「神様も恋をする」11話裏話、桃と紅編です。
その日ぼくは、疲れた身体を癒そうとお風呂場に向かった。
銀華さまが作ってくれた、外にある大きなお風呂だ。
ぼくと紅はそこがお気に入りで、家の中のお風呂は使わずにほとんどをそこで済ませる。
今日は色んなことがあった日だった。
青城さまの好きなシマにゃん、という猫が戻って来た。
そして青城さまを好きだと言って、またここで暮らすことになった。
ずっと元気がなかった青城さまが元気になってくれて、ぼくも紅も嬉しい。
青城さま本人に言うと、そんなに俺が心配かー、なんてニヤニヤしながらからかわれそうだから内緒だけど。
「……ん?」
お風呂場へ出るガラスのドアの取っ手に手を掛ける。
青城さまとシマにゃんの姿が見えて、もう少し後にしようと振り返ったところで、普段とは違うシマにゃんの声がすることに気付いてしまった。
「う…、うそぉ…?!」
青城さまとシマにゃん…。
こ、こんなところで────…!!
いくら交尾が好きだからってひどすぎます青城さま!!
ぼく、お風呂に入れないじゃないですか───!!
「桃?どうした?」
「あ…!」
恥ずかしくなって床をのたうち回っていると、紅が後ろから声を掛けて来た。
あまりの慌てように、紅まで動揺しているみたいだった。
「な…何…?どうしたんだよ?」
「な、なんでもないよ!きょ、今日は中のお風呂にしよ!ね?紅っ!」
「えー俺広いほうがいい…。あ、青城が使ってんのか?」
「ダ、ダメぇ!見ちゃダメなの!」
だけど、見ちゃダメって言われると見たくなるものなんだ。
必死でドアの前に立つぼくなんか小さくて弱くて、紅の力ですぐに退かされてしまう。
「な…!青城…!」
「あ、青城さまってば困っちゃうよね!ね、だから中のお風呂……ん、むー…!」
「どうしよう…、桃…。」
「きゅ、急にちゅーなんかしないで…って、紅っ?!」
ぼくの身体をぎゅっと抱き締める紅の心臓が早い。
ドキドキドキドキ、ぼくの心臓の音もそれに重なっていく。
いくらぼくでも、紅がどうしちゃったのかってことぐらいはわかるんだ。
「桃…、し、しようか…。」
「え…。あ、あの…。」
「交尾…したい…。青城も見てないし…。」
「紅…。」
そんな風に見つめられたら、ぼくはどうしていいのかわからなくなる。
それにぼくも、交尾は嫌いじゃない。
紅と一つになれるから、本当はいっぱいしたいんだ。
だけど恥ずかしいし、青城さまにばれるし…。
でも紅が言う通り、今日は青城さまも見ていない。
ぼくは黙って頷いて、紅と手を繋いで部屋へ戻った。
翌日、ぼくは昨晩の名残りで、なかなか起きることが出来なかった。
久し振りだからって、紅もぼくも夢中になってしまったのだ。
動けなくなったぼくは中のお風呂へも行けなくて、身体は紅が綺麗にしてくれた。
「いいよ、休んでろよ。俺がやるから。」
「でも…。」
「大丈夫、一人で作れるし。洗濯は得意だし。」
「ありがと…紅…。」
横になったまま、ぼくは紅の頬にありがとうのちゅーをした。
やっぱり紅は優しくて、頼りになる。
ぼくは紅の言葉に甘えて、安心して瞳を閉じた。
だけどぼくと紅の考えは甘かった。
紅一人にやらせるのは悪いと思ったし、身体の調子もよくなって来たから台所へ行った。
そしてそこに紅がいないのを見て、すぐに青城さまの部屋へ行った。
「気にしなくていいぞ、桃。交尾の翌日は辛いだろー?ケケケ。」
「な…!あ、青城さま、何言ってるんですかっ!」
「ど、どこで見てたんだよ…!」
「見てなんかねぇよ。だけど見なくたってわかるぞ、お前らのすることぐらいはな。」
「べ、紅ってば何言ってるの!うわん、紅のバカぁー!!」
「ご、ごめん桃!ごめんってば!桃ー!」
やっぱり青城さまは色んな意味で只者じゃないと思った。
でもぼくは、こんな青城さまだけど、神様としては凄いと思っている。
紅もそうだって前に言っていたけれど、やっぱり青城さま本人には内緒なんだ。
END.