「fragile」5、亮平視点の小話です。
大変なことが起きた。
洋平のバカが家出してうちに来て三日目。
シマのところに泊まりに行っていたシロが、帰って来たのだった。
ちょうどその時、いつまで経っても自分の早とちりだと気付かない洋平に諭してやっていた。
それでちょっとだけ兄弟喧嘩になって取っ組み合いになりそうなところを、運悪くシロが見てしまったというわけだ。
「オレの知らないところで亮平と洋平やらしいことしてたんだ…!!うっうっ、亮平と洋平恋人だったんだ…!」
そんなわけねぇだろ!
何が悲しくて俺が洋平となんかデキなきゃならねぇんだよ…。
俺は洋平には早く帰るようにだけ言って、走って逃げるシロを追いかけた。
「シロ、待てって!」
「いつか俺のこと捨てて洋平と結婚するんだ!」
もしかしなくても、こいつも早とちりタイプか?
捨てるまでは意味がわかるものの、結婚はないだろう結婚は。
そんなめちゃくちゃなことが出来るんなら、俺は真っ先にお前と結婚するって言うのに…。
「シロ、シロ…!」
「わ…、りょ、亮平…。」
階段を下りようとしたシロの身体をぐっと引き寄せて、強く抱き締める。
驚いたシロは一瞬びくんと跳ねたけれど、すぐに俺の腕の中に収まった。
「シロ、ごめんな心配させて。」
「うー…。」
「俺が好きなのはお前しかいないんだからな?やらしいことすんのもお前だけだ。」
「亮平~…。」
おとなしくなってしがみ付いて来るシロに優しくキスをする。
涙を滲ませて真っ赤になって、可愛いったらありゃしない。
そんな顔をされたら、ここがマンションの廊下だってことを忘れてしまいそうになる。
「あの、オレ早くシマのところ戻らないと…。」
「は?!お前帰って来たんじゃねぇのかよ?!」
「ううん、荷物取りに来た!シマとテレビでやるげーむ、ってやつの途中なんだ~。」
「な…!!シロ…。」
「あっ、亮平も来てもいいぞ!」
「う…っ、シロ…。」
「どうしたんだ?亮平?泣いてる…?」
「いや、なんでもねぇ…お前がこの世界で馴染んでくれてよかったよ…。」
俺はゲームに負けたのか…?
今度は泣きたくなってしまった。
でもシロには悪気なんかないのはわかっている。
無邪気な顔して笑うシロが、俺も好きなんだ。
「へへっ、亮平、行こう!」
「あ…シロ…。」
「へへっ、亮平の手、あったかい。久し振りに触った。」
「シロ…、うおおシロー!ダメだ、シマのところ行くのなし!な?家でセックスしようぜ!な?いいだろ?!」
「えっ、亮平っ、待って亮平シマが…。」
「いいんだよ、俺から電話しておく!いいから早く来い!」
三日ぶりに触れたシロの手は、あったかいどころか熱かった。
そうやって恥ずかしい振りをして喜んでいるのも、大好きだから仕方ない。
洋平のことなんか言えたもんじゃない。
俺はこのシロに、バカみたいに溺れているんだから。
END.