「Lies and Magic」完結後のおまけ、シマ視点の小話です。
隼人と両思いになった俺は、今日もこの家で隼人を待つ。
俺が隼人にしてあげたかったことを、これからいっぱいしたいと思うんだ。
まずはその一つ目、隼人のために料理を毎日することにした。
ピンポーン。
その時ちょうどインターフォンが鳴って、作業を中止して手を洗って玄関に向かった。
「はいはーい、志摩と水島でーす。」
隼人には誰か来たら相手確かめてから出ろよ、と念押しされたから、小さい覗き穴からドアの向こうを見てみる。
隣に住んでいる、シロとその恋人の亮平くんだ。
「シロがケーキもらってきたからよ。」
「シマとミズシマにやる。」
「わーいやったぁ、ありがとう!」
時々シロはバイト先のケーキ屋さんからケーキをもらって来ては俺達におすそ分けをしてくれる。
いいなぁ…一緒に帰って来てるんだ…、手繋いで…。
「おっ、シマ料理してたのか?」
「あーシマ可愛い、エプロンしてる~。」
「えへへ、今作ってたの。」
シロに可愛いって言われちゃった。
照れるなー、シロも可愛いのになぁ。
そんなの亮平くんは言わなくてもわかってると思うけど。
「今日はなんだ?」
「うんとね、餃子とー、ニラレバとー、ニンニクの丸焼き。夏だからスタミナつけないと!」
「スタミナって…、すっげぇ料理ばっかりだな…。」
「俺ねー、こう見えて結構料理得意なんだー。今度一緒に食べよー?」
俺はずっとクーラーの効いたこの家にいるからいいけれど、隼人はあんな暑い外に出るんだもん。
夏バテしたら大変だもんね。
でも俺、ずっとここにいるだけでいいのかな…。
シロみたいにバイトしたほうがいいかな…。
「水島は幸せだろうな、帰ったらシマがお帰りーって言ってくれて。」
「ホント?幸せかなぁ?」
「そりゃそうだろ。」
「そっかー、えへへ、そうなんだー。」
隼人は本当に、幸せって思ってくれてるのかな。
だったら暫くはこの生活でいいのかな…。
おかえり、って毎日言うだけでいいのかな…?
二人が帰ってちょっとすると、玄関のドアに鍵を差し込む音がした。
俺の大好きな、隼人が帰ってきた。
隼人が望む通り、俺は笑顔で迎える。
「隼人、おかえり、おかえりー!」
「…ただいま…。」
前は言ってくれなかった、隼人の返事。
まだ慣れないからか、ボソッとだけど。
俺が抱き付くと鬱陶しそうな顔していたけれど、今は違う。
これは夢じゃなくって、現実なんだ…。
「なんかすっげぇ匂いだけど…。」
「うんあのね、餃子と、ニラレバと、あとなんだっけ…。」
あれれ??隼人餃子嫌いなのかな。
ニラレバが嫌いなのかな。それともにんにく??
「…スが…できないだろ…。」
「えっ?なんて言ったの?今聞こえな…、わっ!」
俺の腕が強く引っ張られた。
急に隼人の顔が近付いて、俺は目を閉じるのもできなかった。
隼人のキスは凄く激しいのが多くて、びっくりすることが多い。
「キスができないだろ…。」
「えへっ、大丈夫だよー、俺も食べるもん。」
そういう問題じゃない、と呆れた隼人と、俺はもう一度キスをした。
このキスの温度も現実だと思うと、俺は幸せでいっぱいになる。
どうかこの幸せが、ずっと続きますように…。
END.