」
「彩、やっぱお前最高だな!」
俺がデカい声でじいちゃんたちに怒鳴り返して、
大樹が大笑いした。
「わしらは絶対許さんぞー!!」
じいちゃんたちが部屋の外で騒ぐ中、俺たちは笑いながら何度もキスをした。
俺の、いや、俺たちの勝負はこれからだ。
END.
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