「薔薇色☆お姫様」-1







「──ゼ、リゼ…。」


いつもの朝。
僕とリゼの愛の寝室。
大きなベッドで僕の隣で、眠っているリゼを優しく起こす。


「おはよう、僕のヒメ。」
「──ん…‥んうぅっ。」

朝の挨拶でお目覚め。
僕たち夫婦だもんね。


「だから!なんですぐキスすんだよ!」

リゼはぱっちり目を開いて真っ赤になって起き上がる。


「だって夫婦だもん。リゼ、愛してるよ。」
「朝っぱらから…っ、ん…!」

再びリゼをシーツに埋めて、キスを繰り返す。


「あ!感じて来ちゃったとか??リゼえっちだね。」

それなら朝からしちゃおっかな〜。
リゼの感じる顔、見たいし。


「バカ!違うって!」
「昨日の夜はあんなに可愛かったのに。もっと〜、とかさぁ。」

そう、一日一えっちはリゼが許してくれないけど、結構してるんだよね、僕たち。


「だから違う…‥あっ!」

リゼの首筋にキスしながら、腰に手を回した。


「リゼ〜、しようよ〜、お願い。」
「やだって…っ、んっ。」

口ではそんなこと言ってるけど、リゼもしたいはずだよね。
僕はするりとパジャマの中に手を滑り込ませた。


「王子っ、リゼ殿っ!朝でございますよ!!」
「もうっ、ファボルトってばなんで邪魔するの?!」
「王子、朝から破廉恥な行為はおやめ下さい。」

扉がバタン、と勢いよく開いて、大きな声で怒鳴られた。
まったくもう。 いいところに来るんだから。
せっかく朝からリゼと愛を確かめ合おうとしたのに。
あ、そうだ!


「ファボルトだってえっちぐらいするでしょ?あ、僕たちの、見たい?見せようか?」

見られながらするって興奮するって本に書いてあった!!
僕って頭いい。


「な、なんとはしたない…!」
「はしたなくないもん。夫婦だからいいんだもん。ね、リゼ!」

僕は腕の中のリゼをギュッと強く抱き締めた。


「あれ?リゼ、どうしたの?」

リゼが、震えている。


「いい加減にしろっ!」










「息子よ、どうしたんだ、その顔は。」
「聞いてよお父様。リゼったらさぁ…。」
「余計なこと言うなよ。」

朝食のテーブルにつくと、僕の赤くなった頬を指差してお父様は言った。
リゼが鋭い目付きで、睨んでいる。
あれ? 余計なこと? なんかその言い方ってさ。
僕たち夫婦の問題ですから、ってやつだよね!
僕はリゼに抱き付いた。


「えへへ〜、リゼ、愛してるよ〜。」
「あーもう!離れろってば!」
「照れなくていいのに。」
「照れてんじゃねぇよ!」

可愛いなぁ、リゼは。
毎日こんな日が続くなんて、僕幸せ。
それも一生。


「はっはっはっ、仲がいいなぁ、二人とも。」
「えぇ本当に。昔を思い出しますわね、あなた。」
「お兄ちゃんよかったね。」
「だからなんで那都までいるんだよっ!」

みんなに祝福されて、幸せなことこの上ないよ。
僕、リゼと出会えてよかった。
結婚して、よかった。
僕たちも椅子に座って食事に手を付けた。


「あぁ、ところでロシュ。」
「なぁにお父様。」

朝食を食べながら、お父様が話始めた。


「今日ロザが来るそうだ。」
「──っ!!…ぐほっ、げほっ…!」

僕は食べていたパンを喉に詰まらせた。
嘘っ!! ロザが来る?
僕の顔は青ざめていく。


「なんだ、ロシュ、どうしたんだよ。」

リゼが水を差し出して、僕の顔を覗き込んだ。
ど、どうしよう…!


「お、お父様、僕もいなきゃダメかなぁ…?」
「当たり前だろう。お前たちの結婚のお祝いに来るんだ。ロザは式に出られなかったからな。」

会いたくないよー。
そんなぁ。 僕どうすればいいの?
冷や汗が額に滲む。


「なんだよ?ロザ?って誰だそれ…。」
「あぁ、私の弟の子でね、ロシュのイトコだよ。」

お父様、それだけじゃないんです…。
でも昔のことだし。 ロザも忘れてるよね、きっと。
お祝いに来るわけだし!
それに、今はリゼがいるんだし。


「実は昔結婚の約束したことあるんだよね…、あ、昔だよ?!」
「……‥‥。」

あぁ!リゼ、怒ってる! せっかく夫婦になったのに!!


「きっとロザも覚えてないよ!ちっちゃい頃だもん。」
「ふーん、あっそ。」

リゼはぷい、と僕から顔を逸らした。
あ、もしかして、リゼ。


「リゼ、妬いてるんだ。」

リゼの耳元で小さく囁いた。


「可愛い、リゼ。」

触れるぐらい近付くと、リゼの上昇する体温を感じる。


「違うって!バカなこと言うなよ。」
「大丈夫だよ。僕にはリゼしかいないから、ね?」

耳の後ろに、みんなが気付かないぐらい、ほんのちょっとだけ唇を付けた。
大丈夫。
そう思っていた僕の考えは、二時間後否定されることになる。
予想もしない形で。









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