「──ゼ、リゼ…。」
いつもの朝。
僕とリゼの愛の寝室。
大きなベッドで僕の隣で、眠っているリゼを優しく起こす。
「おはよう、僕のヒメ。」
「──ん…‥んうぅっ。」
朝の挨拶でお目覚め。
僕たち夫婦だもんね。
「だから!なんですぐキスすんだよ!」
リゼはぱっちり目を開いて真っ赤になって起き上がる。
「だって夫婦だもん。リゼ、愛してるよ。」
「朝っぱらから…っ、ん…!」
再びリゼをシーツに埋めて、キスを繰り返す。
「あ!感じて来ちゃったとか??リゼえっちだね。」
それなら朝からしちゃおっかな〜。
リゼの感じる顔、見たいし。
「バカ!違うって!」
「昨日の夜はあんなに可愛かったのに。もっと〜、とかさぁ。」
そう、一日一えっちはリゼが許してくれないけど、結構してるんだよね、僕たち。
「だから違う…‥あっ!」
リゼの首筋にキスしながら、腰に手を回した。
「リゼ〜、しようよ〜、お願い。」
「やだって…っ、んっ。」
口ではそんなこと言ってるけど、リゼもしたいはずだよね。
僕はするりとパジャマの中に手を滑り込ませた。
「王子っ、リゼ殿っ!朝でございますよ!!」
「もうっ、ファボルトってばなんで邪魔するの?!」
「王子、朝から破廉恥な行為はおやめ下さい。」
扉がバタン、と勢いよく開いて、大きな声で怒鳴られた。
まったくもう。
いいところに来るんだから。
せっかく朝からリゼと愛を確かめ合おうとしたのに。
あ、そうだ!
「ファボルトだってえっちぐらいするでしょ?あ、僕たちの、見たい?見せようか?」
見られながらするって興奮するって本に書いてあった!!
僕って頭いい。
「な、なんとはしたない…!」
「はしたなくないもん。夫婦だからいいんだもん。ね、リゼ!」
僕は腕の中のリゼをギュッと強く抱き締めた。
「あれ?リゼ、どうしたの?」
リゼが、震えている。
「いい加減にしろっ!」
「息子よ、どうしたんだ、その顔は。」
「聞いてよお父様。リゼったらさぁ…。」
「余計なこと言うなよ。」
朝食のテーブルにつくと、僕の赤くなった頬を指差してお父様は言った。
リゼが鋭い目付きで、睨んでいる。
あれ?
余計なこと?
なんかその言い方ってさ。
僕たち夫婦の問題ですから、ってやつだよね!
僕はリゼに抱き付いた。
「えへへ〜、リゼ、愛してるよ〜。」
「あーもう!離れろってば!」
「照れなくていいのに。」
「照れてんじゃねぇよ!」
可愛いなぁ、リゼは。
毎日こんな日が続くなんて、僕幸せ。
それも一生。
「はっはっはっ、仲がいいなぁ、二人とも。」
「えぇ本当に。昔を思い出しますわね、あなた。」
「お兄ちゃんよかったね。」
「だからなんで那都までいるんだよっ!」
みんなに祝福されて、幸せなことこの上ないよ。
僕、リゼと出会えてよかった。
結婚して、よかった。
僕たちも椅子に座って食事に手を付けた。
「あぁ、ところでロシュ。」
「なぁにお父様。」
朝食を食べながら、お父様が話始めた。
「今日ロザが来るそうだ。」
「──っ!!…ぐほっ、げほっ…!」
僕は食べていたパンを喉に詰まらせた。
嘘っ!!
ロザが来る?
僕の顔は青ざめていく。
「なんだ、ロシュ、どうしたんだよ。」
リゼが水を差し出して、僕の顔を覗き込んだ。
ど、どうしよう…!
「お、お父様、僕もいなきゃダメかなぁ…?」
「当たり前だろう。お前たちの結婚のお祝いに来るんだ。ロザは式に出られなかったからな。」
会いたくないよー。
そんなぁ。
僕どうすればいいの?
冷や汗が額に滲む。
「なんだよ?ロザ?って誰だそれ…。」
「あぁ、私の弟の子でね、ロシュのイトコだよ。」
お父様、それだけじゃないんです…。
でも昔のことだし。
ロザも忘れてるよね、きっと。
お祝いに来るわけだし!
それに、今はリゼがいるんだし。
「実は昔結婚の約束したことあるんだよね…、あ、昔だよ?!」
「……‥‥。」
あぁ!リゼ、怒ってる!
せっかく夫婦になったのに!!
「きっとロザも覚えてないよ!ちっちゃい頃だもん。」
「ふーん、あっそ。」
リゼはぷい、と僕から顔を逸らした。
あ、もしかして、リゼ。
「リゼ、妬いてるんだ。」
リゼの耳元で小さく囁いた。
「可愛い、リゼ。」
触れるぐらい近付くと、リゼの上昇する体温を感じる。
「違うって!バカなこと言うなよ。」
「大丈夫だよ。僕にはリゼしかいないから、ね?」
耳の後ろに、みんなが気付かないぐらい、ほんのちょっとだけ唇を付けた。
大丈夫。
そう思っていた僕の考えは、二時間後否定されることになる。
予想もしない形で。
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