「永久性微熱」初夜の後の小話です。
「……ん…。」
微かに身体に重さを感じて、瞼をゆっくりと開いた。
この世で一番愛しい人の腕がゆるやかに包んでいた。
規則正しい寝息が、耳元をくすぐる。
「…椿……。」
その人の名前を呟いて、胸元に頬をすり寄せると、心臓の音を皮膚で感じて急に恥ずかしさが込み上げる。
何をやっているんだろう…。
お互い何も身につけていない状態の素肌が、昨夜の行為を彷彿させて、一気に身体が熱くなってしまった。
「蛍…?」
「椿…っ、あの…。」
ふいにその寝息が途切れ、自分よりも低い声で名前を呼ばれた。
「おはよう。」
ぎゅっと強く抱き締められて、髪に優しくキスされた。
「……はよ…。」
そんな椿の行動や言動にいちいち反応してしまい、顔を上げることもできない。
「蛍、ごめん…。」
「なんで謝るの?そんな謝るんなら…。」
後悔するならこんなことしないで欲しい。
こんな、心臓の奥まで焦げ目がつくぐらい印をつけたくせに…。
どうしてそんなこと…。
瞳の奥が熱くなってきた。
「……じゃなくて、その、蛍、熱ある…。」
「えっ。」
「ごめん…。」
掌が額や頬に次々に触れて、余計熱くなりそうだ。
そして椿は目線をわざと合わせないようにした後、掌で自分の顔を覆った。
「その、今日一日ずっと傍にいてくれたら…、な、治るかもっ。」
我ながらなんてことを言ってるんだと思う。
年上のくせにこんな我儘で甘えるようなこと。
「じゃあそうする。」
目の下をほんの少し紅くして、椿は微笑った。
そして二人でもう一度思いを確かめるように、目覚めて一回目の熱いキスを交わした。
END.